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偏愛Ⅱ《ハルカside》4
季節は冬になり、緋禄が亡くなって1ヶ月半。
JEESは復活し、竜はバンド活動を再開して、学校にも通えるようになった。
基本的に俺は竜を学校へ送り、JEESの活動が無い場合は夕方に迎えに行く。
そんな生活が続いた。
「ハルカちゃーん、いらっしゃい」
「マサくん」
さすがに軽い私服だとしても、MAR RE TORREのベーシストが学校に行くと目立つので、いつも職員室で待機させてもらってる。
そうするといつもマサくんがコーヒーを淹れてくれて、俺と雑談をする。
「推しとの同棲生活どう?もうすぐ2ヶ月経つよね?」
「んー、そりゃ最高だよ」
「もうエッチした?」
「―…っ!!」
その言葉に俺は飲もうとしていたコーヒーが変なところに入ってしまって噎せた。
その姿に爆笑するマサくん。
「…してないよ」
そりゃ俺だって、めーーーちゃくちゃしてぇよ!
毎日メトロノームの代役をやって、俺の下半身生殺し状態だっつの。
「へぇ。1ヶ月以上一緒に暮らしてて手ぇ出してないんだ。紳士だなぁハルカちゃん」
紳士ってかさぁ…
そりゃ俺だってヤリたいけど―…
「まぁ色々あんのよ、こっちにも」
竜にとってセックスは父親に無理矢理されてたことを思い出させる、苦痛の行為でしかないから。
それを塗り替えるために時間をかけて大切にしたい。
欲望のまま俺から襲うなんてことはできない。
だから毎日のメトロノームのあと、竜を襲いたくなるから俺はソファーで寝る。
毎日毎日、自分の欲求との勝負。
「ハルカさん…どうしてソファーで寝るんですか?」
「んー?隣に好きなやつ寝てたら襲っちまうだろ」
でも俺も健全な男だ。
半犯ししたときのことを思い出すだけでヌケる。
本当はこれを竜のナカにぶちこめたら最高なんだよなぁと思いながら、メトロノームで竜を寝かせたあとに自分で処理をする。
そんな日常を繰り返した。
「あ、ハルカちゃん!いらっしゃーい」
「よっ。マサくん」
「おめでとー!はい、これプレゼント」
「あー、ありがとう。これ欲しかったんだよね」
今日12月4日は俺の誕生日。
毎年マサくんと兄貴はプレゼントをくれる。
「こっちは哀沢くんから」
「いつもの酒ね」
兄貴がいつもくれる酒は『アスティ』だったりする。
応援してるという意味が込められていると勝手に都合よく解釈。
「あ、あと特別にこれも」
そしてマサくんがもう1つ紙袋を俺に渡す。
俺はその紙袋を覗き込むと、可愛くリボンで縛られたローションとコンドームが見えた。
「っ!!マサくんっ、これはやめて!我慢できないから!」
「えー。だって、いざエッチしたくなったとき無いと困るよ~?」
「いや、これがある方が我慢出来ねんだけど…」
こんなもんあったら、余計に竜とヤリたくなるっつの。
マサくんはニヤニヤしやながら肘で俺の体を突っつく。
「でもハルカちゃんももう22歳かぁ。早いねぇ。出会った時は10歳であんなに小さかったのに」
手で身長を測っている途中で、竜が職員室に来た。
「ハルカさん、お待たせ」
「あ、竜終わった?」
「じゃねハルカちゃん。今日がいい誕生日になりますよーに」
マサくんは再びニヤニヤしながら人差し指で可愛い紙袋をツンツン触った。
「そーデスネ!なるといーデスネ!帰るぞ、竜」
駐車場まで歩くまでの間、先程の会話と渡されたプレゼントの紙袋を見て竜が問いかける。
「ハルカさん、今日誕生日…なんですか?」
「あぁ」
「ごめんなさい俺知らなくて…ケーキ買って帰りましょう」
業界の中でも甘党として知られている俺は、今日現場であり得ないぐらいのケーキを食った。
もう食えない、しかしケーキを残すなんて…という葛藤で、結局出されたケーキを完食した。
やば…それ思い出すだけでも吐きそう。
「いや…今日どこの現場でもケーキ食わされたからいいわ。夕飯はちょっとお高めのデリバリーしようぜ」
そして俺は駐車場でデリバリーサイトから高そうな肉を注文し、車で家へ直帰した。
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