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偏愛Ⅳ≪竜side≫2

「竜!」 学校の校門を出ると、事務所の先輩の御崎さんが迎えにきてくれた。 ハルカさんがロスにいる間は、御崎さんに送り迎えを頼んでいたらしい。 「今日もありがとうございます」 「そういや親父がブラジルに旅行行って紅茶くれたんだよ。結構いいやつだから、一緒に飲もうぜ」 「え、社長が?いいんですか。飲みたいです」   御崎さんの父親は、俺の音楽事務所の社長でこの二人がいなければ俺は今JEESとして活動していない。 ひー兄の次に信頼している人。 俺は御崎さんの高級車に乗り、ハルカさんのマンションに向かった。 ハルカさんのいない、ハルカさんのマンション。 「紅茶入れますね」 「悪いな。っていうか、まだタバコ捨ててねぇの?」 御崎さんが笑う。 ハルカさんが家を出ていってからすぐ、ハルカさんが吸ったであろうタバコの吸い殻が灰皿に捨ててあった。 帰ってきたことが嬉しかった。 俺が学校の間、この空間にハルカさんがいたことが。 ハルカさんの唇がここに触れてたのか。 タバコにさえ嫉妬してる。 何かヤバいファンみたい。 そんなタバコの吸い殻でさえ、約1ヶ月捨てられずにいる。 「俺は紅茶に砂糖も欲しいな」 「すいません。持ってきます。ハルカさん甘党だからめちゃくちゃ砂糖こだわってて美味しいみたいですよ」 運んだ紅茶をテーブルに置き、キッチンへ砂糖を取りに行った。 そうだ、御崎さんも甘党だったんだ。 「ハルカ、そろそろ帰ってくるらしい。てか、お前らなんかあったの?」 痛い質問をしてくる御崎さん。 御崎さんには何でも相談出来る。   ひー兄の件でも、たくさん相談に乗ってもらった。 信頼出来る人。 「ハルカさんとケンカしちゃって…」 「ハルカと?」 「傷つけたんです。嫌いって言って。俺が子供だから。どうしたら許してくれるのか分からなくて」 俺が子供だから、自分の感情そのままハルカさんにぶつけて、 傷つけて、 悔しくて、 素直になれなくて、 「ハルカさんがいなくなって…俺、ハルカさんが大切だって思うようになったんです」 都合がいいって分かってる。 でもハルカさんだけは失いたくないんだ。 「大丈夫だよ。ハルカならきっと許してくれる。お前は本当はハルカを嫌いじゃなくて好きなんだろ?」 「はい」 「―…だったら大丈夫だって。自信持て」 御崎さんはいつもの笑顔で俺の頭を撫でた。 その優しさで、涙が出そうだった。 素直になろう。 ハルカさんに会ったら、素直に。 もう自分に制御はかけない。 「あ。車に携帯置いてきたかも。ちょっと見てくるわ」 「はい」 そういって御崎さんは部屋を出て車へと向かった。 気付けばもう夜で、あと3時間もすれば日付が変わる時間になっていた。 明日は学校も仕事も休みだから、少しゆっくりしようかな。 ハルカさんに謝る言葉とか、ちゃんと考えておかないと。 その瞬間、部屋の電気が消えた。 「停電…?」 立ち上がって懐中電灯を探そうとしたとき、人影が見えた。 「御崎さん?すいません。なんか、停電したみたいで…」 違う。 御崎さんじゃない。 2人…? 「誰…!?」 「本物の帝真竜の声だぁ」 「たまんね」 男2人の声。 腕を掴まれて床に押さえ付けられた。 「痛っ…、なにっ…」 その時、電気がついた。 「おいおい。もっと手加減しろって」 聞き覚えのある声。 玄関の方から歩いてきたのは御崎さんだった。 「御崎さん…!?」 「関、あんまり強く押さえ付けるなよ。傷つくだろ。うちの商品なんだから」 俺を押さえ付けている人物に、御崎さんが見下ろしながら言った。 「悪ぃ、御崎。生の帝真竜だから興奮してさ」 「…御崎さん、どういうこと!?」 俺の問いかけに不敵な笑みを浮かべる御崎さん。 「そこにいる俺の知り合いの関と萩谷はお前のファンなんだって。だから仲良くしてやって」 「仲良くって…」 「俺は、お前達の仲良しぶりをビデオに撮るから」 やだ。 嫌な予感がする。 「いやっ、だ…!」 俺は自分の力を全て出し切ったけど、2人の男に押さえ付けられたらさすがに敵わない。 「御崎さ…、どうしてっ」 「ハルカともヤッてんだろ?それ話したらこいつらお前とヤリたいってさ」 萩谷という男が俺の耳を舐め、関という男が俺の服を脱がし始める。 「やだ!止めて!冗談ですよね!?」 焦る俺の声が裏返る。 耳元から聞こえる萩谷の吐息が気持ち悪い。 「冗談なもんか。楽しめよお前ら。この部屋は完全防音だからいくら騒いでも大丈夫だから」 「マジか。御崎と知り合いで良かった」 ビデオを回しながら御崎さんが近づいてくる。 ー…どうして 「この紅茶、実はブラジル産の超強力な精力茶らしい。竜が砂糖を取りに行ってる間にお前の紅茶に別の強力な媚薬と軽く催眠剤も入れといたから、そろそろ効きだすと思うぜ」 「や、ぁ…」 俺の体は火照り、疼く中、もう逃げられないと実感した。

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