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今日もまた、目が覚めると知らない女の人が隣に寝ていた。当然の如く知らない部屋で、当然の如くお互いに裸で。
柔らかくて暖かいふかふかのベッド。淡いピンクのシーツ。ぼんやりと光の差し込む花柄のカーテン。どれも趣味じゃない。
起き上がると寒気がして、急いで自分の服を探す。
床に脱ぎ散らかしたままのジーンズと、その上にボクサーパンツがひしゃげていた。Tシャツは、脇に置かれたブラウスとブラジャーの下敷きになっている。
「ん…」
ベッドから降りないまま、横着に腕だけを伸ばして皺だらけのTシャツを取る。軽くはたいても綺麗にはならないが、仕方なく袖を通す。一瞬、女性モノの香水の匂いがした。
猛烈に煙草が吸いたくなる。
ベッドの横に置かれた鏡台を見ると、ピンクのパッケージが置かれていた。名前だけは知っている銘柄だが、自分では絶対に買わない。特にこだわりがあるわけでもなく、迷いもなく手に取って、脇に置いてあったライターで火を点けた。
メンソールの刺激と一緒に、ピーチの香りが流れ込んでくる。昨日の夜と思しき記憶も断片的に蘇ってくる。爆音で流れる音楽と、薄暗くて煙たい空間を横切るレーザービームと、煙草を吸う綺麗な女の人。
でも、何を話したのか、どうやってここに来たのか、そして相手の名前すらろくに思い出せない。そんな女の人が隣で寝返りを打ち、ゆっくりと目を開けた。長い髪がくちゃくちゃだ。
「…起きたの?」
少し掠れた、低い声で聞かれて。
「起こしちゃった?ゴメンネ。」
そう言って頭を撫でた。髪を梳くと、メイクの剥げた顔が現れる。いつもこの瞬間はドキドキする。あんまりタイプじゃなかった。
「ううん、いいよ。」
女の人は少し恥ずかしそうに言って、肩を竦める。
「煙草一本貰っちゃった。」
「いいよ、それくらい。」
何でも許してくれるみたいで安心した。優しい人で良かった。
テーブルの上に置かれたパールピンクの灰皿には既に吸い殻が幾つかあって、昨日も吸ったのかな、なんて思ったりした。何せ記憶がおぼろげで、まともに覚えている事の方が少なそうだった。
「じゃあ、そろそろ行くね。」
長居は無用だ。そう言ってベッドを出て、パンツとジーンズを履く。
「えっ?もう?」
女の人も慌てた様子でベッドから起き上がろうとする。うつ伏せだが、おっぱいが丸見えだ。
「いいよいいよ、お見送りなんて。寝ときな。」
通しっぱなしだったベルトを締め、Tシャツを下ろしながら、女の人を押さえて、もう一度ベッドに寝かせる。
でも食い下がろうとしてくる。
「そ、そうじゃなくて…その、朝ごはんくらい」
「いーって!朝は食欲無いんだ。」
テキトーに誤魔化しながら、左手で尻ポケットを確認する。左右それぞれにスマホと財布。左ポケットには鍵の感触。それさえあれば大丈夫だ。
「でも…」
聞き分けの悪い女の人。あんまり好きじゃない。
「あーもう!」
イライラして、大きい声を出して。それからベッドに片膝を突いて、女の人を引き寄せる。タイプじゃないけど、煙草も貰ってしまったし、後腐れなく出て行きたい。
最後にギューッてハグして、胸におっぱいが当たって、女の人からしかしない匂いがして。向こうが手を回して来る前に、チュッとキスして、離す。女の人はすとんとベッドに座り込んだ。
「はい、これでおしまい!」
言い聞かせるように言ったら、あとは見向きもせずに玄関の方へ向かう。踵の潰れた、履き古したスニーカーを突っ掛けて、ドアを開ける。その拍子に振り向くと、女の人はベッドの上で、ぽかんとしてこちらを見ていた。たまに縋り付いてくる人も居るので、そういうパターンじゃなくて良かったと思った。
