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元彼と推し、そして日常

光から晶がSTAR☆FIVEのファンだと聞き、思わず口を滑らせてしまった僕も悪い。 まさか、奏のファンとも思わなかったのも事実だけれど。 光がうっかり晶に奏が僕の大学の後輩だとバラしてしまったらしい。 元彼ということまでは話してはないらしいけれど...。 晶に確率の低い握手会かつサイン会について遠回しに強請られた。 「....参ったなあ」 4LDKの我が家のソファで頬杖をつき、スマホの画面をため息をつきながら眺めていた。どうしたの?とマフィに肩を抱かれ、詳細を話した。 現在、国民的アイドルの奏が元彼だということ。 ワーホリ前、一方的に別れを告げて僕はイタリアに行ったことなどを。 「....でもさ。僕がイタリアに行ったから奏は国民的アイドルになって成功して、僕もマフィに出会ったり、念願のイタリアンレストランを日本でマフィと開けたと思うんだよね」 イタリア語でマフィに打ち明けた。 僕とマフィの会話はイタリア語の時もあれば日本語の時もある。 うーん、としばらくマフィは唸り、何かを考えているようだった。 「その元彼に、一度、会ってみたら?類」 は!?と思わずスマホの画面からマフィを向いた。 「本気で言ってる!?」 「うん、本気だよ。それだけ類はモテるんだ、て僕にとっては自慢でもあるんだから」 思わず口を尖らせるとマフィが顔を寄せてきて唇を押し当てるだけのキス。 「...無理。握手会かつサイン会とかのチケットは...大学時代の知り合い通じて頼んでみるか...」 「類のことだから、シャンパンやワインをさりげなく強請って散財させるものだと思った」 クスクス、マフィが変わらず僕の肩を抱き笑う。 僕は自分を口説く目的の男性には確かにそうして、手のひらに転がしている。 但し、僕目当ての女の子や年下の男の子にはさすがにそんなことは出来なくて、ドリンクや軽いフードをサービスしたりするけれど...。 そうして。 久しぶりに連絡した共通の友人がいずれ店に来てくれ、晶の推しでもあり僕の元彼がいる、STAR☆FIVEの握手会かつサイン会のチケットを持ってきてくれる手筈になった。 僕のお店については奏には話さないで欲しいとも伝えた。 「もう、聞いてくださいよー、店長ー」 「どうした?光」 客がはけた時間、光から晶との赤裸々な性事情を打ち明けられ苦笑した。 そもそも、出会った頃は互いにウケだった二人だ。 未だ二人はタチについて勉強中らしいが、最近やたら晶がタチの際、尻を叩かれる、所謂、スパンキングされまくる、と聞かされた。 「それ、惚気なの?悩みなの?」 思わず吹き出しそうになる口元を抑える。 「や、悪くはないんですけど。腫れ上がっちゃいます。それに晶も好きかも、とタチの時にやってみたら蹴り上げられちゃうし」 「蹴り上げられる?」 つい目を見開いて、頷く光を見入る。 晶は元々、人見知りでおとなしい。 僕やマフィには今だ変わらず借りてきた猫状態だから想像がつかないからだ。 「あ!でも!」 「うん?」 「全身、くまなくマッサージしてあげたらめっちゃ気持ちいい、て喜んでくれて眠っちゃうんです!そんなとこ、やっぱり可愛いなあ、とも思います」 以前からやたら晶は光の腕や背中をバシバシ叩いてるなあ、とは思ってはいたが、蹴り上げられても光は平気な上にマッサージ... 確か、晶は料理が出来ないから毎食、光が作ってる、とも聞いたことがある。 「好きな人にとことん尽くすタイプだね、光」 キラキラした瞳で見上げてくる光にそう笑顔を向ける。 「そんなことないですよー」 光が照れくさそうに笑った。 そして、晶にも尋ねて知った真実。 「奏様は本当に素敵だな、と思うんです、目の保養というか...。でもすっごくわかりやすく光がジェラシーを感じてくれてるな、てわかるから...つい、意地悪しちゃうんですよね」 僕やマフィに対しては相変わらず、おとなしく寡黙な晶が、光には黙っていて欲しいと目線を合わさず俯いたまま、恥ずかしそうにぽつぽつと洩らした小さな本音は光には話さないでおこう。

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