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第1話
いつからだろう……
アゲハと一緒に住むようになったのは。
いつからだろう。
アゲハの首元にある手術跡に、鋭く光る金属片が時折見えるようになったのは……
ぼんやりする頭で考えてみるけれど、上手く思考が働かなくて。睫毛を下げ、ゆっくりと持ち上げた頃にはもう……酷い眠気の波に襲われていて。
重力に従って、重い瞼を閉じる事しかできなくなっていた。
×××
「そのままでいいよ」
食事が終わり空になった食器を重ねていると、優しく微笑むアゲハが椅子から立ち上がる。
カチャ、カチャン……
纏めた僕の食器を自分のと重ね、シンクへと運んでいく。
「……ありがと」
その背中に向かって言葉を投げ掛けるけど、思いの外小さくて。小さく咳払いをし、喉元に手を添える。
普段余り喋らないせいか、自分が思ってる以上の声量が出ない。耳の中で反響する声は大きいんだけど……多分、アゲハには届いていなかったかも。
「……」
でも、もう一度口にするのは……恥ずかしい。
テーブル端に置かれた処方薬。
入院中から飲んでいたこの薬は、口に含んだだけで苦い。良薬口に苦しとはよく言うけど、本当に効いているんだろうか。
ただ眠気を誘発し、思考能力を麻痺させることだけが目的なのだとしたら、狙い通りなのかもしれないけど。
五種類の錠剤を袋から取り出し、白湯でひとつずつ飲み下す。喉に引っ掛かる感覚と滲み広がる苦みに、未だに慣れる気などしない。
いつからか増えてしまった吐き気止めを一緒に服用した所で、後に残る気持ち悪さまで抑えられそうになかった。
カチャ、カシャン……
遠くから聞こえる、洗い物をする水の音。
料理も洗濯も、アゲハが全部引き受けてくれる。
僕は、何にもしていない。
やって貰うばかりで……何の役にも立てていない。
いくら兄弟とはいえ、このまま甘えっぱなしでいい筈なんかないのに。
カタン、
椅子から立ち上がり、キッチンへと向かう。
胃に食べ物を入れたせいで重くなった内臓が、下の臓器を圧迫してるような不快感が襲う。
「……お兄ちゃん」
お腹を抑えながら話し掛ければ、洗い物を続けるアゲハが「ん?」と返事をする。
「僕にも、手伝わせて」
小さく口を動かしてそう言えば、アゲハの動きが突然止まる。
ザァ──……
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