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第1話『Ω』

世の中には第二の性とゆうものが存在する。 男女とゆう性別とは別で「α」「β」「Ω」のどれかひとつが第二次成長期が終了する目安として15年目の誕生日に診断を受けて正式決定するらしいけど結果から言えば俺は「Ω」だった 「ヒートと薬については今説明した通りだけど今段階で何か質問はあるかな?」 「えっと……今のとこは特に」 「そっか。お母様の方は?」 「その、ヒートについてなんですけど」 多分これからの長い人生を診てもらう事になる主治医と母親が真剣に話している横で俺は少し他人事のような気分だった、だって母さんも父さんも兄や姉も周りのほとんどがβだったからなんとなく俺もそうなんだろうなぁとか思ってたからまさかΩだとは思わないじゃん? ヒートってしんどいのかな、 さっきの説明じゃ個人差があるみたいだけど女子の生理みたいなもんなのかなヒートじたい誕生日を迎えてもすぐにくる人とこない人とで分かれるみたいだし、めんどくさそうだなぁ 「じゃあ軽めの薬を持たせた方が?」 「そうですね。息子さんの場合はまだきていないとの事なので月一の定期検診は必須になりますがもし症状が軽い方だった場合強い薬だと副作用も強くなってしまいますし、昔の話とはいえ今も残っている思想ですから身を守るためにも必要かと思います」 「そうですよね」 主治医の言葉に母さんの表情が曇った Ωだって診断をみた時点で顔色は良くはなかったけどたぶん心配なのだろう主治医の言う思想ってゆうのは歴史の中でΩの社会的地位が低く劣等種とゆう扱いを受けてきたからだ。ヒートを起こせば本人の意思に関係なくフェロモンが分泌されるから影響を受けてしまうαや性犯罪が絶えず定期的なヒートでの体調不良は人間社会で生きていく中でもとても不利になる 「とりあえずはファースト薬として一般的なものを処方しておきます。尚道くん」 「ぁ、はい」 「少しでもいつもと違う感覚。だるさや熱っぽさ体調の変化があったら検診の時に言ってね」 「えっと、はい、わかりました」 まぁだからこそヒートを抑える薬が必須なわけで先人達の努力だったり今は多様性の時代なのもあって偏見を持つ人はほとんど居ないらしいけど爺ちゃん婆ちゃん世代にはまだ根強い。 て、保健の授業で言われた。 「お前『Ω』だったってマジ?」 「なんかそうらしい」 帰宅後に診断書をみた兄がマジじゃんて軽い反応で部活を終えて帰ってきた姉も同じテンションであまり重くは捉えていない様子だった 「あんたあれは?ヒートの薬」 「一応貰った」 「へぇ、これが抑制剤」 「初めて見た」 まじまじと見られるのは流石に複雑 「っ……もういいでしょ」 「ぁ。」 机に置いていた薬を通学カバンの中に収めた 「しかしあんたがΩねぇ」 「どっからどう見てもβ顔なのに」 β顔ってなんだよ平凡だっていいたいのか 「姉ちゃんも兄ちゃんも他人事みたいに」 「だって私βだもん」 「俺もβだし。授業でΩのフェロモンはβにたいして影響も無いって事はお前も習っただろ?」 「そうだけどさぁ」 「てゆうかお前自身実感ねぇだろ」 「全然ない」 「だよなー。俺も弟がΩとか実感ねぇわ」 「私もー。αならクラスにいるけど」 「あ。そうだったわお前αには気をつけろよ」 「急な兄貴ヅラ」 「心配を辛辣で返すのやめて兄ちゃん悲しい」 「でもマジで気をつけなよ」 姉ちゃんがアイスの棒を捨てながら話したのはαの友人からきいたらしい実体験だった 「駅前の端っこで強いヒート起こしてる人がいたらしくてさ薬飲んで逃げたって言ってた。私達βからしたらさほど影響は無いものだし個人差もあるらしいけどαからしたらΩのヒートはマジで理性揺さぶられるらしいから危機感は持たないとね」 「それはわかってる、つもり」 「つもりじゃダメ。ヒートが起きたらつもりなんて言葉通用しないんだからね」 そう、問題はαとの関係性だ。 Ωのヒートは何故かαには強く影響するらしくΩが自身の意思とは関係なくフェロモンが分泌されるのと同じようにヒートのフェロモンに当てられたαも自身の意思とは関係なく性的欲求が抑えられなくなるらしい、理性を保つ為にα用の抑制剤もあるしそれでも効かずに理性の崩壊ラットを起こす可能性だってある 「もし番になったりなんかしたらあんたの人生決まっちゃうんだから」 「ちょっと番とか怖いこと言わないでよ姉ちゃんはいっつも俺のこと脅すっ」 「今回はそれくらい重要な事なの」 姉ちゃんがいつもより神妙な面持ちで話すもんだからちょっと怖くなる、兄ちゃんも何も口出しはしないけど真剣な顔だ 「…………」 分かってるよ、番になればΩはその人がヒート時の薬代わりになるから抑制剤がきかなくなる日常生活も難しくなるし強く当てられたαがラット起こして気だけば番になんて事になればお互いに不幸だし厄介なのはαは新しく番を作れるけど捨てられたΩはそれが出来ない 「だって、でもっ、そんな急に」 知識はあっても気持ちが追いつかなぃ 自分がΩだなんて実感ないし ヒートだって経験ないし でも言葉も薬も診断書もそれを証明しててΩがどんな扱いを受けるのかそんな漠然とした不安はあって今までネットやニュースで流れていた事件が自分にも起こりうる事だって事実が確かにあって 「追いつかなぃ、まだムリ」 俯いて思わずそんな言葉が溢れた俺を姉ちゃんが兄ちゃん側に押しながらサンドイッチした 「ごめん、強くいいすぎた」 「……」 「私達がいるよ。兄姉弟だし。βだし。」 「……でも俺Ωだった」 「それはそのっ、だから、つまりは」 言葉を詰まらせる姉ちゃんを見かねたのか兄ちゃんがため息を吐きながらこたえた 「要はコイツも俺もお前の味方だって事だよ」 俺の、味方 「お前がどんな人生を歩もうが自由だけどΩである以上危機感は持て。さっきの追いつかないとかムリって言葉は当然だと思うからだからすぐじゃなくていい。ただ俺達がいるって事は絶対忘れんな」 「……」 「わかった?」 「なんとなく」 「ならいい」 なんか兄ちゃんがカッコイイ 悔しい、兄ちゃんのくせに。 「お兄ちゃん言語化うまい」 「お前が下手すぎんだよ」 「ああっ今私の事バカにしたでしょ」 「してねぇし」 「絶対した!」 「してねぇって!」 「ちょっと他人挟んで喧嘩しないでよ!」 姉ちゃんの心配で少しの実感がわいて 兄ちゃんの言葉に少しの勇気がわいて それ以上に変わらない二人に安心した。

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