19 / 169
帰り道 《早苗》
自分の気持ちに気づいてしまってから、なんだか一緒にいるだけで緊張してしまった。
「なぁ」
すっかり暗くなった帰り道。
今日も柳くんの隣を歩く。
「何か怒ってんのか?」
「え? 怒ってないよ」
「じゃあ、体調でもわりぃのか?」
「とっても元気だよ」
「じゃあ何で、そんな静かなんだよ」
困ったような顔で僕を見下ろす柳くん。
ああ、こんな表情もかっこいいなぁなんて思ったりして。
「いっつもめちゃくちゃ話すのに、お前」
「……今日はちょっと、お休み」
確かにいつもは楽しくおしゃべりして家まで歩くけど、今日はだめ。
気づいてしまった気持ちをうっかり話しちゃうかもしれない。
「んだよ、お休みって。やっぱ怒ってんだろ?」
「怒ってないよ」
「昼にひとりにしたから、それだろ?」
「桜井くんとお話してたから楽しかったよ」
「……ふーん」
声のトーンが下がって、柳くんはむっすりと黙ってしまった。
本当は昼休み、柳くんと秋良ちゃんが何を話してたのかずっと気になってる。
秋良ちゃん、柳くんに興味あるって言ってたしな。
「柳くんは秋良ちゃんとお話、楽しかった?」
「楽しいわけねぇだろ」
「そうなの?」
「ああ。おめぇと話してる方がたのし……」
「えっ!」
おほんっとわかりやすい咳払いをして柳くんは歩くスピードを速めた。
「僕と話す方が楽しい?」
「うるせぇ」
「僕もね、ほんとは柳くんと今日もお話したかった。柳くんと話すの大好きだよ」
自然と顔がにやけてしまう。
ぎゅっと柳くんの袖をつかんで引きとめ見上げると、照れくさそうな彼と目があった。
ともだちにシェアしよう!