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第2話

ゆっくりと振り返るアゲハ。 その瞳が僅かに見開かれている。 「……」 何か、へんな事いったかな…… 普段とは違う雰囲気のアゲハに不安な気持ちで見つめていれば、その顔が取り繕ったように笑顔に変わる。 「……ああ、うん」 答えながら、アゲハが一歩横にずれる。 「なんか……懐かしいなぁ」 隣に立ち、水切りカゴに入った皿を拾って布巾で拭き始めると、洗い物を再開したアゲハがふと溢す。 「小学生の頃、こうして二人で夕食の後片付けをしたっけ」 「……え」 言われて初めて気付く。 確か……おばあちゃんが亡くなって、母が塞ぎ込んでしまって。暫く二人で夕食を作って、こうして後片付けまでしていたような気がする。 「はは、覚えてないか。まださくらは随分と小さかったから」 「……」 何となく、覚えてるよ。──そう言いたかったのに。 何故だろう。言ったらいけないような気がして、口を噤んだまま拭き終わったお皿を重ねて食器棚へと戻す。 「初めてさくらが作ってくれた卵焼き。あれ、甘くて美味しかったなぁ。 ……所々黒く焦げてて、形は良くなかったけど」 水を止め、ひっくり返したコップをカゴに置いたアゲハが、濡れた手を拭きながら何処か懐かしむような表情を浮かべる。 「じゃあ、リベンジ……してもいい?」 「……え」 食器棚を背にしてアゲハを見つめれば、一瞬驚いた表情をしたアゲハの眼が、柔らかく細められていく。 「うん。楽しみにしてる」 * 瞬きを数回。 自室のベッド端に座った状態で仰向けに倒れ、真っ白な天井をぼんやりと眺める。 最近は処方薬が増えたせいで、副作用の眠気があるけど……それまでは、寝付きがあまり良くなくて、処方された睡眠導入剤を今でも寝る前に服用している。 そのせいもあって、もう瞼が重い。 枕の位置まで移動しないといけないのに……酷い眠気のせいで、もう手足を動かせそうにない。 沈んでいく身体。 次第に掛かっていく、頭の中の白いモヤ。それが色濃くなっていく頃には、もう…… 真っ暗な無重力の世界へ…… 深く、深く……落ちていく……

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