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偏愛Ⅱ《竜side》7
ハルカさんは俺を四つん這いにし、後ろから指を挿入をしようとする。
俺は四つん這いにされた時点で、ハルカさんの顔が見えない瞬間、父との地獄を思い出した。
「…止めて、………父…さん…」
怖い。
怖い。
またあの地獄が続くんじゃないかという錯覚に陥る。
何度もイって、イカせて。
回数を数えて記憶して。
満足する顔を見せて。
時計を見ているのがバレると「集中出来ていない罰」として激しくされるから、隙をついて時計を見て終わる時間を予測して。
何時間も何時間も、
耐えて耐えて、
耐え続けて、
ようやく終わる地獄―…
―…怖い
押し倒され、俺は震えながら目をぎゅっと瞑って顔を反らした。
震えたらもっと酷くされるのに。
目を背けたらもっと時間が延びるのに。
「竜…目ぇ開けて」
嫌だ。
怖い。
「竜」
この目を開けたらまたあの地獄が始まるの―…?
「大丈夫、俺だよ竜」
そう耳元で囁かれて響いた声は、父では無い優しい声だった。
俺は恐る恐る目を開けた。
「ハル…カさん…」
あぁそうだ。
ハルカさんだ。
俺、ハルカさんと途中まで…
「竜…今日は止めよう」
止めちゃダメだ。
だって今日はハルカさんの誕生日。
「大丈夫です…最後まで…」
「俺ならもう満足だから」
こんなに中途半端で、満足なんてするわけない。
お世話になりすぎてるんだから最後まで役割を果たさないと…
「大丈夫ですから…して」
大丈夫だって言うのに体の震えは止まらなくて、呼吸も整わなくて今にも泣きそうな俺をハルカさんはどう思ってるんだろう。
俺は必死にハルカさんの手を握った。
「なぁ気付いてるか竜?俺も実はめっちゃ緊張してんの」
ハルカさんは震える俺の片手を掴み、その手をハルカさんの心臓に移動させた。
「鼓動やばいだろ。プレスティッシモぐらいの速さあると思う」
ハルカさん自分の鼓動の速さをメトロノームの速度で例えた。
いつも子守唄にしている心臓の音。
普段と鼓動は変わらないはずなのに、いつもより鼓動が速い錯覚に陥る。
それは照れながらも優しい顔をしているハルカさんが目の前にいるから。
ハルカさんのその言葉で俺の心も呼吸も落ち着いた。
「好きなやつ抱くのって何気に初めてだなって思ったら、俺の方が震えそうだよ。ダサいだろ?」
この人は父とは違う。
欲望のまま無理矢理しない。
信頼出来る。
「…可愛いです」
「お前が言うなよ」
そのハルカさんの優しい笑顔と声で、俺は体を差し出すのではなく、捧げたいと初めて思った。
「もう本当に大丈夫だから…ハルカさん…きて」
俺がそう言うと、ハルカさんは山田先生からもらったコンドームの箱を開け、個装されているコンドームを取り出した。
「生でも大丈夫ですよ?」
「こら。そんなこと二度と言うな。大切にしたいんだよお前のこと」
父はコンドームなんて装着したことないのに。
中に出した量で愛を計るって言ってたのに。
セックスって…そういうものじゃないの?
正解が分からない。
そしてコンドームを装着したハルカさんは、既に準備が出来ている俺の秘部に自分のモノを押し当てた。
「無理するなよ?」
俺が頷いたことを確認すると、ハルカさんはゆっくりと挿入した。
「あっ…」
初めて父以外が俺を支配した。
でも嫌じゃない。
もっとして欲しい。
―…こんな感情は初めてだ
ハルカさんはキスをしながら腰を揺らした。
俺は何度もそのキスに応えた。
ヘッドホンから漏れる音楽以上に、繋がっている秘部からイヤらしい音がヌチュヌチュと部屋に響く。
「深…いっ―…ん―…ハル、カさ…あっ、アッ!ん―…はぁ、んんっ、アッ」
「―…は、イキそ…」
「速いっ、奥っ―…あっ…ハルカさ、んっ!―…俺も、イ、…クッ、アァッ!ん―…イクッ!!」
俺がイッたとほぼ同時にハルカさんも竜の果て、コンドームに全ての精液を出しきってから自身を抜いて俺の顔を見た。
「好きだよ、竜」
その言葉とその笑顔は優しく、温かく、俺を満たすものだった。
なんなんだろうこの感情。
―…嬉しくて泣きそうだ
『ハルカさんは父とは違う』
『ハルカさんとならもっとしたい』
俺の中で少しだけ、ハルカさんの存在が大きくなった。
「ハルカさん、もうソファーで寝るのやめて一緒にベッドで寝ませんか?」
「…襲うぞ?」
「性欲を満たすためならいくらでも。俺の体を捧げても足りないぐらいお世話になってるんで」
「―…」
俺はそう言って、いつものようにハルカさんをメトロノームにして寝た。
夢の中では、ひー兄が満足そうに笑っていた。
俺は泣きながらも笑っていた。
そして翌日、俺とハルカさんは平日なのにアラームをセットし忘れて昼過ぎまで爆睡していた。
「やべ―…学校から鬼電きてる」
「俺もです」
俺が何の報告も無く登校してこないので、学校からの着信が大量に入っていた。
「えっ!?」
ハルカさんはスマホを見て驚き、絶望した顔でゆっくりと俺を見た。
「兄貴がうちに向かってるって…」
ハルカさんはため息をついて「ぶっ飛ばされる…」と再び絶望した顔で呟き、俺はそれを見て笑いながらコーヒーを淹れた。
そして数分後、インターホンが鳴りハルカさんが恐る恐るドアを開けると哀沢先生は玄関で怒り始めた。
「おいテメェ、生きてやがったのかよ。俺の貴重な昼休み潰してんの分かってんのか?」
「はい。申し訳ございません」
「帝真を預かる条件はきちんと学校に報告することだったよな?忘れたのか低脳。小さい脳ミソにそれぐらい詰め込んどけ」
「はい。低脳です。すみません。詰め込みます。もう二度としません」
哀沢先生に酷く叱られ小さくなってるハルカさんがとても可愛くて、俺は久しぶりにこんなに笑った。
ハルカさんの22歳の誕生日。
俺とハルカさんが初めてセックスをしたその日は、俺が初めて満たされた日になった。
【to be continued】
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