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第4話
トニーには、ケインの趣味が全く分からなかった。ケインは自分よりも背が低いけれども、それは自分の背が高すぎるせいだし、何より彼はハンサムだ。
こんな図体がでかいばかりの自分のいったいどこがいいのか。
消防士としてのキャリアも彼の方が上だし──まあ、バディではあるけれども。
その彼にこんなにも自分を熱望されて、正直、トニーは困惑している。
それでも、二人を乗せたタクシーは夜の街を滑って、ケインの家へと、送り届けてしまった。
ケインは郊外のアパートメントに一人暮らしをしていた。
「入ってくれ」
言われるままに上がり込むと、思いのほか簡素な部屋はそこかしこに本が積まれている。
専門書も多いが、ハードボイルドのペーパーバックなどもちらほら。
「シャワー、使ってくれ。タオルはバスルームのキャビネットに入っているから。着替えは君サイズの物はないけれど、大判のタオルがあるからそれを使うといい」
「ああ、悪いな」
「その前に……」
ケインは両手を広げ、トニーを誘う。
「味見を良いかな?」
「味見って……」
呆れながらも、トニーはケインに唇を合わせた。
ついばむようにくちづけると、するりとケインの舌がしのびこんできた。
「……は…ぁ……」
口の中を陵辱されて苦しくなったトニーが、ケインの胸を押し返す。
その顔を見れば、すでにトニーは蕩けていた。
「ふふっ極上だね」
上気した顔でケインは、トニーの口元を指で拭う。
「トニー。恥ずかしいかも知れないけど、俺にゆだねてくれるね?」
「なにを?」
「ちょっとした準備」
そう言ってまた、ケインが綺麗に笑ったので、トニーはうっかり頷き、バスルームで反省はしなかったけれど──酷く後悔することとなった。
「夢だといってくれ……」
今、トニーは腰にタオルだけを巻いてベッドに横になり、ケインに背を向け、その大きな背中を丸めている。
「ケイン……俺はお前に抱かれるたびに事前にあんなことをしなくちゃならんのか?」
「すぐに慣れるよ、トニー」
バスローブに袖を通し、ドライヤーを出してきたケインは、そういってまだ濡れたトニーの髪にキスを落とし、トニーの腰を撫で上げた。
びくりと反応するトニーが可愛い。
「すぐにね」
ケインはコンセントに差し込むと優しくトニーの短い髪を乾かした。
ケインの指先が、トニーの耳に触れるたび、その肩がピクリと反応する。
「へえ、君、耳が弱いのかい? かわいいな」
ペロリと耳朶をなめ上げると、トニーが小さな声を上げた。
「ぅ……あっ」
その声に。
ケインの中で、何かがはじけた。
「トニー!」
ドライヤーを放り出して、ケインはトニーに覆い被さる。
「ん……んンッ……」
先ほどとは比べものにならない程の、はしたないキスをしてしまい、ケインはおそるおそるトニーの様子を伺った。
──大丈夫。
その蕩けきったトニーの顔に、嫌悪の色は見受けられない。
「トニー、いいね?」
ケインは確認し、トニーが頷くと、バスローブの腰帯をゆるりと解いた。
合わせた肌は熱く、ケインはまた、トニーにキスをねだる。
いやらしくうねる舌に翻弄され、トニーは息が上がった。
苦しげに息を詰めているトニーに気づき、ケインは唇をすべらせると、そのたくましい喉元を舐めあげる。
「ぁあ……」
トニーがまた声を上げた。
ケインはさらに我慢できなくなって、何度もトニーの喉元にキスを散らしながら、片手を彼のタオルの中へと滑り込ませる。
硬くなり始めた熱をきゅっと握り込めば、脈動するトニーの肉茎が質量を増した。
「さすがのサイズだね。トニー」
言って、メイスはトニーのソレを口にくわえる。
じゅるじゅると音を立ててしゃぶりつき溜息をついた。
「怖いくらいだ。こんなんじゃ女性は泣くだろう」
「残念ながら……未使用だ。皆おびえて逃げちまう……」
「それはそれは」
ケインは先端を口に含むと、手で根元から扱きあげる。
「ケイ……っ、も……」
射精感を訴えるトニーにはお構いなしに頭を振り、ケインはトニーを口の中で射精させた。
