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36 恥ずかしい *R-18
湯浴みをしてフィルバートの私室に入ると、ベッドの方からすぐさま声が聞こえてきた。
「鍵をかけろ」
促す声に、これから起こることを予期して身体の奥底が震えそうになる。鍵をかけて、ゆっくりと室内を振り返る。すべてのカーテンが締め切られているせいで、部屋の奥側は暗闇に沈んでいる。
薄暗い室内で目を凝らすと、ベッドに腰かけるフィルバートの姿が見えた。フィルバートも湯浴みを済ませているのか、ゆったりとした部屋着を着ている。
「こっちに来い」
呼ぶ声に引き寄せられるようにして、ニアはフィルバートの目の前まで近付いた。
手が触れる距離になると、フィルバートが両腕でニアの腰を抱いてくる。フィルバートが硬い下腹に顔を押し付けて、ゆっくりと息を吸い込む。その仕草に、羞恥が込み上げてくるのを感じた。
ニアがわずかに身を捩ると、フィルバートがこちらを見上げてきた。
「嫌か」
気遣う声に、ニアは緩く首を左右に振った。
「いや、ではないのですが……」
「嫌ではないが?」
「は……恥ずかしいので……」
良い大人がこんなことぐらいで恥ずかしいと言うのも恥ずかしかった。カーッと顔に血がのぼってくるのを感じる。
ボソボソと小さな声で答えてうつむいていると、フィルバートは口角に笑みを浮かべた。
「これからもっと恥ずかしいことするのにか?」
恥ずかしがるニアを面白がっているような口調だ。そう宣言されると、ぶわっと一気に全身が熱くなった。
すでに茹だったように顔を真っ赤にするニアを見て、フィルバートが腰に回していた手を外して両腕を広げる。迎え入れるような姿勢を取ったまま、フィルバートは柔らかな声で言った。
「ニア、来い」
促す声に、ニアは一瞬躊躇いつつも、前屈みになっておずおずと両腕をフィルバートの首裏に回した。途端腰を左右から掴まれて、強引にフィルバートの太腿の上に乗せられる。
指先に触れたフィルバートの髪はかすかに湿っていて、石鹸の心地よい香りがした。
「おっ、重たいですよっ」
ニアが上擦った声で言うと、フィルバートは咽喉の奥で小さく笑い声を漏らした。
「そうだな。軽くはない」
正直すぎる感想に、ニアはムッと唇をへし曲げた。
「そこは『いいや、君は羽のように軽いよ』と甘い台詞を囁くところではないですか」
「大斧を片手で振り回せる男が、羽のように軽いわけがないだろう」
憎まれ口を叩くと、フィルバートが至極まっとうな正論を返してきた。
「そもそも俺がそんな気障(キザ)な台詞を吐いたところで、お前は気味悪がるだけだろうが」
確かにそれはそうだ、と思いつつも不貞腐れたように唇を尖らせていると、フィルバートが顔を近付けてきた。唇が柔く触れ合って、フィルバートの体温がじわりと移ってくる。なだめるように何度も繰り返しキスされて、緊張していた身体が緩んでいくのを感じた。
角度を変えて唇が触れる感触に、は、と短く息を吐き出す。すると、開いた唇の隙間から、ぬるりと柔らかく湿ったものが差し込まれてきた。舌同士が何度も絡んではほどかれて、また絡まり合って、互いの唾液がゆっくりと混ざり合っていく。
「ん……ん……ぅ」
上顎を舌先でくすぐられる感触に、鼻がかった声が漏れる。甘い口付けに、眼球がかすかに潤んでいくのを感じた。
軽いリップ音を立てて唇を離すと、フィルバートは至近距離でニアを見つめて囁いた。
「上着を持ち上げろ」
そう命じる声に、これ以上は熱くならないと思っていた身体が灼熱に焼かれたようになる。目を逸らそうとしないフィルバートの眼差しに根負けして、ニアは恐る恐る自身の上着の裾に手を伸ばした。ゆるゆると上着を腹の辺りまでめくり上げると、フィルバートが緩く顎を上げた。
「もっとだ」
お前だって解っているくせに、と言わんばかりの声に、ニアは目蓋を小さく震わせて上着を持ち上げた。
胸上までめくり上げると、フィルバートが満足そうにうなずいた。
「いい子だな、ニア」
小さな子を褒めるみたいな口調が妙に居たたまれない。自分で上着をめくり上げるなんて、まるで自ら愛撫を求めているようで、堪らなく恥ずかしかった。
