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 そうして、なんとか俺の自宅まで連れてきて怪我の手当をしているわけだが、やはり腑に落ちない点がいくつもあった。  しかし、一人で逡巡しても答えがわかるわけでもなく、今はとりあえず目の前のことに集中することにした。  お湯を止めてタオルを絞る。  リビングに戻ると男はぐったりとソファに体を預けていた。  俺の足音に気づくと座り直し、ぼんやりと視線をこちらに向けた。 「おまたせ。しみたらごめんなさい」  隣に腰掛け、彼の顔の乾いた血を優しく拭き取っていった。  温いタオルと比べると、よりその肌の冷たさが際立った。 「そういえば……」  本当に人間なのだろうかと意味のわからないことが頭に浮かび、その思考をかき消すように話しかけた。 「俺は玲央。渡辺玲央(わたなべ れお)っていいます……よかったら名前おしえてくれませんか?」  今更ながらそう自己紹介して、彼の反応を伺う。  彼の闇に沈むような青い瞳が、俺を映す。 「エヴァンだ」  特に表情を変えずに、彼、エヴァンはそう名前を口にした。  正直教えてもらえるとは思っていなかったから内心ほっとした。 「エヴァンさんか……よろしく、おねがいします。まぶたの傷口消毒しますね」  どこか違和感を感じる部分があるとはいえ、日本語も通じるようで、コミニュケーションがとれるならどうにかなるだろうと、謎の自信を感じながら手当てを続けた。  上まぶたの傷口をアルコールで消毒し、絆創膏を貼る。殴られた頬もまた痛々しい色で痣になっていた。ポリ袋に氷を詰めてタオルで包んで渡すと、彼は素直に頬を冷やした。  最低限の応急処置を済ませ、俺はエヴァンを寝室へ案内した。 「ソファで構わない」  そういうエヴァンの腕を引いて、俺のベッドを貸すことにした。 「こんな大怪我してるのに、あんなとこで寝させられないですよ!」 「これくらい、大したことはない」 「たいしたことあります! 俺がソファで寝るんで、なにかあったら声かけてください。明日は念の為、病院行きましょうね?」  引かない俺にエヴァンは渋々従った。  彼が横になったのを確認したあと、救急セットを片付け、深夜2時をすぎたころやっと落ち着けた。  あまりも現実離れした出来事に、かなり戸惑っていた。  謎の男達に追われるエヴァン。  彼の異様に白い肌や冷たい体。  彼の纏う独特の雰囲気は怖くもあり、一方ですごく魅力的だった……。  見ず知らずの男を家に上げている不安もあったが、どこかわくわくしている自分もいた。  ソファに横になり体を預けると、すぐにまぶたが重くなり眠りについた。

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