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24この名前はふさわしくない
「一般人は一派人らしく、暗躍しますかね」
俺とサシュは誘拐組織のアジトの一つに来ていた、これからどうするかと言うとまず奴隷を逃がしてしまおうと俺は思った。足手まといになりそうな奴隷がいるとやりにくい、まずは捕まっている奴隷たちを全て逃がしてしまうことからだ。
「子猫ちゃん、これから捕まっている奴隷を逃がすよ」
「はいなのです」
「地図からしてあちこちに牢屋があるな、地道に一つずつ潰していこう」
「ええ、わかりました。”精霊の加護を受けし選ばれた者”さん」
「ぐはっ!? ってその名前!! なんか俺にダメージがあるんだけど」
「多分、気のせいなのです。”精霊の加護を受けし選ばれた者”さん」
俺は密かに心にダメージを負いながら、サシュと一緒に奴隷の牢屋まで警戒しながら歩いていった。その牢屋にはいろんなタイプの奴隷が捕まっていた、男女は分けるくらいの配慮もされていなかった。
「ちょっと聞くけど、おたくは奴隷誘拐の犯人さん?」
「なんだと、仮面野郎。そーだよ、それがどうした!! 殺すぞ!!」
「君たちのボスについて、できれば詳しく話してくれると助かるんだけどな」
「なんっで敵相手のてめえらに、そんなこと喋らないとならねぇんだ!!」
「そうかい、それじゃあ。さようなら」
「――――――!?」
当然見張りの敵もいたのだが一瞬で俺の剣の餌食となった、敵かどうかは確かめたのだからまさか実は味方でしたということも無いはずだ。
「なんだ、お前らは自分の仲間を殺して何の真似だ?」
「俺たちはこいつらの仲間じゃない、敵対組織と言っていい者さ。その証拠として今からこの牢屋の鍵を開ける」
「……俺たちを出してくれるつーのか?」
「そうだ、できるだけ安全な場所にさっさと逃げてくれ、そうしてくれると俺たちも助かるんだ」
「本当に牢屋の鍵を外しやがった、でも怪我人は逃げられないぞ」
「そっか、それはいけないな。”光よ、頼む”……これで大丈夫なはずだ」
「足が……、足が治ってやがる!! 皆、なんだか分からねぇが脱出だ!? 見つからねぇようにこっそり逃げ出すぞ!!」
「そうそう、もう一度捕まらないように気をつけてくれ」
俺とサシュは奴隷全員の怪我を治して脱出するように言うと、また闇の中に隠れて様子を伺っていた、そうしたらこそこそっとでも確実に奴隷たちは逃げ出した。それでも逃げない奴隷がしばらくすると残った、俺たちは再び姿を現して話を聞いた。
「どうして逃げないんだ? せっかく牢屋から解放したのに」
「私たちは奴隷商人から直接ここに売られました、主人からの命令が無いと動けません」
「ふむっ、それじゃ奴隷契約は闇だから、多分こうだろうな。”光よ、頼む”……これで奴隷契約を破棄したからこれで大丈夫」
「えっ、私たちはもう奴隷ではないのですか?」
「ああ、自由に逃げ出せるはずだよ。それじゃ、あとはご勝手に」
「あっ、ありがとうございます!!」
そうして最終的に全ての奴隷が逃げていった、一つ目の牢屋はそれで済んだ。ふと思いついたのだ、奴隷契約は闇の契約だから光で消せないだろうかと、それからは思った通り光の精霊が邪悪な魔法を破壊できたから奴隷契約は白紙になった、これでまた一つ光の精霊について知った。そして続いて二つ目、三つ目、四つ目と順調に奴隷たちを俺たちは解放していった。五つ目の牢屋で問題が起きた、一人の男がこうわめき散らしたのだ。
「敵対組織なんて嘘だ、これは罠だ。逃げ出した者は恐ろしい罰を受けることになるぞ!!」
「そういうお前は怪しいな、逃げ出さないならそれでもいいが、もうすぐ激しい戦闘になる。それで死んでも俺は知らんぞ、ちゃんと逃げ出すように言ったからな」
