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第6話:夜が明ける
買い出しで家から出ただけなのに、何故こんな事になっているのかと考えても答えを教えてくれる者は誰もいない。
道の真ん中で複数人の男たちが一人を取り囲み、無残にも服をズタズタに引き裂いている光景が繰り広げられても尚、周りにいる村人たちは知らぬ顔をしてそそくさと散っていってしまう。
いくら己を意味嫌っていると言っても、さすがに道端で白昼堂々と襲われそうになっている人がいたら普通は助けを呼ぶくらいはするだろうに、この村の民は本当に心が腐っているなとどこか他人事のように思考を巡らせるレオだったが、それもあえなく四方八方から伸ばされる多数の腕によって意識を引き戻された。
「やめろっ! はなせっ……! あっ……ぐっ!」
「うるせぇな。黙って咥えろよ」
もはやボロ切れと化してしまった服の間から真っ白な肌や小さくピンと立っている乳首、ほっそりと艶かしい太股などが露になり、レオを襲っている男たちはそれを視界に入れた途端鼻息を荒くして目を血走らせる。
性欲が限界を迎えてしまったのか、この騒動の主犯各である男は自身の履いていたズボンと下着を一気に下ろすと、レオの小さな顔を片手でわし掴む。
そして、既に勃起しているグロテスクな逸物の先端をおもむろに小さな唇にピトっと当てた。
溢れる先走りが唇の隙間から口腔内に入ってきそうで、レオはその独特な臭いから思わず顔をしかめ、渾身の嫌悪を込めて懸命に叫ぶ。
「嫌だって言ってるだろ!」
しかしレオのその声は、男たちはおろか周りで野次馬のようにこちらを見つめる村人にさえ届く事はなかった。
皆一様に、レオのその屈辱的な姿を見ては嘲笑っているのだ。時折、ひそひそと「ちょっとアイツがヤられてる所、見たくねぇ?」「いいね~、俺無理やり乱交系好きなんだよ」「あの男娼、なんかめっちゃエロいもんな」などと好き勝手に笑う光景が、何とも酷く滑稽で穢らわしい。
その現状に、レオは心底落胆する他なかった。
顔を青ざめながらも懸命に男の勃起した性器から顔を反らそうとするレオに、ふと男が先ほどまでの余裕そうな笑みから一変、今度は心底不機嫌そうな表情を浮かべた。
「お前さー、あの旅人が来てから全然抱かせてくれなくなったじゃん? いくら金払うっつってもさ、ずーっと拒否されまくる俺らの気持ちわかんねぇかな?」
その言葉に、レオの紫暗の瞳が大きく見開かれた。レオにとっては、アルはこんな事には絶対に巻き込みたくない大切な人なのだ。
アルを巻き込んでしまったら――――そう考えるだけ、レオの焦燥は積もっていく。
一方、「あの旅人」という言葉に過剰に反応し肩を大きく震わすレオを見やりながら、男たちは顔を合わせてゲラゲラと笑った。
「あんなもん、ただお前をからかってるだけだろ!」
「勘違いしてんじゃねーよバカ!」
「アプローチされて調子乗ってんじゃねぇぞコラ。テメェは塵以下の価値しかねぇんだから」
男たちから発せられるその言葉たちに、レオの心はズタズタに引き裂かれていった。
元々、村人からの差別や侮辱を一身に受けてきたせいで自尊心や自己肯定感が著しく低く育つてしまったレオからしたら、その言葉たちはまるで鋭利な刃物のように鋭く突き刺さってくる。
アルの事を信じたいのに、この男たちなぞ信用の欠片もないのに、言葉一つで惑わされて揺らいでしまう。
一瞬、諦めたかのように身体から力を抜いたレオだったが、そんな状況でも頭の中にふと過るのは、太陽のような光輝く笑顔を浮かべるアルの姿だった。
アルは、汚れた身の自身を限りなく愛し、大切にしてくれる。なら、自分だってこの身を守らねばアルへの裏切りになってしまうと漠然の思いがふつふつと込み上げてきた。
あの屈託のない笑顔が頭の中に現れた瞬間、レオの中に不思議と今までにない力が沸き上がってくる。そしてそのまま渾身の力を込めて、自身を触っていた腕を引き剥がすため腕や足を激しく振り回す。
「っ……嫌だっ……! 触るなっ!」
ジタバタと、細い体格に見合わない力強さで腕を引き剥がしていくレオに、さすがの男たちも驚いた。どんなに腕を掴もうとしても振り払ってくるその様子から、これは埒が明かないかもしれないと思い至った男は、舌打ちをして手下の男に命令をする。
「チッ……おい、埒が明かねぇからアレ出せ」
手下の男が何やらバッグから取り出し、男に渡した。どうやら何かの液体が入った小さなピンク色の小瓶のようだ。
