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2-B 秀才Sくん×2-B チャラいMくん

秀才Sくん |小田《おだ》 エイト チャラいMくん |高倉《たかくら》 カナタ ☆実は二人はおなしょー(同じ小学校)だったのです!   ✽.。.:*・゚ ✽.。.:*・゚ ✽.。.:*・゚ ✽.。.:*・゚ ✽.。.:*・゚ ✽.。.:*・゚ ✽.。.:*・゚  カナタは楽しいことしかしたくない。  部活はどれも興味をひかれないから入らない。  それよりも、放課後は友達と遊び回っている方が楽しい。  私立の男子校、金犀(きんせい)学園は寮も併設された学校である。  だが、寮生活を送っているのは全校生徒の半分ほど。  残り半分は、カナタのような通い組だ。    基本カナタは寮に入っている生徒とは親しくない。  放課後の予定が合わないから。  だから、アイツとも同じクラスだけど、ほとんど話したことはなかった。 「おおい、どういう事だ!?」  普段からヘラヘラしているカナタが、机を叩いて怒るしぐさに、周りの友達が驚いていた。 「なんでグループ研究の班が、小田とオレの二人だけなんだよ!」  ちょっと朝までゲームしていて寝坊したから、もういっそ学校をサボった昨日。  現代国語のグループ研究班が勝手に振り分けられてしまっていた。  それぞれ三人ほどで固まって班を作った結果、休んだカナタとあぶれたアイツが組まされたのは自然の摂理。  カナタの相手は、小田エイト。名前しか知らない。  頭は良いらしくてテストではいつも上位のようだ。  寮生だから交流もない。席だって離れている。  派手な見た目と行動で、クラスの中心にいるカナタ。  休み時間すらも勉強して、常に一人きりの小田エイト。  二人は完全に陽と陰のようだった。 「なんで誰もオレを入れといてくんなかったんだよお!」  カナタが憤慨に憤慨を重ね、悪友たちがちょっと引き始めた時、後ろで低い声がした。 「高倉」 「ああ!?」  怒りに任せて振り返ると、そこには小田エイトが立っていた。  背、でか! 眼鏡が威圧してくる!  目の前でぬぼっと立っているエイトに抱いたカナタの感想は、そんな感じだった。 「早速だが、今日の放課後時間はあるか」 「何の用だよ?」  苛立ちながら聞き返すカナタに向けて、エイトはさらに威圧するようにカナタを見下ろして言った。 「現国の件に決まっているだろう。お前が休んだせいで俺は話し合いが昨日全く出来なかった」 「そうかよ」 「俺達はクラスで一番進行が遅れている。放課後、それを取り戻すぞ」 「イヤだね、オレは放課後は忙し……あれ?」  ふと周りを見ると、カナタがいつも遊んでいるメンバーが誰一人として残っていなかった。  おそらくカナタの怒りと、エイトの威圧に逃げ出したのだろう。 「いつもの奴らは、今日はいないようだな」 「ぬぬぬ……」 「遊びに行くのはいつでも出来る。さっさとグループ課題を終わらせるぞ」  エイトの淡々とした物言いは、何故かカナタを押さえつけるような雰囲気だった。 「くそぉ……」  こうして、カナタは放課後エイトと共に図書室に向かう羽目になった。  ◇ ◇ ◇  放課後、問答無用で図書室に連れて来られたカナタは、エイトによって課題図書を読まされている。  戦前の文豪が書いた作品だったが、高校生でも読みやすいように編集されていた。  文章量も長くはなかったので、カナタはエイトに監督されながらも三十分程で読み終わった。 「読み終わったか?」  数学の問題集を解きながらエイトがそう確認したので、カナタは本を机に置いてふんぞり返った。 「……読んだよ」 「どうだった」  問題を解く手を止めずにエイトが尋ねる。試すような口調に腹が立ったが、カナタは思ったことを言った。 「訳アリ未亡人が学生に恋するなんて、いつの時代の昼ドラだよ。学生も、未亡人にまんまと欲情しててウケる」  わざとバカにしたように言ってやったが、思いの外エイトは怒っていなかった。 