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その後、初詣で訪れた神社で参拝の順番待ちの列に並びながら、
「おい、カネ。せいぜい週一くれえで辛抱するこった」
周 に囁かれて鐘崎 はまたまたムスーッと鼻息を荒げてみせた。
「いや――これだけはどうあっても譲らねえ」
プルプルと震える手にした絵馬にしたためられた願掛けは――。
「参壱 ……!?」
またも堂々たる男気溢れる文字が絵馬の背面を彩っていることに紫月 と冰 は口をパクパクとさせて蒼白顔。周 だけは堪えきれない笑いに、ここ境内でも腹を抱えさせられる始末となった。
「カネ、おめえってほんっとチャレンジャーな? あー、腹捩れる!」
「どうとでも言え。男の沽券 にかけて譲れねえことってのはあるもんだ」
フンッ! と腕組みながら自らのしたためた絵馬を見つめる男前の彼を、道行く人々も小首を傾げて通り過ぎる。その数歩後ろでは「あちゃー」と頭を抱えてうなだれている紫月 を、冰 が「まあまあ」と苦笑ながらなだめている。
「ま、まあな……。参壱 くれえなら……たまにゃ素股で抜かせりゃナントカなるべ」
はぁああ――と呆れ顔で肩を落とし、ボソリとそんな台詞を漏らした紫月 の傍らで、冰 はまたまた不思議顔。
「スマタ……ってナンですか?」
生粋の純朴たる男は新年の境内に似つかわしくない卑猥な台詞も堂々と口走る。それを耳にした周 と鐘崎 が、今度は慌てて蒼白とさせられることとなった。
(おいこら、冰 ! ンなことをデケえ声で言うんじゃねえ……)
キョロキョロと周りを気に掛けながらも焦り顔でいる周 とは裏腹に、鐘崎 の方は――、
「ふむ、まあ……この際ソレでも良しとするか」
などと大真面目な調子で『ウンウン』とうなずいている。
とにもかくにも、くだらなくも愛のあふれる――? 新年の幕開けであった。
書き初め - FIN -
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