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第4話

また逃げてしまった。しかもケンを置き去りにして。 でもきっと、俺みたいな奴がケンと一緒だと迷惑になる。 ケンが友達に嫌われるのも嫌だし。それに俺が居なくても、あのまま友達と一緒に祭りを楽しんでるだろう。 「本当はもっと、二人で楽しみたかったんだけどな……」 誰もいない静かな部屋で、自分のみっともないすすり泣く声だけが、耳に嫌に響いてくる。 悪いのは、素直に言えない自分なのに。 「ケン……好きっ。好きだっ……」 ボロボロと溢れ出てくる涙を止めようと、枕に顔を伏せたまま、俺は何度も何度もケンの名前を呼んでは好きだと零した。 ケンも、俺の事まだ好きでいるだろうか。 飽きられてないだろうか。 俺の好きと、ケンの好きは、ちゃんと同じなんだろうか。 「うっ……クソッ。俺はこんなにアイツの事好きなのに……なんでこんなうまくいかねぇんだ……」 「ばーか。ちゃんと今でもうまくいってるつうの!」 「っ!けっ!うむっ!?///」 俺の後ろからケンの声が聞こえて、慌てて振り向いた瞬間。 熱い唇が、俺のと重なった。 最初何が起きているのか理解が追い付けなくて固まっていた俺だったが。キスされていると分かった瞬間、恥ずかしさのあまりケンを突き飛ばそうとしてしまった。 けれど、それでもケンは離そうとせず。俺の後頭部に手を置いて、自分の方へ強く引き寄せてくる。 「うっ///ふっ///」 息が苦しくなってきて口を開けると、待ってましたと言わんばかりにケンの舌がスルッと入り込んで。俺の中を掻きまわし始めた。 熱くて、ドロドロで、なんだかドンドン変な気分になってくる。 キスだけで、こんな気持ちになってしまうのか。 「あっ///は、はぁ……はぁ……お、まえ///急になにして」 「ん?コウが俺の事好き好き言ってて可愛かったから?」 「なっ!?///お前聞いてたのか!!つうか、どうやって家に入って来たんだよ!!」 「玄関鍵かかってなかったから?」 いや、それでも何か一言言えよ、怖いわ。 「っ……///つうか、お前ダチは良かったのかよ」 「うん?だって今日はコウとデートする日だったし」 「っ!///」 ケンは、ちゃんと今日という日を特別にしてくれてたのか。 それなのに俺はーー。 「悪かった……」 「え?」 「俺、お前が俺と居ることでダチに嫌われるんじゃないかと思って逃げたんだ。それにお前も、ダチと遊んでる方が楽しいだろうし」 「確かにアイツらと遊ぶのは好きだよ?でも、恋人と過ごす時間は特別だし。大事にしたい。俺はコウが好きだから。だからそんな余計な事考えるなよ」 ーー特別。 ーー大事。 ヤバい、そんな風に思ってくれていたって分かると。嬉しさと恥ずかしさで、どうしたらいいのか分からなくなる。 ドキドキが全身をビリビリさせて、変な気分だ。 「それに、コウは自分が思うほど怖い顔してないと思うけどなぁ~?アイツらも、別にコウの事怖がってないし」 「えっ、そうなのか?」 「寧ろ俺からすると、いつも顔真っ赤にして照れてるコウは可愛いと思うよ?」 「!!??///き、気色悪い事言ってんじゃねぇ!!///」 「ほら、そういうとこが可愛いんだって!」 「うぐっ///……一回、病院行った方がいいぞ……」 「大丈夫。俺はちゃんと正常だよ」 そう言って俺の髪を撫でるケンの目は、とても愛おしそうだった。 だからきっと、俺も言えたんだと思う。 「ねぇ、もう一回キスしていい?」 「……///聞くんじゃねぇよボケ」 「可愛いなぁ~~コウは」 「……///あのさ、ケン」 「ん?」 「好きっ……だからな」 「……俺も好きだよ。大好き」 窓の外から打ちあがる花火を見ながら、俺達はもう一度キスをして。お互いの気持ちを伝えあった。 きっとこれから、もっと素直に言えるようになるから。なんて、そんな恥ずかしい事も全部伝えて。 「まぁでも、正直俺もう待てないから。今日は一晩泊まらせてね?コウ?」 「……え!?///」 やっと好きだと言えたその日。 俺は一気に、目標からもっとその先へと進む事になってしまった。 「夏って、こえぇ」

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