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「そうか」  トワも同じように自分の膝の上で両手の指を組み合わせて話を聞いていた。視線はカーテンに、その向こうを透かして見ているかのようだ。 「オレの話はおしまい。たいしたことはないでしょ。トワが気になっていたところもなんてことない、自分を曝け出せないただの臆病な男ってだけ」 「いや、そんなことは……」  視線をカーテンからウイへ。何か言いたげに口を開くが結局何も言わなかった。 「――でー、トワたんは? どこまでが真実なの?」 (……あらかた知ってはいるけど……)   ここは知らないフリをするほうがいいと判断した。 (トワが覚えていないなら、このまま黙っていたほうが)  トワが黙ったままだったのでやや気まずげな表情でつけ加える。 「あ……別に言いたくなければ、言わなくてもいいけど」 「……いや」  とひと言言ってまた黙った。組んだ手がもぞもぞ動いている。何を話すべきか考えている様子だった。 「……俺はあの取材の時自分の家庭環境については何も語らなかった。俺が言ったのはソウが俺をスカウトしたことだけ。ソウほどの人間が何故俺のことを知っていたのかは、俺すら知らないから語りようもなかった」 「…………」  それについてウイは思うところもあったが、今はまだ言う時ではないと思った。 「俺の親父は、別に酒浸りのヤクザくずれとかじゃなかった」  それは『黒薔薇』世界の『トワ』の設定だった。 「母親は確かに死んではいたが、ユエ……ユイに会いに行った時じゃなく、それよりもずっと前、小学生の頃だ」 (そっかー。それは知らなかった。オレはただ母親の形見だと渡されただけで)  ウイはルームウェアの上から胸元をそっと指先で触った。  トワは続ける。 「家は貧乏とかじゃなく、まぁ、水準的には中の上くらいだろう。父親がいい会社の部長かなんかだったからな。兄弟もいなくて、父親は忙しくてだか子どもに興味なくてだか、家庭を顧みなかった。ハウスキーパーが週三回ほど来て家のことはやってくれたが、俺はほぼ独りだった」  ひょっとしたらトワのこの無表情は、幼い頃家庭で構ってくれる人間がいなかったせいかもしれないとウイは思った。 「だからって別にグレてとかじゃないから。この背と目つきの悪さでたまに絡まれたりはしてたけど。あとはてきとーにガッコ行って、たまにサボってふらっとどこか行ったり……とかだな。ただ人や何かにあまり興味がなかった。でも高校でダチに軽音に誘われて」 「ダチいたんだ」  頭で考えたつもりが口に出してしまった。トワの話を遮るつもりはなかったのに。 「まぁ、広く浅くだな」  ふっと苦笑い。 「音楽は初めて夢中になれたものだった。軽音の外でもバンドを組むくらいに。夢中になり過ぎて周りが見えてなかった。どちらとも温度差ができていて、軽音では引退するまで自分を抑えたけど、もう一つのバンドは揉め事が多くて、お互い傷つけ合って最終的には解散した。その揉めていた頃にふらっと行ったのがあの海辺の町だ。そして、ユイに出会った……」

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