男は小瓶の蓋を片手で開けると、そのまま注ぎ口をレオの口の中に突っ込み、中の液体を喉奥に流し込んでいく。
「んぅっ!?」
急に口の中に液体が入ってきたせいで、レオは反射的にその液体を飲み込んでしまった。
甘ったるい味が口内全体に広がり、果実酒のような独特な匂いが鼻を抜けていく。
その瞬間、レオの身体に異変が起こった。
「ふ、ぁっ……!」
急激に身体が内側から火照り出したのだ。
顔が真っ赤に染まり、汗が滲み出してきた。腹の奥底から熱が放出されているようで、頭も貧血の時のようにボーッとしてしまう。酸素を求めすぎて、肺が苦しい。
「効いてきた効いてきた! マジでえっろいな……」
ゲラゲラと笑う男たちに、一体何を飲ませたのかとレオは涙で潤む瞳で必死に睨み付けた。
「な、にを……」
「そこの娼館で売ってた媚薬だよ。すげー強い効き目の上に超即効性らしいぜ!」
その言葉に、レオの頭の中は絶望の色一色になってしまう。曲がりなりにも男娼であるレオからしたら、その媚薬が恐ろしいほどの効果をもたらす事など当然のように知っていたからだ。
熱い息が細かに震え、それに合わせてか細く甘やかな喘ぎ声が漏れ出してしまう。
強制的に与えられた快楽から逃れるため、身体をもぞもぞとさせながら瞳を潤ませ、さらには真っ白い肌を存分に男たちの前に晒し美しい顔を艶やかに歪めるレオのその様子に、男たちは皆一様に目をギラつかせる。
その目は、まさしく獲物を駆る寸前の猛獣の目そのものだ。
「ふ、ぅ……! あ、つい……!」
突き刺さるような複数の視線と、薬の恐ろしいほどの効果に耐えきれず、レオは身を捩りながら紫暗の瞳から涙を溢れさせた。
怖い、誰か、助けてほしい。いや、誰かじゃなく、あの人に――――。
レオの頭の中に過る一人の青年の輝かしい笑顔は、男たちの生暖かく湿気った荒い息によりかき消されてしまう。
「あーもう無理。チンコいてぇ。俺先に行かせてもらうわ」
主犯各の男が、もう耐えきれないとばかりにレオの白い脚に手を伸ばす。
そして辛うじて引っ掛かっていたボロボロの服をすべて取っ払うと、僅かに勃ち上がりかけているレオ自身の性器とその奥に潜む慎ましやかな後肛をすべてさらけ出してしまう。
性器の方はいまだ使用した事がなかったため、年齢の割りには色が薄くてどこか艶やかな印象をもらたしており、その色香に男たちは無意識にゴクっと唾を飲み込んだ。
しかし主犯各の男は性器には見向きもせず、後肛の方へ真っ直ぐに手を伸ばし柔らかな双丘を乱暴な手付きで割ると、早急な様子で自身の屹立の先端を入口に宛がった。
「おいおい、さすがにちっと慣らしてやらねぇと可哀相だろ」
「チッ……めんどくせぇな」
本来のそこは性行為で使う所ではない。いくら場数を踏んできたといえどさすがに慣らさねば流血沙汰になりかねない。他の男が若干の憐れみを抱いてそう声をかければ、主犯各の男は乱暴に舌打ちをした後、一旦屹立を離した。
そしておもむろに顔をレオの下半身に寄せると、そのまま再び双丘の奥でひくひくと痙攣する後肛に舌を伸ばし、襞をなぞるようにねぶり始めた。
突然の後肛への柔らかな刺激により、薬で快感の高まったレオの身体がびくんっと大きく跳ね上がる。
「あっ……!? や、いやだっ……!あ、んぅぅっ……! そ、こ……ぁあっ!」
ぴちゃ、ぴちゃと唾液が塗りたくられる水音が辺りに鳴り響く。
最も敏感なところを好きでもない人間に直接舐められる行為は、嫌悪感と比例してレオに確実な快楽を与えてくる。
今までさんざんそこを弄られてきても耐えられたのは、ひとえに生きていくために心を殺していたからだ。けれど今は、殺していたはずの心に再び温もりが与えられている最中だった。だからこそ、他人にそこを弄られるのはレオにとっては苦痛以外の何物でもない。
襞の一枚いちまいを数えるように舐めつくされ、いよいよ舌全体が中へと強引に割り込んできた。温い唾液が中へ直接注ぎ込まれる感覚に鳥肌が立つ。
分厚い舌が蛇のような動きで暴れる感覚が、生暖かい息が尻にかかる感覚が、そして無理やりにそこを暴かれようとしているのに快楽で舌を無意識に締め付けてしまう自分自身が、どうしても受け入れられない。
周りの男たちも痴体の色香に当てられたのか、ギラギラとした雄の瞳をレオへと真っ直ぐに向けている。その複数の瞳の不気味さに、レオは恐怖と快楽から顔を真っ赤に染めつつほろほろと涙を流す。そして気づけば、無意識に一人の存在に縋る言葉が唇から漏れ出していた。
「アルっ……アルぅっ……! や、だっ……!」
