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後悔 《剣介》

やっちまった。 早苗を送ったあともまだ、どきどきと心臓が高鳴っている。 柔らかくて小さな早苗の手の感触が残っていて、たまらなくなる。 変だと思われただろうか。 あんまりにも可愛い笑顔で、嬉しそうにするから自分を抑えきれなかった。 俺と榎本がなんでもなかったのがそんなに嬉しかったのだろうか。 勘違いだと、自意識過剰だとわかっているが、期待している自分がいる。 けど、ダメだ。 そんなわけないんだ。 手を握るくらい造作もない、はず。 それ以上のことをして早苗は平気でいられるだろうか。 つーか、俺が耐えられねぇ。 もしそんなことをして、早苗が離れていったら。 「無理だ……っ」 きっと早苗のことだから気を使ってくれるだろうが、そんな気まずい関係になるくらいなら、今のまま友だちでいる方がいい。 そうだ、だからもう、こんなことしない。 こんなことしちゃいけねぇよ、俺。

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