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 高い高いビルの隙間を通り抜ける風は、身体の芯まで凍ってしまいそうなほど寒かった。 「はぁ……」  手を擦り合わせても温まる気配はない。それどころかどんどん冷たくなってしまっている。早く、温かいところへ入りたい。  鬱々とした思いを抱えながら、俺はひたすら前を進んでいく。  そもそもの話、頼まれごとでなければこんなひとけのない場所に来ることなどなかったはずだ。どうして、と、気が落ち込みそうな思いが湧き上がってくる。  狭い道の角を曲がった次の瞬間。突然後ろから強い力でぐっと引っ張られた。俺は勢いのまま、そこにあったものに身体を預ける形となってしまった。 「っ……」 「見ぃつけた」  背筋が凍りそうな低い声の主は、俺の身体を包み込むように抱きしめてきた。 「あらら、こんなに冷えちゃって。ジョンがかわいそう」 「誰のせいだよ」 「俺」  ははは、と笑うエリックは、俺の身体をくるりと回して対面する形にしてきた。そしてその手で俺の頬を覆う。

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