「うん、ちゃんと要旨を理解出来ているようだ。良かった」 「はあ!? お前は、何様だ?」  逆にバカにされたような気がして、カナタが声を上げると、図書室にいる全ての人間がカナタを振り向いて睨んだ。 「……」  その雰囲気に居た堪れないカナタは、罰が悪くなって黙る。  エイトは溜息を一つ吐いて、問題集をパタンと閉じてから言った。 「図書室はここまでだ、移動するぞ」 「どこに行くんだよ?」 「寮の、俺の部屋だ」  言われた瞬間、カナタはギクリと肩を震わせる。  何故か急に緊張してきていた。 「い、一般生って入ってもいいのかよ……?」  カナタの問いに、エイトは表情を崩さずに、相変わらず淡々と答える。 「入室許可は取ってある。問題ない」 「そうかよ……」  なんて首尾のいいヤツだ。昨日の今日で、こうなることまで想定してたって言うのか。  なんとなく有無を言わせないエイトの雰囲気に、カナタは大人しくついて行った。  ◇ ◇ ◇  初めて入った学生寮は、知らない匂いが立ち込めていて、カナタの緊張を更に煽る。  エイトの部屋は二階の角だった。二人部屋のはずだが、ネームプレートには「小田エイト」という文字しかなかった。 「お前、同室のヤツは?」  カナタが聞くと、エイトはドアノブを握りながら短く答える。 「今は空きだ」 「マジで!? え、寮で一人部屋なんて天国じゃね?」 「そうか?」  よくわからないと言ったような顔でエイトは首を傾げている。  だって、一人だったらオ◯ニー出来るじゃん! オレが絶対寮に入りたくない理由の一位!  そんなカナタの思考に気づくはずもないエイトは、扉を開けてカナタを促した。 「入れ」  カナタは部屋に入ってまず一回り見回した。  二人部屋なだけあって、結構広い。両端にベッド。その横にそれぞれの机とタンスが線対象に置かれている。  片方はフレームだけなので、エイトのベッドはすぐに分かった。  まるで店に並んでいるかのように、綺麗に整えられていて、人が寝る姿が想像出来なかった。 「適当に座れ」  部屋の中央には小さな丸テーブルが置いてあった。クッションなどはない。  カナタはそのままカーペットの上に胡座をかいた。エイトもその対面に腰を下ろす。 「早速だが、俺はお政はお糸なのではないかと思うんだ」 「は?」  カナタに読ませた本をいつの間にか借りていたエイトは、それをパラパラとめくりながらそんな事を言った。  言われたカナタは面食らう。「お政」は作品に出てくるからわかる。「お糸」とは誰だ。 「お糸って誰だよ」 「この作者が、これより前に書いた作品に出てくるヒロインの名前だ。やはり未亡人で幸薄い女性だった」 「ええ? 別の作品のキャラは関係ないだろ?」  何を言ってるんだ、こいつは。頭が良すぎるのも困る。  カナタが眉をひそめていると、エイトはそれを意にも介さず続けた。 「お糸もある書生に恋をするのだが、課題の作品と違って全く相手にされず、こっぴどく振られた上に自殺してしまう」 「げ。お前、よくそんなの読んだな」  ハッピーな結末のアニメやドラマが好きなカナタは、それを聞いただけで気分が悪くなった。  しかしカナタの様子を気遣うそぶりもなく、エイトは淡々と己の意見を述べた。 「お政も結局は学生とは結ばれない。だが、一応気持ちは互いに通じているし、ラストも自立した女性として描かれている」 「だから?」 「つまり、俺は作者がお糸を幸せに書いてやれなかった後悔を、お政で晴らしたのではないかと考える。それくらい、二つの作品は根幹が似ているんだ」 「へえ……」  ものすごいことを考えるなあと、カナタは思わず感心してしまった。  作者に対する深い洞察と、別の作品を持ち出せる知識の豊富さに、素直に凄いと思ってしまったのだ。 「そういう方向でいきたいのだが、いいだろうか」 「いいんじゃねえの、なんかすげえな」  カナタがそう言うと、エイトは少し照れて俯いた。  大きな背中が丸くなって、少し可愛いと思ってしまった。 