「灯織」 　そう名前を呼べば、きゅるるとした瞳と目が合う。俺のものを口に含んだままの灯織の顔、たまらない。 「かわいい」 「っ」 　純粋に心から出た言葉に、灯織が反応して俺のものをさらに深く咥え込む。今度は照れているのか目線も合わせず上下に首を動かし始めた。灯織の温かな口内が心地よくて、綾人の心には気持ちよさよりも安堵が訪れる。こんなふうに優しく舐めてくれる人に出会ったことがない。 　恥じらう姿の灯織を十分に楽しめたので、今度は形勢逆転。一生懸命俺のものに吸い付いて、ダイソンみたいに離れない灯織を引き剥がして、ベッドに深く沈める。 　期待と恥じらいに満ちた恍惚とした表情を浮かべ、夢見心地のように綾人を見上げる灯織。 　綾人はこの時のために準備していたゴムとローションをベッドのサイドデスクから取り出す。この2つさえも実際に見たことの無い様子の灯織は興味津々といったところだ。 「冷たいぞ」 「う、うん」 　ローションを手に取り、灯織の蕾になぞるように押し込んでいく。男とする時には、ここを使うと聞く。優しくしてあげたい気持ちが勝り、ゆっくりと指を差し込んでいたら、灯織から。 「ん。早く挿れて」 　なんて甘いセリフを、零して綾人をふにゃとしたとろけた顔で見るものだから綾人の手の動きが早まる。 「挿れるぞ」 「うん」 　だいぶ解れたところで、綾人の屹立を灯織の蕾に押し当てる。ゆっくりと、灯織の反応を見つつ自身のものを入れていく。 「……っあ。おっきい」 　奥まで入り込んだところで、灯織が両手で顔を隠しながら呟く。綾人は灯織に口付けをしながら、腰を動かし始めた。ゆっくりと、奥を穿つような腰の動きに灯織もたまらないらしく、甘い嬌声を上げている。 「灯織」 「あやと、……あやとお」 　正常位のまま、灯織が綾人の腰に足を巻き付けてきた。そのぶん2人の身体は密着する。息を荒らげる灯織の華奢な肩を抱き寄せて、綾人も声も洩らす。 「っイく……」 「うん。いいよ。いっぱい中で出して」 　こいつ、なんて言葉を知ってるんだ。ほんとに童貞か？ 　綾人は最後、最奥を穿って果てた。びく、びくんと腰が震える。その動きに合わせて吐精していた。 「あ、俺も……」 　灯織が自身のものを見つめながら、 「俺もイっちゃったよ……」 　2人して同時に果てたらしい。男同士が同時に果てることはなかなかないと聞いているから、綾人はかなり気分がいい。 　俺がイかせたんだ。灯織を。 　などという、遅れて沸いた餓鬼のような独占欲と達成感。 「綾人ので童貞卒業しちゃった」 「ちげぇよ。お前が卒業したのは処女のほう」 「あ、そっか」 　呆れて灯織にからかいをかけると、すぐに納得した様子で灯織が手をぽんと叩いた。 「俺、幸せだよ。綾人のこと大好き」 　2人の呼吸が落ち着いてから、灯織が綾人の腕に手を回す。そのままちゅ、と灯織から綾人にキスをしてきた。繋がれたことが余程嬉しかったのか、にゃんにゃんごろごろと喉を鳴らせて綾人の腕の中でリラックスしている。 「綾人も俺のこと好き？」 　灯織の問に、綾人は「当たり前だろ」なんてセリフがチラついたがすぐに替えて。 「好きだ」 　ぎゅ、と強く抱き締めた。離さない。絶対に。灯織はもう俺のものだ。 ーーーーー その日の夜は、いつもみたいに2人してベッドで眠った。綾人と灯織の間には、白いマンチカンのおもちが丸くなっている。 「おもちは縁結びの猫だね」 　灯織の言葉に返事をするように、おもちは「なー！」　と鳴く。 「いつもありがとう。おもち」 　綾人からの言葉も受けて。 　綾人と灯織が眠りにつく前におもちに、ちゅ、とキスをした。おもちのほっぺと、おててにちゅ。 　おもちは喉をごろごろさせて2人と眠る。 　保護猫1匹、保護人1人、飼い主1人。 　幸せは保護猫が運んできてくれた。 了