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順風満帆な日々

珍しく素直になれない僕の異変にさりげなく気づいた僕の旦那マフィの提案。 僕の元彼のアイドル、奏と僕の心や体をシェアする。 「日本は違うけど。パートナーが1人じゃなきゃいけないルールがない国だってあるんだよ」 まったくもって7年連れ添ったマフィなだけに全てお見通しだったらしい。 これはそんな僕の若気の至りを含んだお話。 ◇◇◇ 大学で英語は専攻はしていたけれど、大学卒業後、ワーホリでイタリアに行ったはいいが殆ど意味はなかった。 なんとかキャリーケースにボストンバッグとでシェアハウスを探し、イタリアンレストランのお店の面接を受ける日々。 数軒目の面接で日本語はさっぱりだったが英語は堪能だったマフィの面接でようやくマフィが店長を務めるイタリアンレストランのバイトにこぎ着けた。 当時はイタリア語を学ぶ為にバイトのない時間は現地のドラマやニュースで懸命にイタリア語を学んだ。 なにより周りから飛び交うのはイタリア語ばかり。 リスニングで次第にイタリア語を理解することも出来た。 バイト先のレストランに足繁く通ってくれた若干、年上のイタリア人の彼氏の影響も大きい。 当時、マフィには同じイタリア人のボーイフレンドがいた。 面倒ごとは御免だ。 マフィをイケメンだと認識してはいても僕はマフィへの恋愛感情は皆無だったし、デートに誘われた際も、手を出されかけた際も、 「マフィにはボーイフレンドがいるでしょう?」 さりげなく笑顔で断った。 ワーホリ中にイタリア人の彼氏とは喧嘩別れし、毎日、バイトに明け暮れた。 大学時代からイタリアンが好きで。 本場のイタリアンを卒業旅行のイタリアで食べ、感動を覚え、いつか日本で本場のイタリアンレストランを開きたい、それが当時の僕の夢だったし目標だった。 ワーホリが終わる直前、マフィから、 「またビザを取って戻って来るんだろう?」 笑顔で尋ねられたけど、僕はもう戻らないと言った。 すぐにでも日本に帰り、イタリアンレストランを日本で開きたかった。 従業員を交えた飲み会などはあったし、マフィと二人きりで映画を観に行くにせよ、上司と部下、どことなく体の関係は一切ない、友人のような存在。 マフィはボーイフレンドと別れ、僕にプロポーズをした。 当時、僕は24歳、マフィは26歳だった。 「類のいない人生は考えられない。これは僕の身勝手だ。類を幸せにしたいし、一緒に幸せになりたい」 受け取って欲しい、とリングケースを差し出された。 マフィは僕の夢を知っていた。 イタリアンが好きで日本で本場のイタリアンレストランを開きたい僕の本当に藪から棒で突拍子もない夢。 「類の夢は僕の夢だ」 純粋にマフィのその真っ直ぐな瞳、真っ直ぐな言葉が嬉しかった。 そうして、数年かかったけれど、マフィと僕とで、念願のイタリアンレストランをマフィと日本で共同経営するまでになった。 以前、勤めていたダイニングバーの従業員だった光と晶も代表の承認を得て、こちらに呼んだ。 僕とマフィは同性婚しているとはいえ、光と晶もゲイカップル。 元は光はダイニングバー時代の常連客だった。 初めて光が店を訪れた際を忘れもしない。 「お酒ください」 カウンターに座るなり光は唐突に張りのない声でそう告げ、思わず苦笑した。 見た目も小柄で細身、可愛らしくあどけない顔立ちは差し置き、明らかに未成年だろうな、と思いながら笑顔で接客をした。 当時、光はまだ18だった。 「お酒?なんのお酒?」 「...お酒ならなんでもいいです」 「酔えるならなんでも、て感じ?」 「はい...」 敢えてノンアルのショートカクテルを振る舞うと、浴びるように光が喉を鳴らし煽る。 「....酔ってきたみたいです」 ....アルコールは一滴も入れてはいないのだけど、と再び苦笑を堪えた。 次第に泣き上戸なのか光は泣き出した。 幸い、客が少なくはあったし、光の話しを聞くと、光は自身がゲイだとカミングアウトし、いつも付き合う相手には本命がいて浮気相手専門、という、なかなか不憫な話しだった。 僕もこっそり光にカミングアウトし、それから光はすっかり僕に懐き、しばしば店を訪れるようになった。 バイトが足りないことを零した矢先、 「俺、バイトしたいです!」 それから光とは店員と客、という関係から一変し、上司と部下、の仲になった。 光とさほど変わらない、小柄で細く可愛らしい顔立ちの晶を光が連れてきたのはそれからしばらく経った後。 ウケ同士の恋愛について光から相談を受けた。 僕はリバだけれど、二人の恋愛を後押しした。 たまに喧嘩はしつつも仲睦まじい二人を見ていると若いっていいなあ、とつくづく思う。 若く見られはするが僕はもう32だから。 そして、 「男女でも風俗があるくらいだから。浮気はOK。恋愛とセックスは別物。好きでなくてもセックスは出来る。スポーツのようなもの」 このマフィの考えはやっぱり日本人にはない気質だろうな。 まあ、結婚した後も長い間、たまにマフィが日本に来たり僕がイタリアに出向くことはあっても、日本とイタリアでの遠距離が長かったからこそだけど。

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