「……っ!」
レオが泣きじゃくる子供のように嗚咽を漏らしながら呟いたその名に、レオの後肛をねぶっていた主犯各の男の顔が突如として怒りの表情に染まる。
勢いよく舌先を埋めていた下半身から顔を上げたかと思えば、今度は渾身の力を込めてレオのまろい左頬を手のひらで打った。
「っ!?」
パンッ! と激しい暴力の音が辺りに響いた。
頬を打たれた事に呆然と固まるレオの口の端から、鮮血が一本伝う。勢いよく叩かれすぎて内側の頬の肉を切ってしまったようだ。
仲間の豹変する様に驚愕で固まる他の男たちになど見向きもせず、主犯各の男は射殺すかのような、しかしどこか寂しげな色を携えた視線を真っ直ぐにレオに向けた。
「……今テメェを抱こうとしてんのは俺だぞ。他の男の名前なんか呼びやがって……萎えんだろうが!」
男のその轟くような重低音に、レオは恐怖でビクッと身体を震えさせる。
威圧感のある声だけで身体中が雁字搦めにされているかのように硬直し、喉からか細い吐息のみが漏れ出す様はまるで獣に狙われた獲物のようだ。
一方、急に荒れ出した仲間の様子に先ほどまでレオと同じように硬直していた男たちは、幾ばくかの時が経ちようやく我を取り戻し、皆一斉に故意に茶化すような笑い声を上げる。
「おいおい、男の嫉妬は見苦しいぞ~?」
「まあしゃーねぇよな。コイツ昔から何だかんだこの男娼の事……」
一人の男がへらへらとした笑顔のままそう呟こうとすれば、主犯各の男は突如として地面に自身の拳を打ちつけた。
地が割れるような音を出した仲間を見やり、男たちは再び化け物を見たかのように青ざめ、口を閉ざす他ない。
「……それ以上言ったら、テメェらであろうとブチ殺すぞ」
「わ、悪ぃ……」
ゆっくりと振り向いた男の顔は、まさに悪鬼そのもの。
目を血走らせ、額に血管をいくつも浮かせたその様は見ているだけで殺されそうな威圧感を放っている。
男は内心煮えたぎる憤激にまみれた思考を何とか抑え込むと、再びレオの剥き出しの下半身に手を伸ばす。
そして唾液で濡れているそこに束ねた二本の指を一気に挿入した。
労りも何もない、ただ鳴らすためだけに乱雑に行われるその行為は、薬で身体が昂っているレオに更なる恐怖と痛み、そして快楽を与える。
ぐちゅぐちゅと水音を奏でながら激しく中で指を動かされると、いい所にかすってどうしようもなく性器が反応するのを抑えられない。
「ぁ、っ……! だめっ! お願い止めて! やだっ!」
レオが男の腕を止めようと叫んだ瞬間――突如として、細い首を大きな手で鷲掴みにされた。
「ぐっ……!? かはっ……」
「うるせぇっ!」
男の無様な声が響き渡る。絞り出すかのようなその悔しさが溢れ出す声色に、レオや周りの男たち、そして通りすがりの村人まで全員が肩をビクッと強張らせる。そんな周囲の反応には気づかず、男はキリキリとレオの細首を少しずつ締め上げていった。生理的に涙が滲んでくるのを、目の前の野獣は怨みの色を携えながら獰猛に見つめている。
「あの旅人に好かれてるからって、今さら処女ぶってんじゃねーぞ! 今まで散々俺たちに抱かれて喘いでたクソビッチの癖によぉ! テメェはこの身体を使う事以外に生きる価値なんか一つもねぇんだから、黙ってチンコ突っ込まれてひんひん啼いとけばいいんだよ! それとも何か!? ガバマンすぎて一本じゃ足らねぇってか!? んじゃ、お望み通り二輪挿しでも何でもしてやるよ淫乱!」
その言葉の棘は、レオの心へと深く刺さった。
酸素を強制的に遮断された回らない思考で懸命に「違う」と思い込もうとするが、男の言葉の刃物はレオに消えない傷を次々とつけてしまう。
確かに己は、どこの馬の骨かもわからない男たちに身体を捧げてきた。けれどそれはそれしか生きる術がなかったが故だ。どうして淫乱などと呼ばれなければいけないのか。
――――己には、本当に生きる価値なんてないのか。
後肛でバラバラと蠢く指の激しい愛撫から与えられる快楽と、息が吸えない事の苦しさ、そして突きつけられた自身の価値観への絶望から、レオの瞳からはとめどなく涙が溢れる。
その様子をただ黙って見つめていた周りの男たちだったが、先ほど主犯各の男が「二輪挿し」という言葉を吐いた事を思い出し、はたと我に返った。
主犯各の男の恐ろしさを前にしていても、目の前で美しい顔を歪めながら艶やかな喘ぎ声を漏らすレオの痴体に理性の限界が来ていたのもまた事実。
男の一人がニタッとした不気味な笑みを浮かべながら、仄かなピンク色に染まったレオの艶かしい身体に手を伸ばした。
