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第6話
「あっ、イクヤ……っ、入った?」
上擦った声で聞いてくるナオは、まだ震えている。ナオの表情も苦痛のそれだ。しんどいのかな、と思ってそのまま動かず、馴染むまで待つことにする。
「ああ、入ったよ。根元までずっぽり」
「……っ」
ビクン、とナオの肩が震える。恥ずかしいからやめろよ、と言われそうだったけど、さっきの尻キスといい、ナオは結構責められるのが好きなのかもしれない。
「ナオ……」
ナオの表情から苦しさが取れてくると、後ろも次第に馴染んでくる。トロトロに溶けたナオの後ろは、俺の背中をぶるりと震わせた。気持ちよくてふわりと意識が遠のきそうになる。
「気持ちいい……っ」
「……っ」
思わずそう言うと、ナオの後ろが俺を締め付けた。激しく呼吸するナオの吐息すら俺の身体をくすぐって、じっとしているのが困難になってくる。
「ナオ、ナオ……動いていい?」
自分でも切羽詰まった声になったと思う。ナオは声も出せないのか激しく喘ぎ、俺の首に腕を回した。
「なるべく、ゆっくりするから……っ」
口ではそう言ったものの、自信はない。とにかくナオを傷付けないようにしなきゃ、とだけ考えて腰を動かす。
「……っ、んぅ……っ」
ナオが声を上げた。興奮で赤くなった唇を噛み付くように吸い、複雑にうねる粘膜の締め付けから意識を逸らす。じゃないとあっという間に達してしまいそうだった。
「イクヤ……イクヤ……っ」
高く上擦った声で呼ばれる。そんなナオもかわいくて、腰が止められない。ナオをいかせないといけないのに、このままじゃ俺が先に終わってしまう。
「イクヤっ、……──気持ちいい……っ!」
「……っ」
ナオが両手を伸ばして抱きついてきた。口を開けば憎まれ口ばかりなのに、こんな時だけ素直になるなよと思う。おかげで動くことに精一杯で、ナオをいかせるなんて二の次になりそうだ。
「……っ、くそ……っ」
あまりもたなそうな俺の身体にイラつく。少し止まって休憩すればいいのに、ナオの身体を貪り尽くそうと、脳内がそれだけに占められていく。下からのローションの音と、ナオの尻に俺の腰が当たる音。それらもさらに俺を高みへと連れて行った。
「ナオ、ナオ……ごめんいきそう……っ」
唇が付く距離でそう叫ぶと、ナオは潤んだ瞳で俺をじっと見ていた。久しぶりに目が合った気がする、と思ったら、せり上ってくる何かに俺は顔を顰める。
「あ……っ」
俺の後頭部でナオの手がギュッと握られた。髪の毛を引っ張られ、それすらも愛おしいと思ったその時。
「んんんんー……っ!」
「う……っ」
ナオの中が今までにないくらい締まり、ナオの腰がガクガクと震えた。その複雑な動きに俺は堪らず精を放つ。
「あっ、……はぁっ!」
ナオはブルブルと震えながら、恍惚とした表情で目を閉じていた。開いた唇から覗く赤い舌と、溢れた唾液に吸い付くと、甘い声を上げて俺を抱きしめてくれる。
すると部屋全体にブザー音が鳴り響いた。びっくりして顔を上げると、ブザーが止まった後にドアの方から、カチャン、と鍵が開く音がする。
「え、……ナオ、今いったのか?」
「ん? た、多分……?」
俺はナオの額にキスを落とすと、断ってからドアを見に行った。すると、あれだけ開かなかったドアが開くようになっていて、俺はそこに枕を挟んで戻る。もう二度と、閉じ込められたという恐怖を味わいたくなかったんだ。
本当ならもう少しイチャイチャしたかったけど、俺たちは手早くシャワーを浴びて服を着る。荷物も何も部屋にはなく、どうしてこうなったのか、さっぱり分からなかったのが後からジワジワと恐怖になった。
歩けないというナオを背負い、部屋を出る。カチャン、というドアが閉まる音を聞きたくなくて、俺はすぐに歩き出した。
「イクヤ」
背中のナオがしがみついてくる。ナオも怖かったのだろう、内装と同じくラブホらしき廊下を歩いてると呼ばれて、俺は振り返った。
「好き」
そう言ってナオは顔を伏せてしまう。俺は笑ってナオを背負い直し、俺もだよ、と再び歩き出した。
大丈夫。俺の背中には、俺の宝物がいる。そう思うと自然と足にも力が入る。
俺はナオと一緒に建物を出た。
[完]
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