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第42話 成り変わりの婚約者14

 3ー14 色  「その小僧のいう通りだ!」  突然、ばん、と部屋の扉が開いて魔王のおっさんが現れた。  僕は、いたづらを見つけられた子供もように飛び起きて身構えた。  アーキライトは、いつもと同じ無表情な顔で魔王のおっさんを見ていた。  「勝手に人の寝屋に入ってくるとは。失礼にもほどがありますね」  「何が失礼にも、だ!」  魔王のおっさんが唾を飛ばして怒り狂った。  「お前という奴は!よりにもよって義理の弟に手をだすとは!」  「安心してください、父上」  アーキライトは、僕を抱き寄せると魔王のおっさんに告げた。  「私は、ルルシアを心から愛していますから。その証拠に、シアには、この通り」  アーキライトが掛布をはいで僕の体を暴いた。  「淫魔の花嫁の証である淫紋が刻まれています。これが、私たちの愛の証、です」  「わわっ!」  僕は、慌ててアーキライトから掛布を取り戻して体を隠した。  魔王のおっさんが口許を押さえて体を震わせている。  僕は、不安でアーキライトを仰ぎ見た。  「・・アーキライト・・」  「大丈夫、だ。シアが案ずることはない」  「・・何が、案ずることはない、だ?」  魔王のおっさんが顔を真っ赤にして怒鳴った。  「お前は・・例えルルシアがお前を受け入れたとしても、許されることではないんだぞ!」  「だから!」  アーキライトが声を強めた。  「ルルシアとレイラス王女を入れ換えたのです。ここにいるのは、レイラス王女であって、ルルシアではありません」  「そんなことが通用するか!?」  魔王のおっさんが怒鳴ったとき、背後から声がした。  「通じますとも!」  はい?  そこにいたのは、僕、というか、僕のふりをしているレイラス王女だった。  「なぜなら、ルルシアお兄様と入れ替わることは、私の願いでもあるのですから」  なんですと?  きょとんとしている僕の方へとレイラス王女は、歩み寄ってくるとそっと僕の手に何かを握らせた。  手を開くとそこには、僕のお気に入りのブローチがあった。  それは、僕が故郷の町を出るときにアーキライトがくれた赤い石を加工して作ったものだった。  「よくご覧になってください、おじさま。2人は、お互いの色を持って思いあっているのですよ?引き裂くなどできませんわ」  僕は、アーキライトの方を見た。  どこにも僕の色なんて・・  僕は、はっと気づいた。  アーキライトの耳を飾っている目飾りは、黒色の石で。  でも、こんなのずっと昔からつけてたし!  というか。  僕は、はっと気づいて体がぞくぞくした。  つまり、アーキライトは、昔から僕の色を身に付けてたってことなんだ!

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