バイバイと手を振って、笑顔で家を出た。
眩しい朝日に顔を顰めながら、何となくエレベーターのありそうな方へ歩き出す。欠伸が出た。
ここが何階なのかも分からないけれど、廊下から見える景色を見るに、そんなに高層階ではなさそうだ。
エントランスを出て、左右を見回した。知らない街の匂いがした。見覚えの無い場所だった。
昼と夜では風景の印象というものは違って見えるし、ここまではタクシーで来たのかも知れない。どっちに行けば、何という名前の駅に着くのか。それすらも分からない。でも感覚的に、歩き出す。
そうしながらポケットからスマホを出して、現在地を検索する。充電の残りは16%だ。
出てきたのは、聞き覚えのある程度の地名だった。想像していたより、閑散としている。その名の付いた駅で降りた事はないけど、今はそこから電車に乗るしかない。
駅に向かいながら、電車の乗り換えを調べる。自分のいつも使っている最寄り駅まで約20分。少し遠回りになる駅を使えば15分だった。徒歩の時間が数分増えるだけで、料金は変わってくる。微々たる額でも、気にする人は気にするのだろう。
ほとんどシャッターの降りた商店街を抜けて、着いた駅にはほとんど人は居なかった。
そこで、今日が日曜日で、時間が午前7時過ぎなのだと実感が湧いた。街が想像よりも閑散としていたのは、その所為もあったのかも知れない。何にせよ、あんまり頭が働かない。
とりあえず来た電車に乗って、ガラガラに空いたシートに座って、目を閉じた。
使い慣れた駅で降りて、改札を抜け、しばらく歩けば公園がある。
その道中に自動販売機で安いメーカーの炭酸ジュースを買ってから、ふらりと公園に入った。犬の散歩をしている人を見ながら、ベンチに座り、ジュースを飲む。着色料で真っ黄色になった液体は、人工甘味料と香料がバリバリに利いたチープな味。犬も可愛いけど、飼うなら猫だ。
ジュースの缶を足元に置き、ベンチに足を上げて仰向けになる。全身がだるい。お風呂に入りたい。昨日の夜に聴いた爆音が、まだ耳の中に残っているみたい。ぴったりと耳栓をされたみたいに、頭の中に籠って反響し続けている。
まだ気温はそれほど高くない。木陰から陽射しがチラチラと覗く。
爽やかな空気を感じているのに、頭の中にはモヤがかかってるみたいで、スッキリしない。起きてからずっと、いや、それ以前から。いつからだったか思い出せないほど。
目を閉じると寝てしまいたくなって、でもこんな場所で寝れられる筈もないから、力を振り絞るように仕方なく起き上がって公園を出た。
そこに近付くに連れ、いい匂いがしてきた。女の人の匂いじゃなく、ピーチの煙草の匂いでもなく、美味しそうな朝ご飯の匂い。温かいお味噌汁、焼き魚、もうすぐ白いご飯が炊ける炊飯器から立ちのぼる湯気の匂い。
キソウホンノウってやつみたいなのに引き寄せられて、誘われるように鍵を開けて入ると、それが一層はっきりとする。
「ただいまぁ。」
もうすっかり習慣になった声掛けに、口が勝手に動いた。
すると、何やら話し掛ける声。それからドアが開き、リンリンという鈴の音と、軽やかな四つ足の足音がこっちに向かって来るのが聴こえてくる。
顔を出したのは、銀色の毛玉。もといクラシックタビーのアメリカンショートヘア。
「チィ、ただいま。」
最初は本当に生まれたてみたいな仔猫だったから、チビって呼んでたんだけど。拾った時より、あっという間に大きくなって、チビとは呼べなくなって、チィになった。おまけにあの時とは見違えるほど綺麗になったし、可愛さは日に日に増していっている。
靴を脱いで上がり込む挙動に、ふんふんと鼻を鳴らしてまとわり付いて、大きな青い瞳で見上げてくる。なめらかな毛並みと、ちょっとだけぽっちゃりした抱き心地はサイコー。
