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第1話 部屋にベッドは一つ。
潔世一は俺の弟糸師凛の恋人だ。
そして俺糸師冴も世一が好きだ。
それでも俺は弟のものに手を付けるほど飢えていないつもりだった。
俺に好意を寄せる者は沢山いるし、それを代わりにすることもできたが、何故か俺は世一が欲しかった。
今まで世一の近くには凛がいて、だけども凛は今世一の側にいない。
ブルーロックからの卒業後の世一の行先を半ば強引に俺が招いた形だ。
国が違えばサッカーリーグも違うのだ。
要するに俺は凛から世一を遠ざけたことになる。
世一はきっとそれに気付いているし、俺も隠すことはしないし、俺はこれからも積極的にアプローチするつもりだった。
だから下心のある俺は世一とルームシェアを希望したし、彼も安上がるならばと頷いていた。
空港からタクシーでマンションに着けると、直ぐ様部屋に案内した。
「モデルルームみたいな部屋だ。キングサイズのダブルベッドなんて初めて見た!!」
開口一番の感想はそれだった。
唖然としている世一は実に可愛らしいと思った。
「世一の部屋に荷物は移動させてある。荷解きは俺も手伝おう」
「え?!いいよ、冴はトレーニングしてきて」
遠慮深いところもまた魅力の一つとして捉えているが、俺は黙ってダンボール箱のテープを開けた。
「……なんだこれは」
「ノアの応援グッズです!!……俺にも見られなくないものもあるんだよ、冴」
世一の荷物は俺よりも多くて荷解きが難儀しそうだった。
だがそれよりもこの部屋には寝具等も一切ないのだ、今晩はどうするのだろうか。
「今晩就寝するときはどうするつもりだ」
「ベッドと食器はこっちで買うつもりだったから、送ってない。買って届くまではホテルかな」
安上がりに生活するため俺とのルームシェアに応じた割には数日間は金のかかる日々を過ごす矛盾差を指摘しようとしたが、俺は気が付いた。
世一は凛の、凛は世一の想いが通じることがないと思いながらブルーロックを卒業渡飛したのだ、世一はきっと俺に身体を捧げようとしていたのだろう。
「俺に警戒してるか、世一」
「正直に言うけど、俺はどうしたら良いのか分からないよ」
世一から以前凛と身体の関係があったことを聞いたが、彼も愚弟も別れてから誰ともそんな行為をしていなかっただろう。
「冴は好きだけど、凛へ想う気持ちとは違うのは分かってる。でも俺は冴に……」
俺は世一の口を片手で抑えた。
「俺はソファーで眠る。世一は俺のベッドを使えばいい」
凛の恋人とはいえ今でも俺は世一が好きなのだ。
しかしルームシェアを提案したのは下心だし、弱った世一を慰めるためだ、それは隠さずに伝える予定だ。
世一が俺とのルームシェアをやめたいと言うのなら受け入れようと思っている。
せめてその下心の謝罪として短期間俺のベッドを譲ろうと思ったのだ。
「冴はやっぱり兄体質だな。でも俺が耐えきれない、……良ければ抱いてほしいよ」
世一はそう言って、俺の腕を掴んだ。
俺は最低な人間だから、荷解きを止めた世一の手を取って優しい口付けを施した。
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