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昼休み9 《涼香》
龍太郎にこうして優しくされる度に、引き戻せないくらい深く溺れていく。
「涼香ちゃんは笑顔が似合うねぇ」
「なんだよ、いきなり」
「今どんな顔してるかわかんないでしょ」
くすっと笑われた。
「笑ってた?」
「うん。柔らかくてきれいな笑顔だよ」
「……龍太郎のせいだな」
「もう、ドキドキしてるんだからやめて。……ちゅーするよ?」
「……すれば?」
余裕のない表情。
胸元に添えた手から、ちょっと速い脈拍が伝わってきた。
あぁ、なんて愛しいんだろう。
「もー、可愛すぎ……」
頬を染めた龍太郎はぼやくと、触れるだけのキスをして、それから唇をぺろっとなめてくる。
腰を引き寄せられ、そのまま舌が入ってくると頭が真っ白になってしまう。
静かな図書室に僅かに水音が響いていた。
夢中で貪るような口づけ。
気持ちよくて口の端から唾液が零れていくのさえ気にならない。
「……ふぁ、」
「……すげー、やらし」
やっと唇が離れぼんやりしたまま龍太郎をみつめると、そんなことを言われた。
おもむろに顔を寄せたかと思うと、唾液の流れた跡を舐められる。
顎から口の端を舌が這い、最後に軽くキスされた。
頭がぼーっとする。
「ねぇ、涼香ちゃんが望むならこのままでいいよ」
優しく腕に包まれる。
「髪も切らないし、また染める」
俺が望むなら。
俺は何を望んでるんだろう。
今の髪型も茶髪も特別好きな訳ではない。
ただ龍太郎だから悪くないって思える。
「けどね、短くしても染めて無くても、俺は変わらないよ」
変わるのは見た目だけ。
龍太郎自身がなにか変わる訳じゃない。
だから、きっと、たぶん、平気。
「切ってもいい。黒髪でも……大丈夫」
龍太郎だから、大丈夫。
離れていったりしない。
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