1 / 4

1

 カレンダーの数字としてはすっかり秋になってしばらく過ぎていた。けれども昼過ぎのこの時間の今、あまり人が出歩くべきでない気温を叩き出しているらしい。  暑い、具体的な数字は分からないけれど、それ以外に出てくる言葉は何もなかった。  俺はなぜそんなところを歩いているのか、それは隣にいるこの男が原因だった。 「あづ~」 「うるさい。余計暑くなる」 「暑いもんは暑い! アイスでも食べないとやってらんねーだろ!」  俺以外に、唯一研究室に来ていた一輝(かずき)がそう喚いたせいで一緒にアイスを買うことになった。  エアコンの壊れた部屋はこの世の地獄としか思えなかった。そこまでは理解できる。だが、俺も一緒に買い物に出る必要はあったのだろうか。  そもそも、暑い部屋で一人で頑張る予定だったはずだった。 「わざわざ来ることないだろ? 夏休みだし」 「だって、来れば(まこと)に会えるだろ?」 「まあ、うん」 「俺に会いたくなかったのかこんにゃろー」  一輝は肘で俺のことを突いてきた。ただじゃれているときのこのノリは、正直今でも溜め息が出てしまいそうなほど面倒だ。

ともだちにシェアしよう!