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第16話 兄と弟2

 2ー2 夏草  最初、目が暗さに慣れなくてよく見えなかったが、じょじょに僕の目は、ピントがあってきて。  そこには。  肌をはだけたアーキライトと魔族の青年が立っていて。  アーキライトにその魔族の青年は、口づけながら笑っていた。  「お前が寂しがってると思ってきてやったんだぞ、アーク」  その魔族の青年は、確か、最近、魔王国からやってきた連中の1人だった。仕事はできるが、町の酒場で女たちに声をかけたりして、嫌われているという噂だった。  魔族の青年にべたべた体を撫で回されてもアーキライトは、拒もうとはしない。それどころか愛撫を喜んでいる素振りすら見せている。  僕は、なんだか腹がたっていた。  アーキライトに、だ。  そんな奴にいいようにされてるなんて!  さっさとそんな奴、ぶん殴って立ち去ってくれればいいのに。  僕は、そう思っていたが、アーキライトは、その魔族の口づけを受け入れて喉を鳴らしている。  「かわいい奴だ」  魔族の青年は、作業所の床にアーキライトを押し倒すとアーキライトの裸の胸元に口づけを落とす。  「ここも・・1人で寂しくて自分で弄ってたのか?アーク」  ちゅっと音をたてて魔族の青年がアーキライトの胸の頂に吸い付くとアーキライトが眉をよせて呻き声を漏らした。  僕は。  その男にされるがままになっているアーキライトに腹がたって。  痛いぐらい拳を握りしめたまま、その光景を眺めていた。  ふと、目線を上げたアーキライトと僕は、目があって息を飲んだ。  アーキライトは。  僕と目が会うとにぃっと赤い唇を歪めた。  僕は、見えない手に打たれたようにその場から走り去った。  僕は、農場の裏に広がる牧草地を走った。  背の高い夏草の中を息をきらせて走り続ける。  僕の頭の中に、アーキライトの妖艶な笑みがよぎっていく。  不意に草に足をとられて僕は、倒れ込んだ。  僕は、草むらに寝転んで空を見ていた。  辺りは静かで。  僕の息苦しそうな呼吸音だけが聞こえていた。  アーキライトが誰といちゃついてようと僕には、関係ない。  アーキライトは、もう、とっくに大人だったし。  恋人がいない方がおかしいのかも。  だけど。  僕は、なんだか悔しくて。  もしも。  僕がもっと大人なら。  そう思って、僕は、唇を噛んだ。  

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