「おい、二輪挿しやるんだったら俺が……」
男の手がレオに触れるその瞬間、突如として目の前に鋭い光を放つ物がぬっと差し込まれる。
太陽の光を受けてギラッと輝くそれは、人間の肩幅くらいはありそうな太さの大きな剣の刃だった。
「ひぃっ!?」
突然の事で一瞬思考回路を停止させていた男たちは、目の前に現れた大剣に気づくと皆一様に悲鳴をあげてレオから距離を取り始める。
無論、レオを真っ先に犯そうとしていた男もすぐさま情けない悲鳴をあげて細い首から手を離した。
突如として肺に一気に酸素が入り込んできたため、レオはその苦しさから大きく咳込み始める。
「かはっ……! はぁっ……! はぁ……」
涙と朧気な意識で何とか今起こった事を見ようと目を懸命にこらすと、目の前には顔を真っ青に染め上げ、まるで生まれたての子鹿のようにぶるぶると震える男たちと、大剣を手にしながら何かを呟いているアルがいた。
レオに背を向けてその場に立つアルだが、その背中からは抑えきれない怒気が立ち込めており、オーラだけで人が死んでしまうのではないかと思う程の迫力を携えている。
「……殺す殺す殺す殺す……」
よく耳を凝らせば、アルは地響きを起こしそうな程の重低音でそう呟いていた。
その呪詛のような呟きを耳にした男たちは、本格的に自分たちの命が危うい事を察知し、すぐさま逃げようと縺れる足を懸命に動かして後退りする。
しかし、平々凡々と閉鎖的な村の中で育ってきた人間が、過酷なクエストをこなしてきた屈強な戦士に敵うはずなど世界がひっくり返ってもありえない事だ。
「あがっ!?」
一人の男の身体が、一瞬にして地面にめり込む。
あまりの速さに一瞬何が起こったのか理解できなかった他の男たちは、真横で粘土のように簡単に潰れてしまった仲間を見やった瞬間断末魔のような悲鳴をあげた。
地面にめり込んだ男の身体は、腕や足がそれぞれ色々な方向に曲がっており、そのあまりの激痛に血混じりの泡を吹いて白目を剥くという目を反らしたくなるような有り様に成り果てていた。
男たちが甲高い悲鳴を上げる最中、アルは俊敏な動きで一人ひとりを肉塊にしていく。
時には大剣を振りかざして手首や足首を切断し、時には髪の毛を鷲掴みにした後近くの大木に何度も頭を打ち付け、時には脚を腕力のみで木の枝を折るように簡単に砕く。
「ぎゃああああ!!」
男たちの凄絶なる悲鳴が辺りに響き渡った。
そのあまりの残酷な光景に、周りにいた村人も化け物を見たかのように慌てて逃げ出す。
次々と男たちが瀕死の重症を負わせられる中、メインディッシュとばかりに最後まで放っておかれていた主犯各である男は、情けなくも恐怖から失禁しその場で涙を溢れさせた。
「や、やめ……!」
懇願するかのようにアルを見上げ小さく呟くが、怒りに飲まれたアルの耳にその言葉が届く事はいっさいない。
ぶるぶると痙攣する男に向かって無慈悲にも大剣が振り下ろされるその瞬間、儚く美しい声が突如としてアルの鼓膜を震えさせ、反射的に身体の動きを止めた。
「あ、アル……アル……」
あれだけ上がっていた男たちの断末魔や懇願の呟きは聞こえて来なかったはずなのに、この小さな小さな声だけはアルの頭の中にスッと溶け込んでいく。
己の名を呼ぶ涙混じりの声にゆっくりと振り向けば、そこには何も身に纏っていない身体を両腕で抱え込みながら荒い息を吐くレオの姿があった。
「……たすけて、からだ、あついっ……アル……ぁ、うっ……」
媚薬の効果で強制的に性欲を促進された身体は、少しの刺激でもびくびくと震えた。
白い身体がほのかに赤く染まり、汗をかいてしっとりと肌が濡れている。涙が溢れる暗紫の瞳は、蠱惑的な甘い色香を匂わせて何かを懇願するかのようにアルを真っ直ぐに見つめる。
そのあまりにも妖艶な想い人の姿に、アルは無意識に唾を飲み込んで大剣を力なくその場に下ろした。
「っ……!」
アルが戦意喪失した所を見やった瞬間、主犯各の男は硬直していた身体が嘘だったかのように慌てて身体を起き上がらせ、冷や汗をかきながらどこかへと姿を消してしまう。
しかし、今のアルにとってはもうそんな男など意識の範疇外にあった。今はただ、目の前で欲に苦しむ想い人をどうにかしてやりたいという思いでいっぱいだった。
アルはすぐさま大剣を鞘に納めると、ふるふると震えるレオの身体に自身の着ていた羽織をかけてやった。
服が肌に擦れる感覚だけでビクッと身体を痙攣させるレオがあまりにも辛そうで、アルは刺激をなるべく与えないようにそっと胸の中に抱き寄せた。
