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カレンダーの数字としてはすっかり秋になってしばらく過ぎていた。けれども昼過ぎのこの時間の今、あまり人が出歩くべきでない気温を叩き出しているらしい。
暑い、具体的な数字は分からないけれど、それ以外に出てくる言葉は何もなかった。
俺はなぜそんなところを歩いているのか、それは隣にいるこの男が原因だった。
「あづ~」
「うるさい。余計暑くなる」
「暑いもんは暑い! アイスでも食べないとやってらんねーだろ!」
俺以外に、唯一研究室に来ていた一輝 がそう喚いたせいで一緒にアイスを買うことになった。
エアコンの壊れた部屋はこの世の地獄としか思えなかった。そこまでは理解できる。だが、俺も一緒に買い物に出る必要はあったのだろうか。
そもそも、暑い部屋で一人で頑張る予定だったはずだった。
「わざわざ来ることないだろ? 夏休みだし」
「だって、来れば真 に会えるだろ?」
「まあ、うん」
「俺に会いたくなかったのかこんにゃろー」
一輝は肘で俺のことを突いてきた。ただじゃれているときのこのノリは、正直今でも溜め息が出てしまいそうなほど面倒だ。
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