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「おはようございます、トーマさん」  トーマが家を出ると、優しい声でそう話しかけられた。心がぽかぽかさせられる声の主に、そっと視線を向ける。 「おはようございます、ヨシュアさん」  人間であるのだろうかと疑うような、淡い色の花を周囲に舞わせているようなオーラを出すヨシュア。ふわりと笑う表情は、同性であるトーマもドキリとさせられる。 「お仕事、頑張ってくださいね」 「……はい。いってきます」  トーマはペコリと頭を下げ、すたすたと家を去っていった。  ほんの一瞬の、何気ないやり取り。  ヨシュアとの挨拶は他者から見ればそうかもしれないが、トーマにとっては大事な日課であった。  名前以外何も知らない隣人と挨拶をしなければ、トーマの一日は始まらない。  今の家に引っ越してきた翌日から、たった一言の挨拶は続いている。  ルーティンの中に生きるトーマの中に定着するまでにしばらく時間はかかったが、ヨシュアが毎日のように同じ時間にい続けてくれているおかげで、今ではしっかりと組み込まれていた。  同時に、トーマのなかでヨシュアの存在は特別なものになっていた。

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