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第8話

自宅に戻り宅建の勉強でもしようかと思っていたが、家に迎えにきた彼女をみて、デートの約束をしていたことを思い出す。 デートといっても、彼女がいきたい場所について行くだけだが。 最近彼女が気に入っているショップで洋服を選んでいる間、通りかかった店を思い返していた。 「あ、ここ! 行きたかったお店だ!」 「へえ……入る?」 「予約がないと入れないの。かき氷屋さんなんだけど、パン屋さんがやってるの。パンに合うかき氷なんだって」 パンに合うかき氷という言葉を聞いた瞬間、自然と宇井の顔が浮かんだ。 「パンにかき氷をディップして食べるんだって」 今度、宇井を誘ってみようか。 そんなことを考えたいると、スマホにメッセージが届いた。 送り主は宇井だった。 宇井からのメッセージを開こうとした時、彼女が声をかけてきた。 「ねえ、大和。こっちとこっち、どっちがいいと思う?」 「あー……そうだな……どっちも似合うから、選べないな」 笑顔でごまかすと、彼女は満足そうに頷いた。 「似合う? じゃあ、こっちかな。う〜ん、試着してくるね」 彼女は店員を呼び止め、試着室へと消えていった。その隙に、俺は再び宇井からのメッセージを確認する。 宇井:みんなから返事きた! 芳賀:よかったね 宇井:ありがと 宇井:今度飯おごる 宇井:何がいい? 宇井:何が好き? 宇井:何食べたい? 芳賀:思いつかない 芳賀:宇井は何がいい? 宇井:これお礼 宇井:考えろ 宇井:考えろ 宇井:考えろ 芳賀:わかった 芳賀:考えとくよ 芳賀:デートプラン 宇井:バカか 宇井:バカなのか 宇井:バカだろ 宇井、今どんな顔をしているのかな? 想像しただけで頬が緩む。 「お待たせ……何にやけてんの?」 「何でもないよ」

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