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第23話 【学校編】
×××
やや伏せた双眸。
やつれたような頬。
ダイニングテーブルに向かい合って朝食を摂るアゲハの顔色が、何となく優れない。
最近まで、そんな表情を見せなかったから……つい、忘れてしまいそうになる。
「……」
僕の、せいだ……
苦いものを飲み下し、居心地の悪さから目を背ける。
箸と茶碗を手にはしてはいるものの、食べ物が喉を通るとは思えない。
「……どうか、した?」
「え……」
驚いて視線をアゲハに戻せば、口の両端を綺麗に持ち上げ、作ったような明るい表情を浮かべていた。
「さっきから箸が止まってる」
「……」
「ほら、早く食べないと遅刻するよ」
そう言って僕を急かすアゲハが、小皿に盛られただし巻き玉子を箸で摘まむ。
「……んっ、美味しい!
さくらの卵焼きは、心があったかくなるような味がするよ」
そう言いながら、光を取り込んだ大きな瞳を細める。
恐らく、澱んだ空気を変えようと、気を遣ってくれたんだろう。
昔からそうだ。
床に伏せた母を元気づけようと、屈託のない笑顔を浮かべながら母の喜びそうな話をしていたっけ。
「……」
ごくん、と飲み下す度に動く首元の傷跡。とってつけたような笑顔さえも、痛々しくて見ていられない。
スル……
突然、アゲハの背後から広がる闇、闇、闇。
その肩口から静かに現れたのは──刃渡り10センチはあるだろうバタフライナイフ。
鋭く光る刃先。その刃元が、咀嚼するアゲハの喉元にピタリと当たる。
と──
「──ッ!」
ビチャッ、
顔面に飛び散る鮮血。生温かい感触。鉄の匂い──
「……」
突然、目の前で繰り広げられる惨劇に、指先が震える。
首元から血を流すアゲハが、何事もなかったかのように笑みを浮かべながら食事を続けている。
……大丈夫。
あれは、ただのフラッシュバックだ。
止まってしまった息をゆっくりと吐き、目を伏せる。
『では、次のニュースです──』
付けっぱなしのテレビから、原稿を読み上げる女性アナウンサーの真面目な声が響く。
画面に目をやれば、有名人がカメラの前で謝罪会見をする様子が映し出されていた。
パシャ、パシャ、
フラッシュが焚かれる度、ぼんやりと重なるアゲハの姿──首元に真新しい包帯を巻き、集まった報道陣の前で頭を下げ、何度も謝罪の言葉を口にする。
……え……
あの惨劇は、子供の頃にあったんじゃないの……?
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