なすがままに抱き締められるレオの真っ赤に染まった耳元で、アルは憂いを滲ませた声色でぽそりと呟く。
「……ごめんなさい。レオさん、ごめん……」
「……なん、で? ぅっ……君は、助けてくれたのに……っ……」
耳元で吐かれる息に過敏に反応しながらも、レオはアルに対して真っ直ぐに潤んだ瞳を向ける。
なぜ自身よりも、助けてくれたアルの方が辛そうな顔をするのか。
泣きそうに顔を歪めるアルに対して小さく首を傾げるレオだったが、だんだんと込み上げてくる欲情の熱に次第に身体をもじもじとくねらせ始めた。
「はぁっ……ぁ、うっ……んぅっ……」
飲まされた薬は、娼館でも特別な時にしか使用しない極めて強力な効果を発揮するものだ。
嫋やかな熱い吐息を漏らしながら、レオがアルの胸にすがりつくようにギュッと抱きついていると、頭上から僅かな怒気を含んだ声が下りてくる。
「……もしかしなくても、媚薬ですよね?」
「っ……う、ん……」
「……あの糞野郎どもが……」
ボソっと呟かれた声には、男たちへの壮絶な怒りが滲み出ている。
しかし今は下衆な男たちに更なる制裁を下すよりも、目の前で苦しんでいるレオを救う事の方が最優先だ。
悔しい思いを捨てきれないがアルは自身を無理やり納得させ、レオの膝の裏と背中に手を添えると軽々とその華奢な身体を抱き上げた。
そしてそのまま横抱きにしながら、無惨に転がる瀕死の男たちには目もくれず家に帰るための道をゆっくりと歩き出すのであった。
レオを抱えながら家へと戻ったアルは、そのまま火照った想い人の身体を柔らかなベッドへと優しく降ろすと、自身はキッチンへ向かおうと踵を返す。
しかし、服の端を掴んで己の動きを嫋やかに止めにかかってくる白い手によって一旦その場で動きを止めざるを得なかった。
「……いか、ないで……」
涙で潤んだアメジストの瞳をアルに向けながら、レオはたどたどしく懇願する。
服を掴む手は、快楽の他にアルに置いていかれるかもしれないという不安から僅かに震えており、アルはその健気な姿に思わず顔を歪めた。
置いていくわけがないとでも言うかのように、服を掴む一回り小さな手の上にそっと自身の小麦色の手を乗せ、すりっと愛おしそうに撫でてやる。
「……大丈夫。水を取りにいくだけだから安心して」
まだ不安が残っていそうな表情を浮かべるレオだったが、アルが優しさと慈しみを込めた漆黒の瞳で見つめてくるのに気付き、恐る恐ると言った具合に服から手を離す。
勇気を持って手を離してくれたレオを更に安心させるかのようにアルは優しく銀色の小さな頭を一撫ですると、後ろ髪を引かれながらもキッチンへと行きガラスのコップに水を注いだ。
すぐにレオの元へと戻り、コップを手渡そうと差し出す。
「レオさん、飲めますか?」
しかし、いまだ残る媚薬の効果と先ほど起こった事への恐怖心が抜けず、思うように力の入らない手で受け取ろうとした拍子にコップが滑り落ちてベッドを濡らしてしまった。
「ふ、っうっ……あ、ごめ……なさ……」
水を溢してしまっただけなのに過剰に怯えて涙をほろほろと溢すレオに、アルは内心男たちを捻り潰したい思いでいっぱいになるがそれは顔には出さずに先ほどと同じように優しく頭を撫でてやった。
そして転がったコップを拾い、再びキッチンで水を汲むと、今度はそれをレオには直接手渡さずに少しだけ思い詰めたような表情を浮かべる。
「……レオさん、後で俺の事、殴ってくれて大丈夫だから」
「……?」
アルが申し訳なさそうに呟いた言葉を、思考回路が上手く働いていないレオはあまり理解できずに首を傾げる。
そんなあどけない仕草をするレオに苦笑しながらも、アルは手に持ったコップに口を付け、口内に水を目一杯に溜め込んだ。
そして腫れていない方のレオの頬に手を添えると、男に殴られて切れてしまっている小さな唇にそっと口づけをした。
「んっ……! ふ、ぁっ……」
「っ……」
驚愕から反射的に小さく唇が開かれた事を好機とし、アルはそのまま少しずつ口内に溜めていた水をレオの口の中へと移していく。
しっとりとした唇の感触と、鉄の味がするのにどこか甘味を感じるレオの口腔内にずくんと下半身が重くなるが、これは緊急措置で仕方のない事だと必死に自身に言い聞かせながら、アルは時間をかけてレオに水を飲ませてやった。
「は、ぁ……」
「……レオさん」
ようやくすべての水を飲み終えた所を見計らい唇を離せば、レオは先ほどよりもとろんと蕩けた瞳でアルを上目遣いに見つめる。
