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「クソッ……! おい、タイマーは何分にセットさせやがった!?」
「このままではまずい! 若 に連絡を……」
劉 と源次郎 がそう叫んだ時だった。鐘崎 と紫月 が姿を現したのが見えて、誰もが画面に釘付けになる。庚兆 は驚きつつも、更に勝ち誇った形相で瞳を輝かせていた。
「ヒュー! さすがは鐘崎遼二 だな。ちゃーんとタイミングよく正義の騎士として現れやがったじゃねえか。ってことは――ウチの連中は既に鐘崎 の手に堕ちたってことか」
やるねえ――と、余裕の笑みを浮かべている。自分の仲間が制圧されたかも知れないというのに、この余裕の態度には眉をしかめさせられる。それどころか『やるねえ』と、鐘崎 を讃えるとは到底信じられない思考回路だ。
「お前さん、自分のお仲間がどうなったか気にならんのですかな?」
源次郎 が問えども庚兆 はそんなことはどうでもいいと言って笑った。
「問題はここからだ。いかに鐘崎 でも救出は諦めるしかねえだろうよ」
「どういう意味だッ!」
劉 が怒鳴り上げる。
「まあそうがならりたてたところで始まらねえ。とにかく見てなって!」
まるでワクワクといった調子で画面を見つめながら庚兆 は狂気のような笑顔を見せた。
「タイマーはセットした時点で十分にしろと伝えてある。残り時間はー、もうあと五分ってところかな」
「何だとッ!?」
「鐘崎 がどれほど優れた戦士だろうが、この状況で救い出すのはほぼ無理だろうよ! ヤツだって自分の身は可愛いだろうからな。いかに親友の連れ合いと言えども、てめえの命を犠牲にするほどの能無しでもねえだろう。どこまで粘るか見ものだなぁ」
あははははと気が違ったような高笑いが地下室に響き渡る。
(若 ……、姐 さん……ッ)
源次郎 にしても劉 にしてもただ見守るしかできないでいることがもどかしい。爆破までの数分がとてつもなく長く、同時に短くも感じられた。
庚兆 は既に勝ったつもりでいるのだろう、これであの周焔 も少しは俺の気持ちが分かるだろうなどとほざきながら、檻の中で気が触れたように転げ回っては高笑いを繰り返している。既に頭がおかしくなっているとしか思えなかった。
◆ ◆ ◆
周が汐留の地下室に到着したのはそれから一時間になろうかという頃だった。大雨の中での救出劇で、戻って来た面々は周を含めて全員がびしょ濡れ状態だ。
「老板 ! お疲れ様です!」
劉 がひとまず安堵の表情で迎えたが、その場に待っていた源次郎 や橘 ら鐘崎 組の組員たちはどういうわけか皆呆然とした様子で静まり返っていた。それというのも納得である。なんと、檻の中で庚兆 が自害していたからである。
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