「何もお土産持ってないや、ごめんな。」
手を広げて、裏返して、何も持ってない事を伝える。洗面所に寄ってからリビングに向かう道中にも、チィは足元にすり付いてくるので、蹴ったり踏んだりしないように気を付けている。
リビングに入ると、男の人の中でも更に低めの、落ち着いた声が出迎えてくれる。
「お帰りなさい。朝ごはん作ってるわよ。」
マコちゃんは対面式のキッチンの中で、何やら手を動かしていた。眼鏡を掛けているところを見るに、今日は外出の予定は無いらしい。
チィを抱き上げて、首の後ろを撫でながら返事をする。
「ただいま。お腹空いてるわよ。」
話し方を真似して返すとマコちゃんは下を向いたまま、ふふふと笑って。
「先にシャワー浴びて来なさい。」
当たり前のようにそう続けて、チラッと目線をこっちに寄越し、またすぐに手元へ戻す。
「今日もすごい格好ね。」
チィをリビングの床に下ろして、キッチンの入口に寄り掛かる。
「起きたら服、シワシワになっちゃってて。」
「夜の間に脱ぎ散らかして?」
「うん。」
背の高いマコちゃんが下を向いている。ちょっと猫背でなだらかな身体の曲線と、今は髪が少し伸びていて、そこから覗くうなじが綺麗。
近寄って、右手でお尻を撫でるように触った。
「ちょっと。」
そう軽く言ってくるマコちゃんは、思わず触ってしまうほどスタイルが良い。少し外国人っぽい顔立ちに、いわゆる細マッチョというやつで、脚が長くて、腰の位置が高い。身長が低い男としては、そんなところも羨ましい。
「まだシたりないの?」
マコちゃんには、全部ぜんぶお見通しなようだった。昨日の夕方くらいに家を出てから、一回も連絡なんて取っていないのに。何処で誰と何をして過ごしたのかなんて、自分自身ですら記憶が曖昧な事を、マコちゃんは手に取るように分かるみたい。
「部屋は綺麗だったけど、顔はあんまりタイプじゃなかったよぉ。」
ふざけながらそう言って、調子に乗って、広い背中に後ろから抱き付く。両手が塞がっているのを良い事に、エプロンの隙間に手を入れて乳首をまさぐった。
「コラ!」
包丁を持った手で振りほどかれ、一瞬ヒヤッとする。でも、笑いが漏れた。絶対に有り得ないけど、マコちゃんになら刺されても良いかな、なんて思っているから。
「お風呂、入ってきマース。」
そんないつものやりとりの後、シャワーを浴びていたら、マコちゃんや、チィや、今朝まで一緒に居た女の人のことが頭を埋め尽くしてきた。
毎晩のように遊びに行って、飲み歩いて、知らない女の人と寝て、起きたらゾンビみたいになって、マコちゃんの居るこの家に帰ってくる。
マコちゃんはそうするのがまるで当たり前みたいな顔をして出迎えてくれる。
一緒にゲームをするために初めて遊びに来て、災害級の豪雨で電車が止まって帰れなくなった時も、ストーカーまがいの元カノに包丁で刺されそうになって、隠れる場所を探していた時も、大学を辞めて、親と喧嘩をして家を飛び出した時も、何も聞かずに泊まりたいだけ泊まらせてくれて。いつの間にか、自分の家として暮らすようになってしまっていた。
向こうから深い事情を聞いて来る事はないけど、こっちが何か話したくなったら、マコちゃんは何時間でも聞いてくれる。ソファーに座って、いつの間にか温かい飲み物なんか用意してくれて、うん、うん、と落ち着いた声で相槌を打ちながら。
いつもとにかく冷静で、あんまり大きな声で笑ったり怒ったり泣いたりしないマコちゃんは、カッコイイ。さっき休憩していた公園で、ボロボロのチィを拾った時も、半泣きで飛び込んできた様子を見るなり、上着を羽織って車を飛ばして、動物病院に連れて行ってくれた。颯爽と、という言葉がぴったりだった。
