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第71話 エピローグ
それから。
僕とアーキライトは、故郷の町の農場で家族と暮らしながらそれぞれ毎日、王都と魔王国へと通勤していた。
数年前に魔王のおっさんが引退し、アーキライトは、今や本物の魔王となった。
僕は、相変わらず牛(カーブ)の世話をしながら農場を経営しつつ、商会の副会頭として新製品の開発に余念がない。
変わったことといえば。
エウロキア王国の新しい王が誕生したことかな。
それは、レイラス・ロドス・エウロキア。
つまりレイラスは、この国の歴史上初の女王になったのだ。
レイラスが女王になってからまだ2年ほどしか経ってないがすでに名君の噂が高い。
それは、国内の農業生産率を上昇させるために新しい穀物を広めたことが大きかった。
もちろんその穀物というのは僕が開発した新種の植物だった。
小麦をベースにしているが、成長がはやく1年間に二回収穫することができる。
この作物のおかげでエウロキア王国で飢えるものはなくなった。
レイラスは、この穀物の種を提供する代わりに僕が副会頭をつとめている商会に王家の御用達の印を授けた。
このおかげで僕たちの商会は、名実ともにこの国1の商会となった。
そうそう。
クロードとクリスは、結婚した。
2人は、結婚1年目の祝いの日に孤児院から養子を1人もらい受けた。
それは、かわいい女の赤ちゃんで。
2人は、この子をむちゃくちゃ甘やかしている。
「お前たちは、いつ、結婚するんだ?」
そう、クロードに問われて僕は、焦っていた。
もう、アーキライトから逃げようなんて気持ちはなかったが、それでも、結婚となるとちょっと考えてしまう。
なにしろ、相手は、魔王だし!
でも、母さんいわく、
「魔王とかいっても普通の人よ」
ということなので、僕もそろそろ結婚を考えてもいいかな、とか思い始めている。
アーキライトは。
相変わらず、意地悪で、美しくて、そして、僕のことを愛してくれている。
そして。
エリザベスちゃんのことも可愛がってくれていた。
エリザベスちゃんは、最近、若い牡牛(カーブ)に恋しているらしい。
うまく行けば春には、エリザベスちゃんの子供が生まれることだろう。
これが、僕の物語。
なんの変哲もない。
ただの恋の物語だ。
ちょっと違うところは。
僕が恋した相手が魔王の連れ子の淫魔だったこと。
そして。
僕の恋は、まだまだ終わらない。
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