口の端から一筋伝う唾液と水の混じった液体が、レオの扇情的な表情に更に色香を加えており、壮絶なまでに蠱惑的な光景を作り上げていた。
「足りないっ……からだが、あつくて耐えられないんだっ……!」
その言葉に、アルは少しばかりたじろぐ。
レオの吐いた言葉の意味がわからない歳ではない。そもそも己は娼館で女を抱いた事もあるから、この流れが先ほど身も心も傷つけられたレオにとっては良くない流れだという事もよく理解している。
しかし、必死に懇願するかのように己の胸にすがりついてくる想い人を前にして、果たして手を伸ばさずにいられるだろうか。
「アル……、おねがい、抱いてっ……! お願いだから……ぁ、……」
今度ははっきりとそう言葉にしたレオは、堪えきれない性欲で理性の糸が切れてしまっているのか、上着を身に纏っただけの裸体を必死にアルの身体に擦り付けながら熱い息を吐き続ける。
「アルがいい……! ぼく、さっきの男たちは……嫌って思ったけどっ……アルだったら……何されてもいいからっ……お願いだから……あついのはもう嫌なんだよっ……!」
「っ……!」
最愛の人からそんな事を言われてしまえば、限界まで抑え込んでいた欲望が爆発してしまうのを止める事はできなかった。
レオの言葉が終わるか終わらないかの瞬間に、アルは少し乱暴にレオの後頭部を掴むと、唾液と水で潤った唇に早急に貪り付いた。
「んっ! ふ、ぁっ……んぁっ!」
舌で無理やり小さな唇を抉じ開け、戸惑いで逃げる薄い舌を追いかけるかのように絡ませる。
蛇のように舌を蠢かせ、そのまま上顎や歯列をなぞればレオはビクッと身体を震わせた。
溢れ出る二人分の甘い唾液をレオの口腔内に注ぎ込めば、健気にもこくんこくんと懸命に喉を動かしてそれを飲む様がよりいっそう下半身に熱が溜まる要因になる。
くちゅ、くちゅ、と卑猥な水音が鼓膜に響くのも相まって、最早何も考えられない。
傷ついた心身を少しでも労ってあげたいのに、理性のタガが粉々に砕かれてしまった今はそんな余裕はなかった。
ようやく長い口づけを終え、唇と唇を離す。
まだ本番はこれからだと言うのに、レオはもう既に息も絶え絶えで今にも意識が飛びそうな様子だ。
そんなレオを少しでも楽にさせてあげようと、アルは興奮で熱くなった吐息を漏らしながら小さく囁いた。
「……俺に、全部任せて」
「……っ……うん……」
レオがたどたどしく頷くのを皮切りに、アルはレオが身に纏っていた上着を剥いで放り投げる。
一瞬にして身体のすべてをアルに見られてしまった事に、レオが羞恥で赤かった顔を更に赤らめる様子が可憐な光景を作り上げていた。
そんな想い人を心から可愛らしく思いながら、アルはトンっと優しくレオを押し倒しつつ、目の前でツンと立ち上がっている小さな赤い突起に唇を寄せる。
片方の乳首はそのまま優しく唇で挟み込み、もう片方は武骨な太い指でくりくりと摘み上げれば、たまらないと言ったようにレオが甲高い声を漏らした。
「あっ、……あぁっ! やっ……んぅっ!」
あまやかな喘ぎ声に更に興奮を掻き立てられ、アルはそのまま少し強い力で口に含んでいた乳首を吸い上げた。
ちゅう、とわざと音を立てて吸引し、更に固く立ち上がった先端をコロコロと舌の先で遊ばせ、手で弄っていた方の乳首に爪を立ててカリカリと引っ掻いてやれば、レオは襲ってくる快感に耐えるかのようにギュッとアルの頭にしがみついてくる。
「ふぁっ、ああっ……! ちくび、だめぇ……!」
駄目だと言いつつ胸を押し付けるように頭を抱えてくるレオにクスッと笑みが零れる。
そうしてしばらくの間胸を苛めていたら、気がつけばレオの慎ましやかだった乳首はふっくらと軽く腫れ、艶やかにピンと立ち上がりその存在を強く主張するまでになった。
それが恥ずかしいのかもじもじと身体をくねらせるレオを愛おしく思いながら、アルは胸に張り付かせていた顔を少しずつ下の方へと移動させる。
時折ちゅ、と薄い胸筋や腹筋に口づけしつつ、今度はレオの緩く立ち上がった性器に顔を近づけた。
先端から蜜を溢し、ひくひくと痙攣するそれは、普通の男の物とは違って色が薄く実に扇情的だ。
元々性的対象が女性だったアルにとって、男の性器なぞ見たくもない物だったが、レオのそれは見ているだけで興奮が加速され、無我夢中でむしゃぶりつきたくなる代物に映る。
そのまま口を大きく開いて性器を咥えようとした所で、突如として頭上から「駄目!待って!」と必死な声が降り注いできたためにピタッと動きを止めた。
「ぼく、それ慣れてなくて……こわくて、駄目なんだ……」
