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第43話 離れて眠る夜

 4ー1 故郷  僕は、卒業後、一度、故郷の町へと戻っていた。  「はぁっ・・」  エリザベスちゃんの背を撫でながら僕は、ため息をつく。  「どうされましたの?ルルシアお兄様」  僕の背後から明るい声が聞こえて振り向くと僕と同じ土色のつなぎを着たレイラスが水の入った桶を持って立っていた。  「レイラス」  僕は、彼女が持っている桶に手を伸ばすが、レイラスは、僕に桶を渡すことはなかった。  レイラスは、エリザベスちゃんの前の水桶に手にぶら下げた桶の水を移すとエリザベスちゃんの頭をそっと撫でた。  「エリザベス、冷たい泉の水を汲んできてあげたわよ」  エリザベスちゃんは、もう、と嬉しげに声をあげるとそのきれいな水を飲み始めた。  僕は、ふっと笑った。  「エリザベスのこと、あまり甘やかさないでくれよ、レイラス。この子は、頭がいいからあまり甘やかすとつけあがっちゃうから」  「あら。それなら、アーキライト様に言うべきですわ。アーキライト様は、エリザベスのために特別にいい匂いがする薬草を森で採集してきて与えておられますのよ?」  「アーキライトが?」  僕は、再度ため息をついた。  僕の王立学院の卒業パーティーの夜以来、アーキライトは、僕から引き離されていた。  それは、魔王のおっさんの仕業で。  「お前たち、しばらく2人っきりで会ったりすることは許さん!」  おっさんは、僕とアーキライトにそう言い渡した。  そして、おっさんの命令で僕は、故郷の町に戻されたのだが、レイラスまでついてきてしまった。  「私、カーブの世話をしとうございます」  そういって一緒に来てしまったレイラスは、僕の服を身に付け、僕と一緒に牛(カーブ)の世話をして過ごしている。  毎日、今までの生活からは考えられないだろうきつい労働を文句も言わずにこなすレイラスに魔王のおっさんももう帰れとは言わなくなった。  「あんたが、ほんとにアーキライトの嫁になってくれたらなぁ」  魔王のおっさんは、そうぼやくが、その度にレイラスは、笑顔で応じた。  「アーキライト様のお嫁様は、ルルシア様ではございませんこと?お似合いの2人を引き離すことなんてできませんわ!」      

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