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第19話
凛が転がり込んできたからといって、俺はキングサイズのダブルベッドはシェアせずに俺一人で使った。
眠れぬ夜を過ごしていた世一のために空け渡したい気分だが、そうなれば凛は俺に構わず盛るだろう。
床で盛りだそうものなら俺がいつでも割って入るつもりだったが、愚弟も成長したのかそんな素振りも見せなかった。
それでも世一は凛に寄り添うように丸くなって眠っていた。
結局俺の入る隙間もないのかと改めて思い知らされたが、それでも俺もしぶとい人間のようで、世一を諦めることは出来ず二人を眺め眠れぬ夜を数日間過ごした。
凛が風呂に入っている最中俺はスポーツTVをチェックしていたときだ、世一は俺を見ていたが気付かない振りをしていた。
「冴は何もかも知ってたの?」
兄だからといって何もかも知っているわけではないが、凛の行動パターンは読めるため知らないとは言えないかもしれないし、世一がショートスリーパーになっていることも知っている。
俺が否定も肯定もしないと彼は肯定ととったらしく謝ってきた。
「心配かけてごめん」
「世一が謝ることはない」
むしろ謝らなくてはならないのは俺の方だろう。
世一は凛に想いを抱いているのを知っているのに俺はルームシェアを提案したし、世一が知りたい凛情報を教える交換条件で身体を求めた。
権限がないのは凛以上に俺なのだ。
それでも俺は世一の隣を諦めることができなかった。
「俺は冴に心配かけることしかできないや」
「それは違う。……凛が帰ったら話合おう」
「俺も冴に話そうと思ってたことがあるから、明日凛が帰ったら聞いて」
きちんと世一に向かい合おう、彼の思っていることを聞こう、そう思った。
もしそれが俺にとって悪いことだろうと、世一の求めていることならば聞き入れよう。
俺の一番恐れていることは、サッカー選手としての俺の存在が消え失せることだ。
それ以外は何を言われても平気だと自分に言い聞かせ、その晩も一人でキングサイズのダブルベッドを使った。
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