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第20話
次の日の早朝に凛は部屋を去っていった。
世一に負担をかけることも一切せず過ごしていた愚弟は人としての成長を遂げていることに、俺は見直していた。
「凛帰っちゃったね」
「そうだな」
世一の背中が寂しいと言っているようで、俺は見るのが辛かった。
やはり彼の間には俺の入る隙間などないのだ。
思い知らされて、改めてダメージを食らう俺に世一は言った。
「なんで冴はこのリーグに凛を誘わなかったの?誘ってたらもっと楽しかったと思うのに」
「仮に誘ったとしても、凛は俺と同じリーグには来ないだろう」
そう言うと世一は笑顔で答えた。
「そんなことなかったと思う。だって凛の見る世界には冴はいるじゃん」
すると一瞬にして今まで凛とのやり取りが俺の中に入ってきた。
あいつは俺に会うと挑戦的で煽るような行動を取っていたことに気付けた。
凛にとって俺は乗り越える壁である、だからこそ近くにあるべきだと世一は考えているのだろう。
「いつも最後に気遣うのは兄ちゃんの冴だろ。俺が眠れてないの気付いて心配してたんだし」
そういえば何故世一はトイレに篭って態々NETTVを見ていたのだろうか。
「世一は何故トイレでTVを見ていた」
「俺声デカいからさ、もし独り言で寝てる冴を起こしたら悪いし」
世一も俺に気遣ってくれてたのだ、その事実が今の俺にとって嬉しいことだった。
「それでさ、俺の体調も戻ったことだし。エッチしたい」
それは俺がしていいことではないだろう、そう伝えようとしたら世一が俺の唇に触れてきた。
「彼氏が帰ったあとだからこそ、俺はしたいです」
世一は悪い子になった。
こんな性格になったのは、きっと俺のせいだろう。
「何故凛を誘わなかった」
「凛は意地が悪いけど、曲がったことはしないと思うんだ。だから誘わなかった」
俺も世一も凛の性格を知っているからこそ、訪ねてきたときの連携がスムーズだったということだ。
「俺は凛のようには抱けない」
「それがいいな。今俺の目の前にいるのは糸師冴だもん」
世一は俺の身体に抱きついてきた。
その彼の体温を今は感じたい。
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