そう言えば、チィを病院に連れて行って、体の具合が生まれつきあまりよくない事や、長生きできないかも知れないと伝えられても、マコちゃんは顔色一つ変えなかった。飼いたいならウチで飼ってもいいのよ、って言ってくれたから、チィはこの家の子になった。
実は、マコちゃんについて知っていることは多くない。名前はクリハラ マコトっていうらしい。本人の代わりに荷物を受け取る事があるから覚えてしまった。マコちゃんは頭が良くて、色んなことを知っていて、在宅でパソコンを使う仕事をしていて、優しくて、猫が好きで、筋トレが好きで、あんな見た目なのにエッチの時は受け身で、耳を舐められるのが弱くて、今は恋人が居ない。
向こうが聞いて来ないから、こっちも聞けずにいるところもある。聞いたら教えてくれそうなことでも、踏み込むのを躊躇してしまって、何も聞けないまま。マコちゃんについて知らない事を知ろうとするのは、いけない気がして。知らなくてもやって行けてるから、知らずに済む事はあるのかも。そして、それはお互い様かも知れないって。
マコちゃんが毎朝どういう思いで迎えてくれているのか、どうしてあの時チィを引き取ってくれたのか、もともと他の猫より腎臓の弱いチィはこれからも元気でやっていけるのか、今朝の女の人は誰だったのか、これまで同じ事をしてきた女の人とは何か違ったのだろうか。これからもこんな生活が続いていくのか。
また、考えがまとまらなくなってくる。そうしている内に、涙が出てきた。どういう感情で、どうして泣いているのか、自分でも理解ができない。
すぐに嗚咽が始まって、呼吸の仕方が分からなくなって、上から流れてくるシャワーに溺れそになる。立っているのも辛くなって、壁に寄り掛かって、そのままへたり込んでしまう。その拍子にシャンプー台にぶつかって、倒してしまった。頭の上から、石鹸やら安全カミソリが落ちてくる。
ひぐっ、ひぐっとしゃっくりが出て、鼻や喉が痛くなってきて、それでもボタボタと涙を流す事しかできない。涙でぼやけた視界をシャワーが伝っていく。
しばらくそうしていると、マコちゃんが来た。
「服置いといたわ…って、あらら。」
ドアの向こうでそう言ったのが聞こえてから、すぐにドアが開いて、廊下に膝立ちになったマコちゃんが身を乗り出してくる。
「ほら、おいで。」
そう言って、シャワーでずぶ濡れになるのも気にせず、抱き締めてくれた。
さっき女の人にしたのよりもずっとずっと強い力。硬くて分厚い胸筋と、引き締まった腹筋が当たる。しっかりした腕にギューッて抱き締められて、裸でずぶ濡れのまま抱き付き返して、顔を擦り付けて、広い肩に顎を乗せて泣く。
安心してしまう。マコちゃんが来てくれたから。マコちゃんが優しくしてくれるから。
それから、上の服を脱いだマコちゃんに頭と体を洗ってバスタオルで拭いてもらい、髪をドライヤーで乾かしてもらった。マコちゃんの使っているのとは違う敏感肌用のボディーソープの匂いと、マコちゃんと同じシャンプーの匂いが混ざる。
小さい子みたいに服を着せてもらって、マコちゃんも新しい服に着替えた頃、ようやく落ち着いて席に着くことができた。
「エッチしたい。マコちゃん。」
そう言うと、珍しくマコちゃんが吹き出した。咳き込み、胸を叩きながら、コップに手を伸ばす。
「さっきして来たんじゃないの?」
水を飲んでから、少しずれた眼鏡越しに上目遣いになって聞いてくる。涼しいその目線だけでゾクゾクする。じわっと血が通うのを感じる。
「マコちゃんとはしてないもん。」
「じゃあ、夜にね。私、これからお仕事だから。」
こう言った時のマコちゃんは、自分の部屋に引っ込んでしまうと、しばらく出てこない。