「よし。じゃあ、原稿は俺が作るから、授業での発表はお前がやれ」 「マジで? いいの? オッケーオッケー!」  楽が出来そうで、カナタは二つ返事で喜んだ。なかなかわかってるな、こいつ、とも思った。  しかし、そんな楽観視したカナタを軽く睨んでエイトは付け足した。 「発表する前に、原稿をしっかり読んで理解した上でやれよ。リハーサルするからな」 「ええー? めんどくせえな」 「お前なら出来る」  ……ん?  今のセリフ、カナタは聞き覚えがあった。  何か、遠い記憶が呼び覚まされるような気がする。 「……」  少しだけ意識が飛んでいた。  カナタが気づくと、エイトは丸テーブルの上にノートを広げて、一心にペンを走らせていた。  取り残されて暇になってしまったカナタは、ふとエイトの机を覗き込んだ。  奥の方に写真立てがある。何故か、それがとても気になった。  夢中で書いているエイトに気づかれないように、カナタはそっと立ち上がって机の前に向かった。  写真立てを手にとる。小学生くらいの少年が二人、仲良さそうに笑って写っていた。  一人は当然エイトだろう。  そしてもう一人は……  オレ?  カナタはもう一度写真の少年を見た。  急に、記憶が波のように押し寄せた。 「はっちゃん!?」  思わずその名を呼ぶと、エイトが目を丸くしてこちらを向いた。  覚えている。その瞳。 「お前、転校してったはっちゃんだったのか!?」  カナタにとって、一番仲が良かったのは後にも先にもはっちゃんだけだ。  中学、高校に進んでも、軽く遊んで浅い付き合いの友達ばかり。だから、肝心な場面ではカナタはいつも一人ぼっち。 「思い出した! エイトでハチだから、はっちゃんだ! だよな?」  カナタはすっかり興奮していて、エイトが立ち上がって接近していたことに気付かなかった。 「遅い……」  大きな影が、カナタの顔にかかる。  エイトは少し苛立ったような表情でカナタを見つめていた。 「お前は、気付くのが遅すぎる……」  エイトの大きな手がカナタの頬に触れた。  その熱が伝わって、カナタの心臓は跳ね上がる。 「はっちゃん……?」 「俺は、いつもお前を見ていたのに」  そういえば、エイトはカナタがいつもつるんでいるメンバーを知っているようだった。  二年から同じクラスになったし、話したこともなかったのに。 「本当に、馬鹿なヤツだ……」  エイトが頬を撫でながら、カナタの唇を覆った。 「んう……ッ!」  呼吸をなぞるエイトの唇は、手よりも熱かった。  やば……  全部、溶けそう…… 「思い出したなら、もう容赦はしない」 「う、うえ……?」  眼鏡の奥の、懐かしい瞳に、カナタは一瞬で囚われた。 「覚悟しろよ、かな……」 「あ──」  カナタの視界は全てエイトで埋め尽くされて。  蕩けてひとつになりそうだった。   ✽.。.:*・゚ ✽.。.:*・゚ ✽.。.:*・゚ ✽.。.:*・゚ ✽.。.:*・゚ ✽.。.:*・゚ ✽.。.:*・゚ ☆ BONUS TRACK ☆ ✽.。.:*・゚ ✽.。.:*・゚ ✽.。.:*・゚ ✽.。.:*・゚ ✽.。.:*・゚ ✽.。.:*・゚ ✽.。.:*・゚  再会したはっちゃんの、キスがしつこ過ぎる。 「ん……ふ、んぅ……」  秀才ぼっちの小田エイトは、カナタの幼馴染のはっちゃんだった。  それがわかってからまだ十数分。  なのにカナタはすでに腰に力が入らない。  エイトが執拗にカナタの唇を舐め回すからだ。 「あっ……ふぁっ」  カナタは今、エイトの熱い舌で口内をめちゃくちゃに犯されている。  もう脳が溶けてしまったんじゃないか。エイトを感じるだけの体になってしまったかのようだ。 「んっ、ん……ぁ!」  吸いつけられて、舐められ絡められ、カナタは酸欠になってしまっていた。  目の奥が、チカチカする。 「はっちゃ……はっちゃ、ん……ぅ!」 「は……かな、かな……」  懐かしい呼び名で呼ばれると、あの日の事が鮮明に思い出される。  