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第14話
「……わかりました。じゃあ、どうぞ上がってください」
「はーい」
男は子猫を「よしよし」と言いながら撫でて、そのままツイード柄の2人がけのソファにふわぁっと寝そべった。
「お兄さんさあ。こういうの、保護猫って言うんだよねー?」
男が子猫を胸に抱きながら。
「そうしたら、俺は保護人になるんかな?」
にこっと、初めて男が見せた笑み。二重がぱっちりの、涙袋がぷっくりきらきらしてる。ラメか?
いや、俺はお前を保護するとは一言も言っていないのだが……。
綾人の心の声は誰にも届かず部屋の床に落ちた。
「ごめん。お兄さん。今日、俺朝早くてさあ。ねむねむだから、寝るね」
すぴすぴ。
不審者の寝息と、子猫の寝息が何故かハモる。
この1時間の散歩の間に普段ありえないことが立て続けに起きたため、さすがの綾人も力が抜けた。
いいや、もう、よくわかんないけど、寝よう。
ベッドに突っ伏す。
今日から俺のナイトルーティーンが崩れました。
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