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第143話 夢の後

 メガフェスが終わって、しばらくみんな抜け殻だった。  そして日常が戻って来る。 「メガフェスの売り上げと寄付金は、過去最高額だったそうだ。  みんな難民支援にNGOを通して寄付されるんだろう。」 「それでも、戦争は無くならないな。」 「でも、子供たちからお手紙が届いたんだって。」 「何かの役には、立ったのかな。」 「焼石に水かも。」 「でも、無力じゃないよ。」 ミクオが言う。  各レーベルからのオファーが物凄いことになっている。プロになるか、悩ましい所だ。 「俺は音楽に関わっていたいよ。」  凍夜の言葉にキースは 「俺は、車の仕事もハンパで、もう少しちゃんとやりたい。でもドラムも続けたい。」  タカヨシも 「ミクオさんの下でもっと、整備の仕事を極めたいし。」  テツは 「俺とジヌとミコトは、ホスト続けるか?」 「僕はピアノで生活できると思えないから、大学卒業まで、ホスト続けようと思います。」  ジヌは言った。テツも 「俺ももう少し続けるよ。売り上げも上がって来たから。ナンバーに入れそうだし。」 凍夜は 「ミコトはどうするんだ。 俺は辞めてもらいたいけど。」 「オレ、作詞家になれるとは思わないから、もっと世の中を勉強するよ、ホストで。  凍夜がいいって言うのなら。」  サブが、 「俺はもっと頑張って夢子ファンに応えなくちゃ。そしてあゆむを嫁にする。  まだまだ、数年あるし、な。」 あゆむがサブの腕を組んで嬉しそうだ。 「みんな、刺激的な経験だったから、その揺り返しで腑抜けにならないように。  締まって行こうぜ。」 ミクオがまとめた。  数日後、あのジャポニカ・デリコが直々に訪ねてきた。 「このバンド、育てたいわ。 アメリカに行かない?全員で。 私がプロモーションしたいの。」  ビックリするような小切手を持ってきた。 「ゼロが多いな。これドル建て?」 「そう、アーユーオーケー?」  この金額なら飛びつくと思っていたデリコは 「ノー」の返事にショックを受けた。 「あはは、諦めないわ。 日本人はお金だけでは、動かないって事ね。」    ー苦い麦 バンド編ー 終わり

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