いつも一緒にいたはっちゃんと、今はこんなにいやらしい事をしているなんて。 「ちょ、タンマ、はっちゃん……!」  やっとのことでエイトを押し返す。カナタは荒くなってしまった息を整えることに全神経を使った。 「あ……かな、すまない……」  我に返ったエイトも、カナタの腰を支えながら呼吸を整えた。 「お前に触れたら、我慢していたものが急に……」 「もう、はっちゃぁん……」  カナタは体に力が入らないので、エイトの背に腕を回して抱きついた。  あの頃と同じ匂い、けれどあの頃より熱い体温に、カナタは心臓がドキドキしておかしくなりそうだった。 「かな……」  エイトもまた、カナタの体をぎゅっと抱きしめる。  それからその髪に擦り寄って呟いた。 「ずっと、好きだった……」  その言葉は、カナタの体の奥まで響いていった。  話したこともないのに、何故かエイトが気になっていたのは、こうなる事を予感していたからだろうか。 「はっちゃん……」 「かな?」  カナタは更にきつくエイトを抱きしめる。 「嬉しいなぁ……」 「かな……」  エイトは眼鏡を外して机に置いた。そして体を少し離してカナタを見つめる。 「好きだ……」 「──!」  眼鏡で隠されていたエイトの顔は、ものすごく格好良くて、カナタは下半身が疼く。 「あ、ふぁ……」  もう一度口付けが与えられた。  ゆっくりと、優しく。失われていた時間を取り戻すように。  力の入らない足を払われて、カナタの体は九十度回ってから倒れた。  エイトのベッドに体が沈んでいく。 「んっ、んっ……」  細かく口付けながら、エイトはカナタの股間を(まさぐ)った。  そこは、すでに熱くなってせり上がっていた。 「あ、あっ……! ダメ……」 「かな……欲しい、かなを、全部……」 「やっ、そんな、急過ぎるよぉ……」  身悶えしながらも、カナタの下半身はどんどん熱を帯びていく。 「……ふっ、かなは嘘つきだな。こんなになってるのに」  ズボンの上からでも、そこをぎゅっと握られると、カナタは快感に身を震わせた。 「はぁっ! ああっ……!」 「かな……そんなに可愛い声を出すな……」 「あ、ああっ……!?」  ごり、とカナタの股間にとても固いものが擦り付けられた。  同じように猛っている、エイト自身だった。 「あ、熱い……」  お互いに布越しなせいで、余計に刺激された二人は腰を揺らしてぐいぐいと擦り合う。 「あ、ああ……っ! 腰が、揺れちゃうよぉ……」 「馬鹿、かなっ。エロイこと言う、な……っ」  エイトもカナタの動きを受けて、猛っている自身を欲望のままにカナタの股間に押しつけ続けた。 「ふっ、あ……あっ、ああ……!」 「熱い……かな……っ」  ベッドが大きく軋む。二人の揺れの激しさに呼応するように。 「あっ! ああ……んっ! あぁ──」  体の中心が熱い。今にも爆発しそう。 「はっ、は……っ、かな、かな……っ!」  ただ擦り付けているだけなのに、動きが激しいせいで。  本当にセックスしているみたい…… 「あ──ッ! ああっ……ん!」 「うっ、かな……イく……ッ!」 「オレも、イッちゃう……!」    やっと、会えたんだよね…… 「ア──ッ!」  再会の熱を、二人一緒に吐き出した。 「……は、あぁ」 「かな……」 「はっちゃ……んぅ……」  取り戻した唇が、気持ち良くて死にそう。 「……どうしよ。パンツがぐっちょぐちょなんだけど」  エイトの腕の中で、カナタが青ざめていた。 「パンツなら、俺の貸すけど」  エイトがボソリと言うと、カナタは今度は赤くなる。 「そ、それは恥ずいっ!」 「恥ずかしくたって、いいだろ……」    これからのお前を、全部見せて  そんな事を囁かれて、カナタはまた濡らすのだった。 ✽.。.:*・゚ ✽.。.:*・゚ ✽.。.:*・゚ ✽.。.:*・゚ ✽.。.:*・゚ ✽.。.:*・゚ ✽.。.:*・゚

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