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昼休み10 《涼香》
嬉しそうに龍太郎が微笑むから、頬がつい緩む。
「安心してよ。けっこう似合うんだよ俺、短いのも」
「想像付かないな」
「ふふ、楽しみにしてて」
龍太郎に手を引かれ、窓側の席に向かった。
いつも図書室にくるとそこに座っていた。
「そういえばさ、かっしーと柳も付き合い始めたらしいよ」
「お前は……勝手にばらしてやるなよ」
「幸せは共有しないと。かっしーなんかさ、柳のこと名前で呼んでた。剣介って」
「あからさまだな」
「ね。なんかさ、涼香ちゃんに告白した時のこと思い出しちゃったよ」
「……どの告白」
なにかとへらへらしている龍太郎だ。
話し始めた夏は特に、どれが本気でどれが本気でないのかいまいちわからなかった。
「どれも全部、俺は本気だったよ」
にっこりと笑ってみせる龍太郎。
屈託なく真っ直ぐで裏表もない。
「ここで最初に話しかけた時も、ね」
穏やかで温かくて……。
そんな彼だから一緒にいたいと思えたのかな。
「あれは、不審者っぽかった」
「えー、酷いなぁ」
「しょうがないだろ。ほぼ初対面だったし」
「うーん、それもそうかー」
あれは初夏の蒸し暑い日だった。
ほんの数ヶ月前のこと。
まさかこんな風に側にいるようになるとは思わなかった。
ましてや大切な人になるなんて、なーー。
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