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* *  十二月半ば。  この時期になると、メディア系大企業サクラ・メディア・ホールディングス所有のSAKURAドームには、SAKUプロのアイドルたちが集結する。  隠しても隠しきれない煌びやかさに、世の女性たちが見ればきっと卒倒することだろう。  十二月二十四、二十五日は毎年恒例の『桜ノ森スターズ・オン・ステージ』が開催される。桜ノ森スターズ所属の全アイドルが出演する、それは贅沢なライブだ。クリスマスにもろにぶつけるという、わざと不利な状況を作っているとしか思えない日程にもかかわらず、チケットの競争率はかなり高い。  ユニット個々での曲目はそれよりもだいぶ前から、それぞれ時間の空いた時にリハーサルにやってくるが、ユニットを解体してのメドレーは開催十日ほど前から始まる。  バックを飾る研究生も参加するのでかなりの大人数がぞろぞろとSAKURAドーム内を歩いている。  その中を黒づくめの四人も混ざっていた。 「あ、BLACK ALICEだ」 「リハでもバッチリ化粧してんなー」 「や、それいつもだろ。事務所内でもアレだし」 「素顔まったくわかんないね」  遠くからひそっと噂されるのは毎度のことだ。  研究生時代の顔見知りなども多く、別ユニット同士でも話はするし、かなり親しげな間柄の者もいる。しかし、BLACK ALICEのメンバーだけはちょっと違っていた。  コラボ企画などで顔を合わせれば挨拶くらいはしないわけにはいかないだろうが、大勢の中で誰が誰に挨拶しているのかすら分からない状況では彼らに挨拶する者はほぼいない。  唯一顔バレしている。研究生出身、元なないろの『青』がプロデュースしていることを売りにしている。   そんなソウだけには皆機会があれば話しかけたいと思っているのだ。  嫌われている、というわけではないのだ。  彼ら自身がそういう雰囲気を醸し出しているので仕方ないのかもしれない。 「――――」  ざわざわしている中でその言葉は彼の耳に届いた。  立ち止まって辺りを見回すが誰が言ったのか見当もつかない。 「どうした? ユエ。顔色悪いが」 「……ううん、なんでも」  心配そうに声をかけるソウにそっけなく答え、また歩き始める。表情は変わらない。しかし、心臓は変にドクドクと鳴っていた。 「顔色悪いって、あんなに化粧濃いのになんでわかるんだ?」  彼らの後ろを歩いていたウイが隣にいる背の高い男に囁いた。そういう彼もベースメイクは真っ白、さらに紫のアイシャドウに赤紫のルージュをしている。派手さでいえば、ユエ以上だ。  隣の男――トワもやはり白メイクだが黒のハットに黒のサングラス、黒のマスクをしていてほとんど顔が見えていない。下手をすれば不審者だ。 「…………」  ウイはだんまりなトワに肩を竦めた。  サングラスをしているトワがどこを見ているのかわからない。しかし、ソウに支えられるように肩を抱かれているユエを凝視しているのだと、ウイは気づいていた。  ウイはそれでまたも肩を竦めた。  

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