たまらず伏せた視線の先で、剥き出しになった胸にフィルバートが顔を寄せてくるのが見えた。その光景に、とっさに腰が引ける。だが、逃がさないというようにフィルバートがニアの腰骨を掴む手にグッと力を込めてきた。
「ぅ、ぁっ」
ぴちゃりと右胸の尖りに這わされるぬるついた感触に、掠れた声が漏れて、身体がビクッと跳ねた。そのまま米粒みたいに小さな尖りをゆっくりと丁寧に舐められる。そのむず痒い感覚に、尻がもぞもぞと動きそうになった。
「く……くすぐったい、です……」
弱々しい声でそう訴えても、フィルバートは胸から唇を離そうとしなかった。むしろ余計に、尖りを軽く吸ったり、前歯で甘噛みされたり、先端を舌先で抉るように刺激をされる。そのうちくすぐったかっただけの刺激が、次第にジンジンと痺れるような淡い快感に変わっていって、吐き出す息が熱を帯び始めた。最初は柔らかかった乳首が、今ではピンと固く尖っている。
ニアの変化に気付いたのか、不意に前歯で強く尖りを噛まれた。その刺激に、ニアは咽喉を逸らして声を上げた。
「ィっ、ぁッ!」
逃れようと胸を逸らすと、余計に歯の力が強くなる。じわじわと食い込んでくる歯の感触にニアが怯えた表情を浮かべると、ふっと尖りを噛む力が緩んだ。鬱血して赤くなった尖りを慰めるように、また舌が優しく這わされる。敏感になった乳首に柔らかな愛撫が心地よくて、吐き出す息が震える。
「あっ、ぁ、ぁ……」
声が勝手に漏れるのが恥ずかしい。だが口を塞ぎたくても、上着をたくし上げているせいで両手が使えなかった。下唇を噛むと、すぐさま噛むなと言わんばかりにフィルバートが唇に舌を這わせてくる。
しかも、いつの間にか腰骨を掴んでいたフィルバートの両手が尻に回されていた。左手で尻を鷲掴んだまま、右手の指が服の上からグッグッと何度も後孔を圧迫してくる。まるでそこに早く潜り込みたいと訴えるような指の動きに、自身の後孔が物欲しげにヒク付くのを感じた。早く挿れて欲しいと強請(ねだ)るみたいな自身の体内の蠢きに、吐き出す息が上擦る。
「っ、うぅ……そこ、あんまり、押さないで、ください……」
泣き出しそうな声でそう懇願すると、ニアの胸に唇を押しつけたまま、フィルバートが視線だけ上げた。その目がかすかに愉しげに細められるのを見て、ぞくりと背筋が戦慄きそうになる。
だが、予想外に後孔を圧迫していた指はすぐさま離れていった。しかし、ニアが安堵の息をついた瞬間、ズボンの履き口にフィルバートの右手が突っ込まれた。下着の中に潜り込んできた手の中指が、直接後孔に触れる。やわやわと確かめるように後孔の縁に触れる指先の感触に、ニアはカッと顔を赤らめた。
「フィ、フィル様……ッ」
「押してないぞ」
笑い声混じりにそう返される。確かにフィルバートの指先は、後孔に優しく触れているだけだ。少しぬるついた感触がするのは、いつの間にか香油を手に広げていたからだろう。
香油を塗り付けるように、指先が後孔周りを撫でる。そのもどかしい感触にニアが鈍くうなり声を漏らすと、中指がゆっくりと体内に差し込まれてきた。ずぶずぶと粘膜に沈んでくる長い指の感触に、太腿がかすかに震える。
「ぁ、あ、ぁ……」
空気を吐くみたいな声が漏れた。そのまま、根本まで差し込まれた指がずるずると緩慢に抜き差しされる。その緩やかな動きに、フィルバートの指の形をまざまざと感じて、粘膜が時折きゅうっと収縮するのを感じた。
「痛くないか?」
優しく訊ねてくる声に、目を硬く閉じたまま首を左右に振る。すると、小さな笑い声を聞こえてきた。
「手が下がってきたぞ。ちゃんと持ち上げていろ」
指摘と同時に、上着を掴んでいた右手首を掴まれた。そのままグイッと持ち上げられて、また胸をさらす姿勢を取らされる。尻を弄られながら自身の胸をさらけ出す格好に、ニアは引き攣った声で非難を漏らした。
「ひっ……ひどい、です……」
「ひどい?」
「こんな、破廉恥な格好……」
涙声でなじると、フィルバートは目を丸くした後、不意に大きく噴き出した。は、ははっ、と聞こえてくる笑い声に、ニアは思わず目尻を吊り上げた。だが、怒声をあげる前に、後孔に潜り込んでいた指をグリッと動かされて、その衝撃に咽喉が詰まる。
「ァあッ!」
「お前は、本当に可愛いことを言うな」
