5 / 5

第5話

「その……色々と無理をさせてすまなかった」  翌朝、ベッドでコーヒーを飲みながら、ケインが心から謝罪した。 「は……はは」  力なく笑うトニーは、体中につけられたキスマークに途方に暮れている。  普段はおよそ取らないアクロバティックな体勢を続けたので、さすがに鍛えられたトニーの身体も、もはやガクガクだ。 「今日が休みで本当に良かった」 「君、まだ帰らないだろう? トニー?」 「帰りたくても動けねえよ」 「え、帰りたいのかい?」  悲しそうな顔になったケインの頭をトニーは微笑んでその頭を撫でた。 「いまは泥のように眠りたいところだな……」 「トニー」  頭を撫でられ、うっとりした顔でケインが囁く。 「愛してる」 「ああ。俺もだ」  それからふたりは、昼過ぎまで眠り──なんということのない二人の秘事はそうして過ぎていった。 ──ああ……どうして、こんなにも。

ともだちにシェアしよう!