入って来ちゃダメって言われているから、仕事中のマコちゃんの部屋に入った事はない。ドアに聞き耳を立ててみた事ならあるけど、知らない誰かとの話し声と、パソコンの音がずっと続いているだけで、詳しくは聞き取れなかった。
「分かった。待ってる。」
そう答えると、マコちゃんは立ち上がり、食器をキッチンに下げて、そのまま洗い物を始める。足元に寄ってきたチィを抱き上げて、撫でながらソファーに横になる。今度こそ寝落ちてしまえそうだった。猫は安全だと思った縄張りの中なら、いくらでも無防備になれるんだ。
しばらくウトウトしていると洗い物の音が終わる。マコちゃんが戻ってきて、テレビとソファーの間に置かれたローテーブルに封筒を置く。
「無駄遣いしちゃダメよ。」
いつもの決まり文句を言うマコちゃんの顔を見上げる。今日は何処にも行くつもりなんてない。マコちゃんの仕事が終わるまで、のんびり待っていればいい。
「待ってるってば。」
「前にもそう言って出掛けたでしょ。」
頭の良いマコちゃんは、記憶力も良い。たぶん今まで寝てきた相手の顔と名前を全員分覚えているんじゃないかってくらい。頭が悪くて言い返せないから、エヘヘと笑って誤魔化すしかなかった。
でもマコちゃんは細い腰に両手を宛てて、至って真面目風に、
「女のコとデートするなら、気前よくならなきゃ。ましてや煙草を貰うなんて。」
母親というものが居たら、多分こんな感じなのかもな。なんて思ったりする。
でも口うるさいだとか、説教されてるみたいだとか、そんな風に煩わしく思ったりしないのは、マコちゃんが男の人だからなんだろうか。
「今朝はちょうど切らしてたんだよ!」
何でも分かってしまうらしいマコちゃんに苦しまぎれに言い返すと、マコちゃんはやれやれと肩を竦めてから、じゃあね、と言って部屋へ行ってしまった。
マコちゃんは煙草を吸わないから、この家には灰皿が無い。チィの為にも良くないから、家の中では吸わないようにしている。どうしても吸いたくなったら、外に出なければならない。
だからチィをソファーに置いて、マコちゃんの置いて行った封筒だけ持って外に出た。
日が高くなるに連れ、暑さは増してくる。
じりじりと照り付ける太陽と、ミンミンと鳴く蝉の声。言葉では説明できない、夏の匂い。
すぐに汗が出てきて、せっかくシャワーを浴びたのに、Tシャツが肌に貼りついてしまう。髪の生え際から流れてきた汗を手の平で拭い上げる。
煙草を買いがてらコンビニに行って、クーラーの効いた中で涼みながら、漫画雑誌を立ち読みして、エッチな本の表紙を見て、お菓子とジュースとアイスとコンドームを買って。
ゴミ箱の前の車輪止めに腰を下ろして、ソーダ味のアイスを噛むように食べながら、ぼんやりと通りを見ていた。
日曜日の午前中。皆のんびり寝ているのか、あんまり人の姿は多くない。
スマホに着信があった。「ぁみみ」と表示されても、誰だか分からない。今はアイスに集中しないと溶けてしまうので、誰とも話したくない。
しばらく画面を見ていると呼び出し画面が終わって、不在着信に切り変わり、それからメッセージが送られてくる。
『おはよーこんな時間までねちゃった』
『きょうおやすみ?٩(๑❛ᴗ❛๑)۶』
『デートしない?(*бωб)』
『おウチデートでもいいよ!(öᴗ<๑)』
『この前カワィィって言ってくれた下着で待ってる(ᴗ͈ˬᴗ͈⸝⸝)୨୧』
あっという間に通知欄が埋まってしまうほどのメッセージに続いて、女の人の写真が送られてきた。目が有り得ないほど大きくて、小さい顔の周りは不自然にぼやけている。エイリアンみたいな顔の下は裸だった。
ポタポタ垂れてくるアイスを頑張って舐め取りながら、やっとの思いでメッセージを一つだけ返信した。
『また今度』
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