レオが怯えたかのようにそう呟く様子を見て、アルは僅かに顔を歪める。
性器を弄られ慣れていないという事は、今までずっと性欲処理のための穴としてしか身体を使われてこなかったという事である。愛おしい相手には、共に気持ちよくなってほしいと思うのが当たり前なのに、レオにはそのような経験がいっさい存在しない事をありありと理解した。
レオの今までの扱われ方を想像して腸が煮え繰り返りそうになる思いを抑えつつ、アルは気持ちとは比例した柔らかな笑顔を浮かべる。
今は怖くて嫌だと言うのであれば、いくらでも待つつもりだ。
「うん、じゃあレオさんがされてもいいよって思える日が来るまで我慢する」
アルのその優しさの滲んだ声色に、レオは眉根を下げて申し訳なさそうな表情を浮かべる。
行為を拒否した事によりアルが機嫌を損ねてしまうのではと思っているのだろうが、こんな事でアルの大きな愛が失われる事なぞ存外あり得ない事だ。
迷子の子供みたいに不安そうな様子のレオを少しでも和らげてあげようと、アルは性器には触れずにその奥に潜む慎ましやかな蕾に手を伸ばした。
先ほどまでさんざん他の男に弄られていた後肛は、綺麗な形をしているが少し赤く色づいている。
アルは極力レオが痛い思いをしないよう、自身の指を唾液で存分に濡らすと、そろそろと後肛の表面を優しく撫でつける。
最も敏感な所に指を添えられ、羞恥と柔い快感でレオの薄い腹がピクっと跳ねた。
その初な反応を可愛らしく思いつつ、アルは傷つけないようそっと人差し指を中へと挿入してみる。
「んぅっ……」
「……痛くないですか?」
「ん、へいき……」
レオの顔色を伺いながら努めて優しい手つきで指を奥へと侵入させてみるが、レオの表情は蕩けたままでホッと一安心する。薬の効果も相まって、指一本でたまらないといったような表情を浮かべており興奮が止みそうにない。
乾いた外側とは違い、中はしっとりと濡れており、ふわふわとした内壁が指に絡み付いて離さまいと蠢く感触にアルの屹立がますます固さを増した。
今すぐにでもこの中に自身の滾ったブツを打ち込みたくて仕方がなかったが、これはレオを辛い滾りから解放するためのセックスだ。極力優しくせねばと自身の性欲に鞭を打つ。
入れてから少しの間指の動きを止め、レオの身体から余分な力が抜けるのを見計らい、アルは試しに指を前後へと軽く動かしてみる。
「ふ、ぁっ……ん、ん……ぅっ……」
敏感な中を擦る度に、頭上から鼻にかかった高い声が聞こえてくるのをアルは恍惚とした思いで記憶に閉じ込める。
そのまましばらく一本で慣らし、だんだんと中が広がってきたのを皮切りにアルは少しずつ指の本数を増やしていった。
「ひぁ、ぁあっ……! あ、そこ、きもちっ……!」
二本、三本と指が増えていくたびに、レオの喘ぎ声が大きくなっていく。
時折いい所を掠めるのがたまらないのか、腹側の浅い所にある膨らんだ部位に指が当たると途端に女のような甲高い声を上げるその様に、アルの理性もとうに限界を越えてしまう。
ずぽっと勢いよく指を引き抜き、もうたまらないとばかりにはくはくと痙攣する後肛に自身の滾った屹立の先を宛がった。
突然指が引き抜かれた事によりびくびくと身体を震わせるレオの細い腰を大きな手で抱えると、アルは一気に中へと熱い滾りを挿入した。
「あああっ!」
「っ……あ、ちぃっ……」
性器に直接絡まる粘膜のあまりの熱さに、アルは汗を滴らせながら唸る他ない。
蠢く内壁に精をすべて搾り取られそうで、挿れただけで危うく果てそうになったのをぐっと堪える。
一方レオは、優しい手つきだった愛撫とは打って変わってあまりにも激しく性器を中に打ち付けられた事により、一瞬意識が何処かへ飛んでしまった。目を白黒とさせながらふと自身の性器を呆然と見やれば、精液は吐き出していないのに先走りが溢れててらてらと光を帯びている。
どうやら射精せずに、中の快感だけで果ててしまったようであった。
挿れられただけで女のように絶頂してしまった事にレオが羞恥で涙を幾度にも流すが、そんなレオを気遣う余裕などアルには到底なく、果ててしまってよりいっそう敏感になっている身体へと腰を激しく打ち付け始めた。
「あっ! だ、ダメっ! イッたばっかっ……あっああっ! いや、らぁっ……! んぁあっ……!」
「ごめっ……とまんねっ……!」
強制的に与えられる強すぎる快楽にレオが子供のように泣き喚くが、欲望で我を失いかけているアルからしたらその蠱惑的な泣き顔はむしろ性欲をよりいっそう促進させられるだけであった。
