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プロローグ

    プロローグ  イチモツが情け容赦なく、清らかな蕾を荒らしはじめる。その凄惨な光景は、ドリルで硬い岩盤を掘り進めるさまを髣髴(ほうふつ)とさせた。 「くぅ……ん、ぅ、ううう……っ!」  沢渡志木(あわたりしき)は、斧で()ち割られるような激痛が全身を走り抜けるなか、懸命にずりあがった。  傘をたたむところをイメージしながら後孔をすぼめても、無駄だ。ずぶり、と(いただき)がめり込んだ。 「イッテーッ! 腐れチンポを抜けったら、抜け!」  ガムシャラに足をばたつかせるたび、じゃらじゃらと鎖がさんざめく。あたりは闇に包まれている。革製のベルトと鎖から成る枷が、左右の足首のそれぞれに嵌められているのだが、それの輪郭じたいぼんやりと浮かびあがる程度だ。  しかも鎖の一端は壁のフックに留めつけられている。腰を掲げて這う形に組み敷かれた状態で──だ。どれほど抵抗しても、もはや玉門をこじ開けられるまで秒読み段階に入った。 「いやだ、いやだぁーっ!」  くやし涙が、すべらかな頬を伝い落ちる。黒目がちの目が恐ろしさに見開かれる。男どころか女性さえ知らない躰を(けが)されつつあるなんて、悪夢のような出来事以外の何ものでもない。あまつさえ、異形の種族の餌食になる……?  そう、うがちやすいようギャザーを解き伸ばしてのけるのは、いわゆる獣人なのだ。  志木はさらなるパニックに襲われて、もがいた。おれという存在がばらばらに砕け散り、その欠けらのひとつひとつに、ありとあらゆる汚いものをなすりつけられるような目に遭わされるほどの悪事を働いたことなんか、二十年の人生の中でいちども、ない! 「痛っ、裂けるだろうが、クソッタレ!」  繰り返し破城槌を打ちつけられたように、おずおずと花芯がほころびていく。一ミリ、また一ミリと怒張が攻め入ってくる。 「いやだ、いやだぁあああああっ!」 「おまえは〝(いな)〟を唱える権利など有しておらぬ。性奴のイロハというものを、じきじきに教えてやるゆえ恐悦に思うがよい」  と、凌辱者ことアルフォンソ・デュモリー公爵はうそぶいた。金褐色の毛で覆われた耳が、征服欲の高まりぐあいを示すバロメータのようにぴんと立つ。それに反して、尻尾は優美な弧を描いて揺らめく。先端のひと塊の毛のみが、房飾りのように細かく分かれた、それが。 「……っ、う!」 「いきんで拒んでみせようとは浅はかな。遅かれ早かれ番いおおせる、観念するがよい」  嘲笑が暗闇にこだました。獅子の咆哮さながらの迫力に満ちて、志木を凍りつかせる。

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