そう囁く声は穏やかなのに、後孔に突き刺さった指の動きは全然優しくない。二本目の指が体内に押し込まれて、腹の内側にある痼(しこ)りのようにプクッと膨れた部分をグリグリと押し潰してくる。途端、鋭い快感が下腹から脳天まで突き上げてきて、全身が痙攣したみたいにガクガクと跳ねた。
「ァッ、ぁあッ、そ、そこ、やめ……ッ!」
「お前の恥ずかしがってる姿は堪らない」
やめてくれと訴えているのに、逆にうっとりとした声が返ってきた。左手でニアの尻たぶを横に押し広げたまま、後孔に突っ込まれたフィルバートの右手の指二本が素早く抜き差しされる。その度に腹の中のいい場所を指で抉られて、ニアはたまらず嬌声を上げた。
「ゃッ、ぁあぁッ!」
快感に上半身を反らすと、またフィルバートが胸に舌を這わせ始めた。今度は、左胸の尖りを舌先で丹念に嬲られる。ぬめった舌で舐められたかと思うと、前歯でカリカリと噛まれて、尻の刺激と相まって痺れるような快感が全身に広がっていく。
「だ、だめっ、だめ……ですっ……ァあぁッ!」
胸からの刺激から逃げようとして腰を引くと、余計にフィルバートの指が体内の奥深くに突き刺さってくる。快感からの逃げ場がなくて、ニアは両手でぎゅうっと自身の上着を握り締めたまま、だめ、だめです、と半泣きで繰り返すことしかできなかった。
気付いたら自身の陰茎は下着から飛び出るほど勃起しており、その鈴口からはだらだらと先走りを溢れさせていた。赤く充血した自身の亀頭を見て、恥ずかしさのあまり泣きたくなる。
そして、後孔には三本目の指が突っ込まれていた。香油も足されたのか、抜き差しされる度にぬちぬちと粘着質な音が後孔から聞こえてくる。時折開き具合を確かめるように三本の指がぐぱっと左右に広げられて、後孔に冷たい空気が潜り込んでくるのを感じた。
「ぁ、うぅ……ひっ……ひろげないで……ください……」
恥ずかしさのあまり恨みがましい声で言うのに、フィルバートは小さく笑い声を漏らすばかりだ。
そして、尻の下には硬いものが押し当てられている感触があった。ドクドクと脈打つそれがフィルバートの陰茎だと気付いた瞬間、ニアは掠れた声を漏らしていた。
「フィルさま……もう……」
熱を滲ませた声が何を訴えているのか解ったのか、フィルバートの口角が緩く吊り上がった。残忍とも思えるその笑みに背筋が震えた次の瞬間、後孔から一気に三本の指が引き抜かれた。
「ひ、ぃッ……!」
全身が総毛立つような刺激に引き攣った声をあげた直後、ぐるりと身体を横回転させてベッドに仰向けに押し倒された。そのまま急いた手付きで、ズボンと下着を一気に引き抜かれる。
ベッドの縁ギリギリに尻が乗ったまま、強引に両足を左右に押し開かれた。ヒク付く後孔に熱い塊が押し付けられて、そのまま息を吸う間(ま)もなく、ずぶずぶと太いものが体内へと沈んでくる。
「あ、ぁあ、ァ、ぁ、ぁアァッ!」
一番奥を目指して突き進んでくる塊に、恐慌したように両足がバタバタと暴れる。だが、すぐさま内腿を強く掴まれてベッドに押し付けられた。
「ぃ、ぁあ、ぁあ、ぁ……ッ!」
抵抗をねじ伏せられて、容赦なく長い陰茎を根本までねじ込まれる。フィルバートの両足裏はベッドの下についたままで、ニアの身体だけがベッドに乗っている状態だった。ほとんど真上から杭を打ち込むように、フィルバートが腰を沈めてくる。
そして、陰茎の先端が体内の一番奥にゴツリと当たった瞬間、下腹部で火花が飛び散るような快感が弾けた。
「ぁアアぁアぁあッ!!」
咽喉から高い声が迸(ほとばし)るのと同時に、自身の陰茎の先端から精液が飛び散った。勢いよく吐き出された後は、どぷっどぷっと粘度の強い白濁が鈴口から断続的に溢れ続ける。
全身を痙攣させながら、ニアは後頭部をシーツに擦り付けて身悶えた。絶頂から下りて来られず、開きっぱなしな唇から途切れ途切れな嬌声が溢れる。
「あ、ぅ、ぁあ、あ、ぁ……」
同時に体内の締め付けも増したのか、ニアの内腿を掴んだままフィルバートが、グぅ、と鈍い声を漏らしていた。眉間に皺を寄せて、耐えるように奥歯を強く噛んでいる。
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