そうして俺とサシュはまた闇にもぐって様子を見ていた、奴隷たちは最初は罠だなんだともめていたが、一人が逃げ出すと集団心理なのか最初に喚いた一人を除いて他の全員が逃げ出した。その一人は罠だと反論した奴でどこかの部屋を目指して走り出した、なので闇から出てこっそりとサシュを背負いその後をついていった。
「おいっ、奴隷どもが逃げ出したぞ」
「そっちもか、こっちの牢も空だ」
「奴隷がいなかったら、俺たちが生贄にされるぞ」
「神官の連中ならやるぞ」
「俺はおりる、こんなところで殺されてたまるか!?」
「まぁ、待てよ。落ち着け」
そうして醜い内輪もめが始まったのだが、俺は風の力でこの部屋の空気の酸素をかなり薄くした。そして全員が酸素不足で倒れるのを確認すると、俺は手足を縛って闇に放り込んだ、そしてそのままトレンデの警備隊前まで連れてきて放り出した。それに加えてお手紙までつけておいた、そのお手紙に俺の仮の名前を書くか書かないかでかなり俺たちはもめた。
『トレンデ警備隊へ
奴隷誘拐の実行犯たちです、牢屋にぶち込んでください。
”子猫ちゃん” ”精霊の加護を受けし選ばれた者”』
「なぁ子猫ちゃん、”精霊の加護を受けし選ばれた者”はいらなくない、いらないよ、うん、いらなーい」
「いいえ、絶対に必要です!!」
「わざわざ偽名を書いとく必要はないって!?」
「お手紙を書いたら、お名前を書くのはルールです。そうしないと誰から届いたのか分かりませんから」
「いや、今回はルールは無視でいいんじゃないかな!?」
「もう二人分の名前を書いちゃったのです、はい。書いたのなら、置いていくのです」
さてこれで奴隷たちは解放された、俺たちはひとまずここで切り上げて、ミルヒの街の宿屋に戻った。もう夜が明けかかっていて朝が近かったが、風呂に入って俺たちは眠りについた。そうして昼までぐっすり眠った俺たちはサシュのおはようのキスから始まって、昼間っからいちゃいちゃしまくった。
「ああん、カイト。あの人たち、無事に解放されたでしょうか?」
「ぴんくの乳首が相変わらず可愛いな、サシュ。何人かはまた捕まってるかもな」
「それじゃ、今夜も奴隷たちの解放ですね。ああっ!! やぁ!? 先っぽはらめぇ!?」
「奴隷の解放とあのアジトの探索だな。そう言われると舐めたくなるんだよ、サシュ」
「気持ち良くてふわふわするのです、ふぁーい、今夜も頑張りましょう」
「あっ、俺も同じ。こんな快感があるんだな、サシュの為なら俺も一生懸命に頑張ろうっと」
一見するとエロいことを昼間からやってる駄目人間たちだが、これは今夜頑張る為の英気を養っているのだ。まぁ、簡単に言うなら俺の活動理由はサシュだから、サシュとエッチなことをするとやる気がそりゃ出るのだ。エロパワーおそるべし、そんな馬鹿なと言っちゃいけないよ、人間やっぱりエロいことのためなら、凄い力が湧いてくるんだ。
「サシュとこんなにエッチなことしてたら、俺は世界だって救えそう」
「そうですか、それならもっとエッチなこといっぱいしてください」
「サシュったらなんて可愛いこと言うんだ、ほらっ、もうキスさせろ」
「うくっ、うぅ、ぷっはぁ。はぁ、はぁ、カイトのキス深いです」
「愛情がたっぷりこもってるからな、大好きだぜ。サシュ」
「ああん、僕も大好きです。カイト」
こうして敵が慌てまくっているだろう間に、俺たちはいちゃいちゃしまくってまた絆を深めておいた。サシュったら可愛い――!! もう俺は本当にサシュが抱ける日が楽しみでならなかった。
「さてと、敵さんはどう出てくるかなぁ」
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