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手を伸ばす【2】
「何」
「ここの近くにお気に入りの喫茶店があるんだ。いかない?」
「昼食か?」
「そう食べなおしに。ランチはまだやってるからさ。行こうよ」
足元に転がったスフレにはすでに小さなアリがたかっている。
「先ほど食べたのは昼食前の食事なのか。面白いデータだ」
「僕はそんな大喰いじゃないよ」
「今日摂取するはずのエネルギー源を半分ほど俺に渡したからか」
「まぁね」
何言ってるのかよく分からないが、拒む気はないらしい。
それはそうだろう。
僕と一緒に居られるのだから。
海輝は笑みを深める。
そっと手を取り、おいでと優しく声を掛ければ錦は素直に従う。
この子は優しくすればすぐに懐く。
警戒心が強い癖に無防備なのだ。
海輝が相手だと、彼の危うさは顕著になる。
そう、海輝が相手の時だけなのだ。
瞳を細め、まるで大事な宝物を見つめる様に笑んで見せれば、錦の表情がわずかに柔らかな物へと変わる。
髪を撫でると猫の様に目を細めた。
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