「ぁあっ……!」
満足げに精液を飲み干すケインに、トニーは困惑する。
「おい……」
「うれしいよ、トニー、俺の口はそんなに良かったのかい?」
「ずいぶんと……手慣れてるんだなケイン……」
一段下がった声のトーンに、ケインはハッとして顔を上げる。
「違うんだトニー、これはその……」
誤魔化そうとして、ケインは諦め、大きく息をつくと、白状せざるをえなかった。
「勉強したんだ」
「勉強?」
「君にOKを貰った日からずっと、君を抱くことが待ち遠しくて……ネットや本で、色々と。グッズも買い込んだ。こんな風に」
ガラリとベッドサイドのチェストを開ければ、そこには真新しいローションやスキン、小さめのバイブなどが転がっている。
「ケイン……それ全部使うつもりなのか?」
「君を傷つけたくなかったんだ。大切に抱きたくて……でも、それが逆に誤解になってしまって……俺は別に男漁りをする趣味もなければ、男とセックスしたことも、ない」
「ケイン。悪かった。許してくれ」
「君だけなんだ、トニー。俺こそごめん。大切なバディに、こんな感情や──劣情を抱いてしまって……」
トニーは答える代わりに、ケインをそのたくましい両腕で抱きしめた。
何よりの回答に、ケインは嬉しそうに囁く。
「……トニー。君に受け入れて貰って、俺も嬉しい」
再びのキス。
ケインはそろそろと手を伸ばして、バスルームで準備したトニーのアナルにそっと触れた。
中指を少しだけ挿し入れて、くにくにと様子を伺う。
「まだ少し固いかな、もう少しほぐそうかトニー」
「良いから、好きに……」
トニーは、不意に自分の手を取られ、ケインの熱を持ったペニスを握らされ……その大きさに絶句した。
「え?」
「俺もさ、ほどほどのサイズだろ?」
「え?」
「君ほどじゃないけど、大事な君の身体を傷つけたくないんだ」
「入るのか? それ?」
「俺はトニーに挿れたい」
くぷりと指を深く押し込められる。
「ケイン……」
「君に押し入って、突き立てて、ゆさぶって、君の中に容赦なく精液をそそぎこみたい……」
めまいがするような卑猥な言葉を相棒の口から聞いて、トニーは自分がおかしくなっていくのを感じた。
「指。増やすよ」
ケインはローションを手に取り、ヌルヌルになった中指に薬指を添えて、トニーのアナルを可愛がり始める。
「本ではこの辺りに……」
「ぁ……ケイッ……ン」
「うん。ここで良いみたいだ。トニー、君の良いところ見つけた」
きゅうきゅうと締め付けるトニーの中で、ケインは執拗にトニーの前立腺を責め上げる。
「どうだい? 気持ちいいかい?」
「ケイン……そこ……もっ……」
肌を波立たせ、枕の端を掴み耐えるトニーの姿に、ケインの忍耐は限界を迎えた。
「トニー、本当はこの小さめのバイブで君を慣らしてからと思っていたんだけど」
ふーふーと荒い息を吐きながら、ケインは怒張したペニスを握りしめると、ローションを垂らし、トニーのアナルにあてがった。
「ごめん」
ぐいと腰を押しつければ、ずぷりとトニーを貫く快感に、ケインは思わず声を漏す。
「ぁあっトニー……!」
「んぅっ」
「あ……ぁ……すごいよトニー……君の中、最高だ……」
ケインの腰は止まらない。
ぱちゅぱちゅと音を立ててトニーを突き上げる。
「トニー……トニー……」
うわごとのように繰り返し腰を振るケインに揺さぶられ、トニーは自我が溶けていくのを感じた。
「ケイン……」
「ここかな? ここだね? 君のいいところ……」
ケインは先ほど探り当てたトニーのいいところを容赦なくと突き上げる。
「んぁっ……そこは……んっ……んっ……」
ケインの律動に乗って、トニーの声が揺れた。
「ぁ……あ……トニー、俺もう……」
絶頂を感じたケインは、トニーに覆い被さると、くちづけを求めながら、激しく身を震わせ射精する。
無意識のうちに奥を求めて押しつけられたケインの腰に太ももを開かれ、無防備な姿をさらすことに羞恥心を覚えながら、同時に、それでもいいか、と、トニーは思った。
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