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第3話

夏祭り当日。 待ち合わせは時間は午後の五時。そろそろケンも来る頃だ。 「臭く、ねぇよな?」 夕方と言っても蒸し暑い季節。それに今この場所は、大勢の人で賑わっている。 ここに来る前に風呂に入ってきたとはいえ、ムシムシした空気のせいで既に背中には汗がべっとりとくっついていた。 念のために、汗が目立たない様黒のТシャツにして正解だった。 「他に変なとこないよな?」 服を見直し、髪型もおかしくないか指で軽く触っていると。いつもの爽やか声が俺の名前を呼んで肩を叩いた。 「早いなコウ!もう来てたんだ!」 その嬉しそうな声に、俺はケンの顔を見る前からドクドクと鼓動を鳴らしてしまう。 というか、さっき俺が身だしなみ気にしてたとこ見られてないだろうか? 「どうしたコウ?もしかして待ち疲れたとか?」 「べ、別にそんなんじゃねぇ……ってか。お前……///」 「ん?」 ケンに余計な心配をさせてしまったと思い慌てて振り向くと。いつもと雰囲気が違うケンの姿に、思わず声が裏返ってしまった。 なんというか、いつも以上にかっこいい……。 俺が変に緊張してるから、とかじゃないよな? よく見たら髪とかワックスで固めてるし、それになんか香水みたいな香りもする。服装もいつも見るやつじゃない、見た目的に新品ぽそうだ。 ここまで気合入れてるのってもしかして、俺と祭りに行くから……なのか? ケンも、これをデートだと思ってくれているのか? そうだったら、なんか無茶苦茶嬉しいな。 「大丈夫か?キツイか?」 「へ!?///い、いや。別に……」 ってか、初っ端から緊張してんじゃねぇぞ俺。 今日こそは好きって言う。絶対に言ってみせる。 「お!お面売ってるぞ!一緒に買おうぜ!」 「あ、あぁ///」 まるで子供みたいにはしゃぐケンの後をゆっくり着いていきながら、俺は煩く鳴り続ける心臓の音を隠すように大きく息を吐いた。               *     *     * 「あぁ!また外れたぁ」 「下手くそ」 「いやいや、これむずいって!コウもやってみろよ」 「いや、俺はいい」 「えぇ~~!そんなこと言わずにやってみろってぇ」 射的だけで既に五百円も使い込んで何度も挑戦していたケンだが、コルクは一発も当たらず。挙句の果てに俺に縋り付いてくる始末。 どうやら、欲しかったゲームのカセットが景品にあるらしい。 寧ろ俺が取って、プレゼントしてやりたい。そしたらきっとケンも喜んでくれるだろうし、俺にもっと惚れてくれるかもしれない。 けれど、そんな気持ちがケンにバレたくないと思うと。素直に言えない。 「チッ!お前が欲しいもんなら、お前が取れや」 「えぇ~~。だって取れねぇんだもん!」 「知るか」 馬鹿か俺は。 どうして「俺が取ってやる」くらい言えない。 「ちぇっ。じゃあもういいや」 「え、ぁ」 言え。早く。 「俺が取ってやる」って、ここまで普通に楽しく屋台を見て回ってたんだ。台無しになんかしたくない。 「ケン!」 「ん?」 「あ、あれ。お、俺が……」 「なに?」 「俺が……とってや」 「おれぇ?健介じゃん?」 「おぉ!なんだ、お前らも来てたの?」 あ、また。 俺が邪魔者になってしまった。 「まぁな!夏休みと言えば夏祭りだろ?」 「男三人でか?」 「うるせぇ!高校卒業したらすぐに彼女くらい出来るわ!」 「いやぁ~お前らには無理だろぉ~」 「イケメンに言われると余計腹立つなぁ。つうか健介こそ、今日は彼女とデートって言ってなかったか?」 「おう、今まさにデート中だけど?」 「誰もいねぇじゃん?」 「あれ?コウ……?」

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