卑猥で粘着質な水音が鳴り響き、ずちゅずちゅと獣のように中と外とを出入りするアルの性器は、血管が張り巡らされ今にも爆発しそうなほどに熱を持っている。
優しく抱こうと思っていたはずだったのに。こんなにも快感の波に飲まれていてはあの男たちと同じではないのか。
激しい興奮に包まれる中、アルの脳内には罪悪感が徐々に募っていく。
しかし、当のレオも快楽で蕩けるかのような扇情的な表情を浮かべており、嫌がっている様子はないのが幸いだった。
そのまま中を欲望のままに突き、先ほど指での愛撫で見つけたしこりをぐりぐりと先端で抉ってやれば、脳を突き破るほどの快楽に襲われたレオが無意識に拒絶するかのように手を胸板に押し付けてきた。
「ダメっ! そこ、ダメぇっ……! ぐりぐりしちゃ、ああっ!」
トントンと胸板を叩いてくるレオの手を煩わしく思い、アルはその細い両手を片方の手で一纏めに握ると、レオの頭上へと持っていきベッドへと押し付けた。突如として腕の自由を奪われてしまったレオが力で敵うはずなどなく、乱暴に拘束されつつ快楽に身を委ねるしかなくなってしまう。
ふと、頭上で腕を拘束されたためにさらけ出された、レオの滑らかで産毛すら存在しない脇や二の腕が視界に入り、アルははてと一瞬思考をそちらへ飛ばした。
レオの左の二の腕、脇に近い内側に何か鋭利な物で切り裂いたような傷痕がある。
数センチ程度のそこまで深くはなさそうな傷痕だが、何故こんな所に……とアルが思考を巡らせていると、レオが突如として穏やかな速度になってしまっていたピストンにいやいやと顔を振りかざしているのに気付き咄嗟に我に返る。いつの間にか頭上の拘束も解かれており、「もっと動いて……!」と泣きながら懇願し、胸板にしがみついてくる健気な姿に心臓がキュッと縮こまった。
そう、今はレオを抱いている最中だ。傷痕は今についた物ではなさそうなため、後でいくらでも聞き出せる。
そう結論づけたアルは、おろそかになってしまっていた腰の動きを再び激しいものにし始めた。
膝裏を目一杯に持ち上げ、上から打ち付けるようにパンパンと肉同士をぶつけ合わせれば、レオは溢れ出した涙を散らしながらよりいっそう喘ぎ声を大きくさせる。
「あぁっ! や、んぁっ! はげ、しっ……! アル、アルぅ……っ! い、くっ……! イッちゃうっ!」
「っ……! あっ……俺もっ……! くっ!」
「ひ、ぃああっ!」
レオが一際高い声を上げた瞬間、ほぼ二人同時に絶頂を迎えた。
レオの性器の先端からどぴゅっと勢いよく白濁が漏れ出し、薄く白い腹を汚していく様が何とも扇情的であり、不思議と幻想的にも映る。
アル自身もまたレオの最奥に精を大量に吐き出した。腹の中を暖かな物に侵食されていき、レオは恍惚とした表情でそれを受け止める。
あまりに強い快感で精液を吐き出し終わる時が来るのかわからないほどに大量に中へと出していくが、ようやく屹立の勢いが治まり始めた所でアルはレオの中から性器をゆっくりと抜いた。
ごぽ、と音を奏でながら大量の白濁がレオの後肛から溢れ出す光景があまりにも卑猥で、アルは治まったはずの性欲が再び沸々と沸き上がってくるのを感じる。
これ以上行為に及んでしまえば、レオの身体への負担が相当な物になるかもしれないとアルは必死になって煩悩を取り払おうとするが、それもレオ自らの手によってあえなく失敗となった。
いまだ媚薬の効果が残っており身体の火照りが治まらないレオは、震える手でアルをベッドへと押し倒し、おもむろにその逞しい身体の上へとまたがり始める。
突然の性急な行動に呆気にとられるアルを余所に、レオはいまだはくはくと寂しげに伸縮を繰り返す後肛に再び滾り出したアルの大きな性器の先端を宛がった。
そしてそのまま重力に従いつつ腰を下ろし、一気に身体の中に屹立を取り込む。
「ああっ! あっ、おっきい……! これ、きもちいっ……!」
「っレオさん……! これ以上はアンタの身体が!」
アルが慌てて静止の声をかけるが、快楽で思考がおぼつかないレオはそのまま腰を上下に揺すり出し、自ら更なる快感を得るために激しく動き出した。
先ほど中に出した白濁が泡立ち、レオの艶やかな動きをよりいっそう滑らかな物にさせる。
突如として再び訪れた快感の波に拐われそうになりながらも、アルは自身の身体の上で艶やかに乱れる想い人を見つめながら愛おしい想いを胸に刻み続けるのであった。
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