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戻せない時間【3】

一般食堂の狭い裏庭は低いフェンス越しに、大学を挟むようにし広大な貯水池がある。 日よけ代わりの木の下小さな木製のベンチに腰を掛け錦を手招く。 幾分眩しさにもなれれば初夏の風の涼やかさと青空と太陽、光を反射する水面の輝き覆い茂る枝葉のあいだを差す木漏れ日、アスファルトに落ちる影のコントラストの全てが心地よい。 犯罪など在り得ないと錯覚するには充分すぎるほど、日の光に透ける緑も、空も、水面も何もかもが平穏で綺麗だ。 「ピクニックみたいだね。」 開放的な空間で、このキラキラした空気の中で昼食を摂るのもたまには良いかもしれない。ペットボトルの茶と安っぽい菓子パンを手に晴天の下で錦と並んで座る。 まるで、遠足だ。

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