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再会1 《涼香》
初夏の蒸し暑い日だった。
学校で数カ所しかないクーラーを完備した部屋、その中でも図書室が俺の気に入っている場所だ。
静かで涼しくて、本が読めて。
暑い日の昼休みを過ごすには最適だ。
今日もまた本を読んでいると、一人の男子生徒が俺の前の席へ座った。
「林宮涼香……くんだよね?」
見上げると知らない顔で、俺の名前を何故知っているのか不思議に思った。
顔立ちは整っているが、染めたような長めの茶髪やはだけた襟元をみるに品行はよくなさそうだ。
「誰、お前?」
「俺は桜井龍太郎。二年二組だからお隣のクラスだよ」
「ふーん。で、何か用?」
「用っていうか、涼香ちゃんのこと好きだから仲良くできたらなって思って」
「はぁ?」
話したこともない奴に好きだなんて、この男はどうにかしてるんじゃないだろうか。
へらへらと笑っているのも気に入らず、そいつを睨みつけた。
「睨んでてもすっげー可愛いね」
……こいつは本気でやばい奴なのかもしれない。
「俺はお前なんて嫌いだ、どっか行け」
声を抑えてそう言うと再び本に視線を落とす。
やばそうな男だからこれくらいでは引かないだろうと思ったが、そいつは意外にあっさりと席を立った。
「じゃあ、またね涼香ちゃん」
ふわりと頭を撫でられ、払いのけようとしたがすぐに手は離れていった。
そしてそそくさとそいつは図書室を出て行く。
好きだと言った割にしつこくなく、いまいち何がしたいのか、どんな奴なのかつかめなかった。
それがもどかしく、苛ついた。
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