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第15話 兄と弟
2ー1 成人の祝い
母さんが再婚して3年。
僕は、15歳になった。
僕が暮らしているエウロキア王国では、一人前の大人として認められる年だ。
母さんと魔王のおっさんは、僕のために成人の祝いのパーティーを開いてくれた。
町の人たちも招いて農場の庭で行われたパーティーで僕は、町の女の子たちに囲まれた。
彼女らは、僕にそれぞれからの祝いの品をプレゼントしてくれた。
僕は、ちょっと有頂天になっていた。
だって、女の子から贈り物を貰うなんて前世では、ないことだったからね。
今生でも、僕は、母さんとの暮らしを守るために必死に働いてたし。
女の子たちは、僕に微笑みかけると、口々に僕が誰と婚約するのかを聞き出そうとしていた。
なんでも成人の祝いのときにだいたいは、将来の結婚相手を決めるものなのらしい。
僕は、そんなこと考えたこともなくて。
女の子たちの猛攻にあって僕は、すっかりびびってしまって1人、牛(カーブ)小屋の裏に逃げ出していた。
僕は、牛(カーブ)小屋の壁にもたれてため息をつくと空を見上げた。
空は、すっかり夏の空で。
僕は、そろそろ1回目の牧草刈りをしなくては、と思っていた。
といってもそんな大事なわけではない。
僕のチート能力を使えば楽々すませられることだった。
僕の『異世界錬金』で作り出せるのは物質だけではなく、魔法物質も作り出せるのだ。
それで、僕は、巨大な大鎌を魔法で作り出しそれで一瞬のうちに広い牧草地の牧草を刈り取ることができる。
後は、しばらくお日様に干して乾いたら空間収納にしまうだけ。
前世での農業や畜産に比べるとこの世界でのそれは、すごく楽だった。
僕がぼんやりと空を見ていると牛(カーブ)小屋の隣の建物からがたん、と大きな音がした。
なんだ?
その建物は、生乳を加工するための作業所だった。
そこで僕は、牛乳のパック詰めやら、バター、チーズの生産を行っていた。
もちろん働いているのはゴーレムたち、それに魔王国からきた魔族の人々だった。
僕は、農場の側の荒れ地を開拓して農場を拡げて、そこに魔族たちの住居も作っていた。
今日は、僕のお祝いだから作業所は、お休みで誰もこの建物にはいない筈なのに。
僕は、そっと入り口から建物の中を覗き込んだ。
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