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戻せない時間【4】

「君と一緒に出掛けた家族遠足を思い出す」 彼の通っていた小学校の年間行事の一つだった。 不意に錦が殺気立つのが分かった。 彼にとって海輝から与えられた居場所と優しい記憶の積み重ねは、今は苦痛でしかない。 奪うために、与えたのだ。 奪う程のものを彼が持っていなかったから。 奪い取り苦しめる為だけに、彼の欲しがるものを与えた。 「君、本当に可愛かった」 「お前なんか嫌いだ」 「そう」 ペットボトルの茶を差し出すが彼は受け取らない。 白いアスファルトに視線を落としたままだ。

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