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再会

果たしてどうしたものか....。 遅ればせながら店に行くと光が何やらグラサンをした長身の派手な男と揉めていた。 ちなみにまだ開店前だ。 「いきなり貸切なんて無理です!他のお客様もいらっしゃいますし、迷惑です!」 頬を膨らませ、小柄な光が両耳にピアス、金髪の髪にキャップを被り、黒のマスクをしたチャラそうな男を睨み上げて吠えている。 「ちょ、どうした?光」 「あ!店長!聞いてください!このお客さん、いきなり今から貸切にしろとか無茶言うんです!」 と、その時だった。 「類!」 僕を目に止め、チャラ男がグラサンを外した。 「....げ」 思わず、蛙みたいな一言が洩れた。 「もしかしてお前?」 「はい?」 奏が光を見下ろし、光に至っては怪訝な眼差しで眉根を寄せ、奏を変わらず睨んでいる。 どうやら光は相手が奏と気づいてないようだが、光がファンではないにせよ、唐突に芸能人が現れても、何処かで見た気がする、くらいにしか思わないかもしれない。 奏は多分、光を晶と勘違いしている。 こそ、と光の耳元で、 「晶は?」 と尋ねると、 「買い出し行ってます」 の一言に一旦、胸を撫で下ろす。 「あー、従業員に優しくしてくれるなら貸切は無理だけど、特別に個室には案内するけど」 本来はバースデーイベントやパーティなどに使用する予約制のカラオケもあるVIPルームだ。 「本気で言ってるんですか!?店長!」 今は苦笑いするしかない。 正直、一瞬、奏のインスタやその存在で店を繁盛させようとも目論んだりもしたが、奏がグラサンやマスクを外して話し出し、STAR☆FIVEのファンが気づいて大騒ぎになったらファンではない他のお客様の迷惑になりかねないし意味がない。 晶にはどう、説明するか悩むが... 「従業員に優しく」 を念押しし、VIPルームに案内させた。 途端、シャンパンが入ったかと思えば僕が呼ばれ、額を抑えた。 「あのさ、うち、ホストじゃないんだけど」 「久しぶりに会うんだし別にいいだろ。隣、座れよ、類。好きなもん、好きなだけ頼め」 「....どっちが従業員かわからないんだけど」 VIPルームのソファに並んで座り、そんなやり取りをしてる僕と奏を光はポカーンと眺めてる。 「あとでサインは書いてやるから、とりあえずシャンパン持ってきてよ。他、なにが飲みたい?類。なんなら店のシャンパンやワイン、全部空けてやるよ」 「や、それ、普通に他のお客さんに迷惑だから...」 サイン、の一言にようやく光は奏に気づいたらしい。 あ!と突拍子もない声を上げ、 「急いでドンペリ持ってきます!」 「....僕、仕事中だし、あんま飲めないんだけど。てか、店開いたことを言うな、て言ってたのに」 拗ねながらシャンパンのグラスを傾ける。 「日本に戻ってきたことも知らせなかった奴が」 「とっくに別れたはずだけど?何年前だっけ?」 気がつけば隣の奏に肩を抱かれていて、ため息が洩れる。 「あ!じゃ、俺、これで!」 気を遣ったのか光がVIPルームを後にした。 しばらくすると僕が頼んだ訳でもないのにテーブルには所狭しとシャンパンやワイン、アラカルトが並ぶ。 時折、奏は従業員にもシャンパンを勧めていたし、マフィも店に来たが、 「一度、会ってみたら?」 と言ったマフィだ。特に気にとめるでもない。 流石の僕も若干、酔いが回っていった。

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