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偏愛Ⅳ≪ハルカside≫4

空港でスマホを貰うと、竜からの連絡は無かった。    むしろ兄貴と真理奈から竜が寮に戻っていると連絡が入っていた。 俺と暮らすのさえ嫌になったのかよ―… 帰国してマンションに戻ると、やはり竜はいなかった。 「しかもタバコの吸い殻、捨ててねぇんだ」 自分のは自分で捨てろってか。 まぁ、そりゃそうだ。 俺のものなんてもう触りたくもねぇんだな。 明日テレビの収録にJEES来るし、その時きちんと謝ろう。 そしてゲリラライブに来て貰おう。 ―翌日 収録が終わると、御崎が楽屋に入ってきた。 「御崎、長期間ありがとな」 「いや。楽しかったかロス?」 「あぁ。成長したよ色々と」 「ケンカしたんだって?」 「そ。前に欲しがってた時計渡して謝ろうかなって」 帰国ギリギリで駆け込んで買った高級時計をちらりと御崎に見せる。 「そりゃ、許すしかないだろな。一緒に着いてってやるよ」 そう言われて竜のいる楽屋に向かった。 あー、やべ…緊張する。 御崎が先に入り、竜と会話をする。 他のJEESのメンバーは帰宅している様子で竜1人だけのようで、御崎に手招きされて部屋に入った。 「ハルカさん…」 「ハルカがロスに行ってたから、お前に土産があるんだってさ」 「元気だったか?」 プロポーズでもするんじゃないかってほどの緊張感。 「…」 久し振りに見た俺の天使の表情は無だった。 俺の質問に対して笑顔はひとつもない。 「LAで腕時計買ったんだ。お前、時計欲しいって言ってたろ?ほら。調節してやるから腕出せ」 そういって俺は竜に時計を差し、左腕を掴んだ。 即座に竜は俺の手を払いのけた。 「触らないでっ」 「竜?」 そして竜は、俺が買った腕時計を手に取る。 「これ渡せば俺が許すと思ったんですか?こんなのいりません」 そして腕時計を床に投げつけた。 「俺がひー兄のためだけに生きてたの知ってたのに、あんな言い方あります?」 竜の行動に驚く間もなく、冷静に怒りを見せながら竜は続けた。 「っていうか俺、断れなかっただけなんで。俺のとこ来るか?って言われて…俺のこと好きって言ってたし、色々相談に乗ってもらったから暮らしてただけで」 竜は淡々と俺との生活を否定し始めた。 「正直ハルカさんと一緒に暮らすの、結構きつかったです。家事なんてできないのに教えてくるし。料理もしたことないのに一緒にやろうって言ってくるし」 お前がキッチンに来て、俺が料理してる姿を凄いと言うからその流れで米の炊き方教えて。 自分で炊いた米に感動してて、俺はそれが可愛くて嬉しくて、簡単なことは教えていった。 「洗濯物畳むのも、そんな時間あるなら自分のことに時間使いたかったし」 あぁ、迷惑だったのか。 俺が竜に教えてきたこと全部。 「でも、ハルカさんに抱かれるのが一番きつかったです。まぁ、家賃みたいなもので義務だと思ってたんで。苦痛でしたよ、毎回。満たされたこと1回も無いですもん」 正直、一番キツイ言葉だった。 どんなことを言われても謝り倒して、自分が悪かったというつもりだった。 兄貴の冷血ドSな発言に慣れてる俺だから、何でも耐えられると思ってた。 義務…か。 キツイ通り越してもう笑いそうになるわ。 「だからそんな人からこんな時計もらっても迷惑です」 床に落ちた時計を足で踏みつけて、俺の目を見てそんな顔で言われたらさ。 「もう顔も見たくないです。ハルカさんのこと本当に嫌いなんで」 何も反論できねぇよ。 「―…そうか。気付かなくて今まで悪かったな」 俺はそう言って、楽屋から出ていった。   慌てて御崎が追いかけてくる。 「ハルカ、大丈夫か?竜、相当怒ってるな…」 ゲリラライブに来てもらうはずだったのに、あれじゃダメだ。 俺との生活は、竜にとってプラスになっていなかったんだ。 こんな想いするなら同棲なんてしないで片思いのまま、今までの距離でお前と話せるほうがよかったよ。 気付かなくてごめんな。 お前の心を癒せなくてごめんな。 俺は竜に無駄な時間を過ごさせたことを後悔しながら、もう吸わないと決めたはずの煙草に火をつけた。 【to be continued】

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